2021/08/31

■桃

桃は、冷やして食べるか、常温か。

私は後者。

まよなかをゆきつもどりつ冷し桃  八田木枯

がありますが、これはきっと水で冷やしたもの。冷蔵庫でキンキンに冷やした桃じゃないっぽい。

息の根をつかひ白桃すするなり  齋藤玄

ラヴ&ピース!



2021/08/30

■まっすぐに願う 佐藤文香『菊は雪』

雪降ればいいのに帰るまでに今  佐藤文香

末尾に2音くっついた「今」が句の解釈を難しくしていると思うのだけれど、帰るまでには降ってくれよ、いや、じゃなくて、いま降れ、というふうに読んだ(誤読かもね)。性急というのもあるけど、まっすぐな願い、希求。

まっすぐって、気持ちのいいものですよ。こういう場合。

『菊は雪』(2021年6月/左右社)には、(世界に向けた)まっすぐな願いがたくさんあるように感じました。

これは、ちょっと意外。自分としては意外な読後感。一句へのと仕上げる経緯には紆余曲折があるはずだし、方法論を外すこともするのだけれど、全体の仕上がりとして、爽快なほどまっすぐな願いが色濃い。

星々に雪ふる空を授けたる  同


いろいろな人がすでに豊かに論じている、またこれかも論じる句集だろうけど、私は気ままに頁から頁へとうろうろするつもり。「句集制作ドキュメンタリー」というユニークな付録もあって、これはこれからゆっくり読もう。

ラヴ&ピース!



2021/08/28

■もうひとりの自分が過去に

頁の合間から栞に使っていた電車のプリペードカードが出てきて、どのくらい昔の3月なのかわからないその印字をしばらく見つめてしまったのは、京急・池上駅にも京王・浜田山駅にも降りた記憶がまったくないから。

記憶力不足、と言ってしまえばそれまでだけど、過去の自分にこのように出会うとき、あまりにも見に覚えがないものだから、ひょっとして、自分の知らないもうひとりの自分がどこかで暮らして動いていたのでないかとさえ思うのですよ。

ラヴ&ピース!




2021/08/27

■夕暮れを愛す

夏、屋外に出たら、もう日が傾いているってときは、とりたてて美しい夕焼けなどなくても、ああ、いい時間だなあ、と、いつも思う。暑さがやわらいだという身体的事情だけではなくて。

夕暮れは、夏に限りますよ。だから、この歌も、夏の歌。

(ケチャップ+漱石)それもゆふぐれの風景として愛してしまふ  荻原裕幸


『甘藍派宣言』1990年より。

2021/08/22

■バナナの威力 『鏡』第40号より

バナナ食ふ鏡の中のあけた口  手嶋崖元

バナナを食べている自分を鏡に映して眺めるというのは、なかなかにめずらしい行為で、これは意図というより、たまたま鏡に自分が映っていたのだろう。

口があいている。いままさにバナナがかじられようとしている。

口に焦点があたっているはずなのに、バナナのほうが、鏡の中でめだつ。黄色が目を引く。

考えてみれば、食べられる瞬間まで姿を残す食材は、そう多くない。烏賊の丸焼きとか、林檎を切らずに丸かじりとか、最近の子どもは知らないだろう砂糖黍とか? パイナップルは切られて、元の姿の見る影もない。牛肉は牛の形をしていない。

バナナが素材として、というのは、俳句や文芸の素材として優れていることは、疑う余地がない。

掲句は『鏡』第40号(2021年7月)より。

2021/08/11

■遠?

大好きな百物語シリーズ、5巻で終わりではなかった。

増田書店をぶらぶらしていて新刊が目に止まり、即購入。四六版600頁近い。分厚いほど嬉しい(2000頁くらいの本が欲しい)。これはもう、りっぱに変態。



2021/08/04

■収穫

毎日なにがしか、というか、自分たちだけでは食べ切れなくてお裾分けできるくらいの量が穫れ、トマトもゴーヤもきっとからだに良くて、なによりも穫れたては美味。