2016/10/29

■冒頭集:東京

東京はどうやら、世界一住みにくい都会らしい。一杯10ドルのコーヒー、一回100ドルのディナー、一平方米10万ドルの地価…だけどそんな数字は僕らにとって、ほとんどなんのリアリティも持たない。家に帰ると和服の奥さんが玄関に坐っていて、茶室では釜がしゅんしゅんいい音を立てていてと、もはや昔の日本映画か外国人の日本好きの頭の中にしかありえないシーンと同じくらい、僕らの日常生活とはかけ離れた世界にすぎない。僕らの生活はもっと普通だ。木造アパートや小さなマンションにごちゃごちゃとモノを詰め込んで、絨毯の上にコタツを置いたりタタミに洋風家具をあわせたりしながら、けっこう快適に暮らしている。
都筑響一『TOKYO STYLE』(1993年/京都書院)

2016/10/28

■廃墟? はい、ちゃんと出てきます 黒沢清『ドッペルゲンガー』

レンタルで過去作を観てゆく「ひとり黒沢清まつり」、継続中。このあいだは『ドッペルゲンガー』(2003年)。

タイトルから想像して「理屈っぽいのかな」と心配しながら観る。序盤は実際そう。ところが、途中から話が転がりだす。

古くからある映画モチーフ=貴重品・財宝(カネ)をめぐってのドタバタ抗争というモチーフの展開となり、どこか懐かしく〔*〕、欧州映画な雰囲気を湛える。ここがいい。

役所広司は手堅く、永作博美が好演、ユースケ・サンタマリアがいい味。

結果、かなり好き。


それはそうと、これまで言い忘れていたけれど、黒沢清という人の「廃墟ラヴ」はそうとうなもので、ほとんどの映画でひつこく廃墟が登場する。この『ドッペルゲンガー』でも、ラスト近く、極上物件。


〔*〕ドッペルゲンガーというモチーフ自体がちょっと懐かしさを纏う。写真の発明によって世の物語におけるドッペルゲンガーの頻度が激減した、とはロラン・バルトの指摘(『明るい部屋』)。「もうひとりの私」の視覚的インパクトは減衰し、かわりに内面にかかわる主題が浮上した感。その点からして、この映画の前半は理屈っぽいわけです。


2016/10/27

■宇宙人の子どもを13人産んだ人の話

実に国民の半数以上が宇宙人がいると思っている、不思議の国のポートレイト。(…略…)最近の調査(PDF)によると、米国人の半数以上が宇宙人の存在を信じているようだ。(…略…)『Phenomena』に登場する“信心深い”20人は、非現実なことは何も起きていないと主張するのだ。そのうちの1人は、宇宙人の子どもを13人産んだと思っているというのにもかかわらず。「宇宙人を本気で信じているアメリカ人たち」http://wired.jp/2016/10/26/phenomena/

「国民の半数以上」? 日本だともっと高い比率になるのでは? と思っていると、こんな調査結果が。
  
http://getnews.jp/archives/25379

83パーセント!

すごいぞ、ニッポン。「不思議の国」を通り越して、わけのわからない国に。



なお、「信じる」という行為が一層でも一義でもないことは、補足して考えなくちゃいけないですけどね。

2016/10/26

再掲【お知らせ】10月のくにたち句会

いつもは最終日曜ですが、今月は最終土曜。

2016年1029日(土)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

句会後の飲食もよろしければどうぞ(会費アリ)


ご参加の方は、メール(tenki.saibara@gmail.com)、電話etcでご一報いただけると幸いです。

問い合わせ等も、上記メールまで。

■アメリカ

カーティス・メイフィールドのアルバムジャケットの元が歴史的写真(1937年)だったことを、恥ずかしながらようやく知る。

There's No Way like the American Way
 ↓
There's No Place Like America Today








2016/10/25

■虫と回廊 続・西橋美保歌集『うはの空』

西橋美保歌集『うはの空』をたのしんでいる。少しずつめくるページがどれもいい。

秋らしい2首をあげると、

虫かごのなかで羽化せし姫ぎみの髪のすらりと長き触覚  西橋美保

風が地球に鳥を吹き寄せたのだらう星と星とをつなぐ回廊  同

うっとりします。


ところで、前に紹介した夢の歌とはすいぶん肌合いが違う。聖俗の幅が大きい。これは、いいことです。句集にも、それが言えたりもする。人って、意外に幅広く暮らしていますから。



2016/10/24

■『淵に立つ』ほか

某日。立川のシネコンへ、嫁はんと。『淵に立つ』(深田晃司監督/2016年)。16時からの回は客席まばら。

コクのあるつくりを堪能。いい映画、残酷な映画でした。

映画のあと、当初からの予定どおり立川の街をぶらぶらして、晩ごはんのお店を探す。立川は近いわりにふだんあまり来ないので、おもしろい。すると、看板に「トスカーナ」。え? あのトスカーナ? むかし何度か食べに行ってたトスカーナがここに移転したの? 

