「バカバカしい」と、俳句に向かって言うとき、それは褒め言葉であります。
それは私だけかもしれませんが、私が言った場合、そうなのであって、他意はない。ですから、誤解のないように。
バカバカしい句は、生易しくはありません。例えば、よく言われるように、バカにはバカはできない。
そんな折、『川柳カード』第4号(2013年11月25日)、榊陽子「鯖缶のバカ」10句。珠玉のバカとでもいうべきナイスにバカバカしい句が見つかります。タイトルに「バカ」と入れてしまうと、おのずとハードルが上がるわけですし、バカと題された句群からバカ句を見つけてもねえ、という部分はあるのですが、10句すべて「鯖」あるいは「鯖缶」入りで、ひつこくバカをやろう、という気概が見える、なかなかの作品です。
匍匐する秋の鯖缶兵として 榊陽子
ひとつ選ぶとしたら、この句でしょうか。
あるいは、
鯖缶に夜の帳がおりません 同
も、じわじわ来るタイプ。
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俳句には、すばらしくバカバカしい句(単にバカバカしい句ではなく)が稀少なのですが、かといって、川柳にたくさんあるかというと、管見の範囲では、そう多くないように思います。
川柳、俳句、分野にかかわらず、「すばらしくバカバカしい句」がもっともっと増えてほしいですね。
なお、「すばらしくバカバカしい句」という言い方はわかりにくいかもしれませんので、もうすこし説明すると、「貧相な知性」に縛られていない句。それは、言ってしまえば、きわめて知的に処理された句、ということになりますでしょうか。
「バカ」という語に、ひっかかり、というか、抵抗感のある人は、ノンセンス(ナンセンス)に近いもの、と、ざっくり捉えていただいてもいいと思います。
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