2022/05/10

■変身・変容のパラダイス 現代川柳の成果

暮田真名《川柳は(あなたが思っているよりも)おもしろい》は、現代川柳と、サラリーマン川柳を代表とするいわゆるポピュラーな川柳とを対比して、明快。

当該記事はこちら≫https://note.com/sayusha/n/n314331e4c333
サラリーマン川柳の「笑い」を支えているのはおびただしいほどの固定観念と規範意識である。
対して、現代川柳に顕著な変身・変容の要素。
川柳は人を絶え間ない変身に駆りたてる。川柳のなかで、私は「春の小川」になったり、「気体」になったりする。温度の変化によってかたちを変えていく水のように、少しの条件の違いによって。
おそらく、〈私〉〈作中主体〉〈作者〉のそれぞれの部面で、変身・変容は起こっていて、ざっくりいえば、アイデンティがぐらぐら揺れたり、どろりと融解したりするケースがとても多いのが現代川柳、ということは言えそうで。

コンビニの傘に生まれてはや二年  なかはられいこ

この句などは、ビニール傘に、主体も景色も物語もフォーカスしきっていて、クール。

短詩ジャンルの多くの作品につきものの叙情、それもちょっと冗長な叙情を突き抜けたかたちを、いっとうすぐれて成果で見せるのは、川柳(現代川柳)というジャンルかもしれませんね。

掲句は『What's』第2号(2022年4月25日)より。


あ、そうそう、変容といえば、先々月、ウラハイで取り上げた《液体国の液体人が死んでいる きゅういち》もまた好例です。

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