入って、店員さんに聞いてみると、やはり、あのトスカーナ。

イタリア料理店ですが、当世の小洒落た感じではなく、「昔ながら(1960年代創業)、あくまでイタリアっぽい、でも日本的解釈のイタリアっぽさ」といった店。私のなかでは、ニコラス(福生)からバタ臭さ(アメリカ臭さ)を取り除いて小ぢんまりさせた感じ。

サラダとタンシチューとピザ(チーズたんまり)、おいしくいただく。

古い店が落ち着く。年寄りには、今風の店は敷居が高い。おいしいんだろうけど、雰囲気に入っていけない。

腹ごなしに歩く。西国立駅(南武線)で電車に乗る手もあったが、ついでだから、家まで歩く。夜道が気持ちいい。




週刊俳句・第496号に、《八田木枯の一句 秋夕やけ西のあはれを照らすなり》を寄稿。
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2016/10/blog-post_23.html



某日。小石川後楽園涵徳亭の予約に行く。来年4月で、『週刊俳句』は10年。記念のオフ会の会場として使うのです。

みなさま、2017年4月16日(日)午後から夜まで、あるいは午後か夜のどちらか、あけておいてください。

なにをやるかはこれから運営数名で考え、決めていきます。

2016/10/23

■日曜の朝、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに関するメモ



≫限りなく透明に近いメモワール 小津夜景 フラワーズ・カンフーhttp://yakeiozu.blogspot.jp/2016/10/blog-post_16.html



2016/10/22

■冒頭集:石のエクリチュール

いつの世にも人々は、宝石にかぎらず、風変りな形や、意味ありげな奇妙な模様や色彩で人目をひく珍しい石を求めてきた。ほとんどいつも関心の的となるのは、意外な、ありえないような、それでいて天然の相似、人を魅惑する相似である。なにはともあれ、石には、なにかわからぬが重々しく、ゆるぎない、ゆきつくところまでゆきついたといった趣き、不滅の、或いはすでに滅び果てたというような趣がある。
ロジェ・カイヨワ『石が書く』(岡谷公二訳/新潮社/1975年)


2016/10/20

■藷と無花果とサンバ

こんな昼ごはんも、とてもよろしく。



外に出たら、サンバに出くわしたり。



そんなかんじで、とりとめなく、十月が過ぎてゆくわけですよ。

2016/10/17

■Samantha Fish

オイル缶ギターの弾きっぷりも歌いっぷりも素晴らしい。

2016/10/16

【お知らせ】10月のくにたち句会

いつもは最終日曜ですが、今月は最終土曜。

2016年1029日(土)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

句会後の飲食もよろしければどうぞ(会費アリ)


ご参加の方は、メール(tenki.saibara@gmail.com)、電話etcでご一報いただけると幸いです。

問い合わせ等も、上記メールまで。

2016/10/14

■業界最小最軽量「はがきハイク」準備中

ロナウジーニョが日本に来るとか来ないとか。

ロナウジーニョといえば、「世界一買い物カゴが似合うサッカー選手」(笠井亞子氏・今世紀最高の名言)として知られるわけですが、亞子氏といえば、「はがきハイク」の相方。秋に出したいが遅れると冬になってしまい句が総取っ替えになってしまうかもしれない「はがきハイク」、現在準備中。


2016/10/12

■ハリネズミな日

某所より届いた絵葉書と小津夜景さんの今日のブログ記事


2箇所から同時にハリネズミがやってくる日なんて、そうそうない。


2016/10/10

■冒頭集:矢作俊彦

こうして彼は、新幹線"こだま"で日本に帰った。東京駅で降りると、何より先に公衆電話を探した。
矢作俊彦『ららら科學の子』(2003年/文藝春秋)
何年前になるだろう、話題になった樋口毅宏『さらば雑司が谷』を読み終えて、おもしろかった、けれども、これなら、矢作俊彦を読んでいればいいかな? と思ったことでした。

「矢作俊彦ファン」と言えるほどたくさんを読んではいないけれど、好きとは言える。死ぬまでにまだもう数冊は読みたい。


2016/10/09

■黴と皮膚 『静かな場所』第17号の一句

めつむれば皮膚一枚と黴の香と  対中いずみ

視覚→触覚→嗅覚。

香りを鼻ではなく皮膚で感じ取る。


掲句は『静かな場所』第17号(2016年9月15日)より。

■怖い話

めずらしく悪夢を見たのは、前の晩、ベッドで春日武彦『無意味なものと不気味なもの』(2007年/文藝春秋社)を読んだせいらしく、昼に読むことにしたら、悪夢は一晩でおさまったのですが、それとは別に、この数か月、「ひとり黒沢清まつり」を開催。つまり、過去の黒沢清映画をレンタルで借りては観るということをしていたわけです。

きっかけは『クリーピー 偽りの隣人』を劇場で観たこと。面白かった。でも、考えてみると、黒沢清はほとんど観ていない。大昔に、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』を観て、マイナーなノリと決めつけ、それ以来、敬遠していたのでした。

