連句/連鎖

2023/04/05

■音数歳時記のこと

ひょんなことから、季語が音数順に並んだ歳時記という、これまで多くの俳句実作者が「あったら便利かも」と考えたはずなのに、なぜか、なかった歳時記をつくることになり、企画スタートから春の巻の刊行まで期間が短かったこともあり、きほんひとりであることもあり、いや、そもそも「歳時記をつくる」ということ自体が、まあまあ大変な作業であるわけですが。


大変は大変ですが、それでも愉しみはあります。例えば、例句。書籍の性質上、多くを載せる必要はありませんが、皆無だと、格好がつかない。それにまた、味気ない。で、載せるわけですが、自分の中にいくつか方針があって、ひとつには、少ないなかにもヴァリエーションを出すこと。もうひとつには、ヘンな句、というと語弊がありますが、歳時記に載りそうにない句、例えばパロディとか攝津幸彦とか加藤郁乎とか毛呂篤とかを入れる。といっても、ヴァリエーションの点から「ヘンな句」ばかりではいけない。いわゆる名句として評価の知れ渡った句も入れる。てなかんじであれこれ考えながらの作業は、存外愉しいのですよ。

音数順に並んだこの本、春の巻の冒頭は「春」(2音・時候)です(この巻には1音、例えば和布刈り(めかり)の和布(め)とかを入れませんでした。いろいろ考えたすえ)。

で、春の例句の先頭は、この句。

 バスを待ち大路の春をうたがはず 石田波郷

このあいだの記事で取り上げたこの句を例句の最初に持ってくることは、かなり早い段階、作り始めの頃に決めていたことでした。決めたことを実現できた。このことだけでも満足しているのですよ。

ラヴ&ピース!

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