何本くらい観たでしょう。蔦屋で借りられるもので、残りはあと数本。このあいだは『叫(さけび)』を観て、「こえぇなあ、おい」という感じでした(ちなみに、観るときはひとりで真夜中に観ます)。


なお、こちら(↓)も、なかなか怖い話です。

だれ?」:くらげのあぶく
http://kurageabuku.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-80c4.html


2016/10/08

■梨と充電 ふけとしこ『ほたる通信Ⅱ』の一句

電気は、何に近いのか。

科学の話ではないです。どちらかというと神話的な脈絡。

固体、液体、気体でいえば、絶対に固体ではない。気体というのも、ちょっと違う。あんがい液体な感じがします。

梨の雫す充電の終了す  ふけとしこ


掲句は『ほたる通信Ⅱ』2016年10月《50》より。


2016/10/07

■結社とか師系とかその内側とか外側とか


『街』2016年1月号の特集「師系の内側と外側」。結社誌が、それも主宰である今井聖さんの原稿依頼文を併載して組んだ特集(小テーマ5個に短文10個)。踏み込んだ企画ですねぇ、微妙な域まで。

ざっと目を通す。

信仰告白になっちゃってるものも、当然いくつかあって、それは企画意図的にはどーなの? という部分はさておき、北大路翼氏が師である今井聖にダメ出ししている部分とか(最後は予定的に師系をうつくしく肯定)、太田うさぎさんが昔、初対面の俳句総合誌・編集者から「それであなた、野心はあるの?」と訊かれた話とか(うわぁ気持ち悪い)、おもしろく読みました。

俳人さんも、たいへんだなあ、結社の内も外も、たいへんだなあ、という読後感。

というわけで、おもしろい特集なので、読んだほうがいいですよ。っと、律儀に宣伝。頒価2,000円。


なお、私は「帰属から遠く」という短文を寄稿。これまでどこかでしゃべったこと、書いたことを繰り返しました。「すでにしゃべった、書いたことだから」という考え方はやめることにしました(これもすでに書いた)。者は(身近な人を含め)そんなに読んでいるわけではないので、「ああ、もう読んだ」ということには、あまりならない。


あ、そうそう。「街」賞受賞の小久保佳世子さんの20句も読めます。

市果ててパイナップルの匂ふ冷え  佳世子

2016/10/06

■CD の終焉から「Lack of Afro 愛」の話題へ

Lack of Afro の「My Groove Your Move」というアルバム、アマゾンで見ると、CDが12,000円(絶版に付き高値)。あらあら、これは困った。ところがすぐ脇に、ダウンロード価格が、なんと、300円。

いちまんにせんえん vs さんびゃくえん。

CDの時代が終わりつつあるのですね(米国では全売上に占めるCDのシェアはすでに2割に過ぎないとか)。


さて、こんな動画。愛聴するノーザンソウルでただひたすら踊る娘さん、Northern Soul Girl - LevannaLack of Afro の曲を、英国クリーブドン桟橋 Clevedon Pier で踊ります。





2016/10/05

■水母水母水母 『ににん』第64号より

『ににん』第64号(2016年秋号)、岩淵喜代子「余韻の水母」23句は水母だらけ。水母ラヴァー・水母好きとしては、まことにうれしい連作。


水母死して硝子のやうな水残る  岩淵喜代子

砂浜などで見ると、実際、硝子と間違える。浜にはガラス石ほか、硝子の漂着物がめずらしくないので、よけい。


八月のくらげを噛めば雨強し  同

この一句のみ平仮名表記の「くらげ」。食べものとして他と区別されているのだろう。季語として働かないので、「八月」。細かい配慮があります。

というか、この「雨強し」感は、ムード満点。


‎2007‎年‎3‎月‎12‎日・葛西臨海水族園

2016/10/04

■ハイパーボリックシラビックセスクデイリーミスティックとかアイザック・ヘイズの頭とか

Hyperbolicsyllabicsesquedalymistic

意味は誰もよくわからない模様。

歌詞は濃密なラヴソングっぽい。

2016/10/02

■なぜか QUEEN がらみで

あまり聴いてこなかった。レコードもCDも買ったことがない。でも、もちろん知っています。有名なバンドだし。






2016/10/01

■『街』20周年おめでとうございます

『街』20周年記念特集号が分厚い。本文188頁。



寄稿しています。与えられたテーマは「結社否定の果てに見えるもの」ということでしたが、私自身は否定も肯定もしない。結社は、ある。俳句世間に、ある。っつう、それだけなので、期待に添えたかどうかわかりません。具体的なエピソード中心に見開き2頁ぶん雑感を書かせていただきました(論じてもしかたないしね、私ごときが)。

特集「師系の内側と外側」では、いくつかのテーマごとに、主宰・今井聖さんの(例によって)啖呵っぽい短文が付いていて(原稿依頼の段階で各執筆者に示されていた)、ユニーク。執筆者が、これに、どう反応するか呼応するか反発するか無視するか。といった愉しみ方もできそうです。ご興味の方は、「街俳句会」のウェブサイトに問い合わせるとよいかも、です。