2026/07/04

■川合大祐句に片っぽうをあてがう旅 『リバー・ワールド』篇

川合大祐『リバー・ワールド』2021年/書肆侃侃房



失った世界ガソリンスタンド忌  川合大祐

たましひの須田町眠る半分忌  忌日くん「をととひの人体」

世界がすべて失われるよりも、半分だけのこるほうが、ずっと怖ろしい。


無 ホカホカねえさん以外すべて虚無  川合大祐

泣いて無意味な兄も素敵な土用波  竹岡一郎「バチあたり兄さん」

こっちの俳句岸は、虚無虚無虚無。虚しいよ。そっちの川柳岸はどうですかー、川合さーん。


京大の麻婆丼がうつくしい  川合大祐

東京の美しき米屋がともだち  阿部完市

学食はたまた百万遍の王将なのか? 本郷あたりの米穀商なのか?


猿に似た長方形を持ち歩く  川合大祐

寝てしまふ猿を起して猿廻し  下田実花

眠っているあいだは、誰によらず何によらず長方形。かもしれないよ。


実在に全力もって小池歯科  川合大祐

島田様たびたび泣きにやってくる  樋口由紀子

「どこやねん句」に「それ誰句」を。


草を食む宇多田ヒカルに似せた牛  川合大祐

馬齢噓こき矢野顕子総入れ歯  西原天気〔回文〕

自作をそっと忍び込ませる。掏摸の手際。


「山本リンダ」  川合大祐

布施明「君は薔薇より美しい」  西原天気〔未発表〕

同上。あるいはレディメイド。すでに失われ、すでに虚しく、すでに美しい。


(『ザ・ブック・オブ・ザ・リバー』へと、つづくかもしれない)

2026/06/29

■2冊の本

ジョルジュ・シャルボニエ『レヴィ=ストロースとの対話』 (1970年/みすず書房)

マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』1984年/白水社

前者は、人文科学、とりわけ文化/社会人類学の本を相当数読むようになったきっかけ。後者は、読んだとたん、そして今も、これからも、いっとう大好きな小説。

それぞれ自分にとって、とてもたいせつな本なのですが、分野のまったく違うこの2冊が、同じ人の翻訳であることを知ったのは、読んでからしばらく経ってからです。

タダ・チマコ。

わー! 多田智満子のおかげじゃないか、いろいろと! と、ひとり感動しました。

多田智満子の美しい文章、極上の訳文がなければ、自分の人生は、こうじゃなかったかもしれない、いや確実にちがってた(そのほうがよかったという可能性は、言いっこなし)。人生、何が、どうなってこうなるのかわかりません。


 星空を讀み解く術も知らずして老ゆか萬卷の書に圍まれて  多田智満子

 意味不明なれどたのしむさわさわと子音母音の波の高まり  同

  多田智満子『遊星の人』2005年/邑心文庫:高橋睦郎編集

2026/06/26

■川合大祐句に片っぽうをあてがう旅 『スローリバー』篇

川合大祐『スローリバー』2016年/あざみエージェント

            献句 ひかるなり川も柳もゆつくりと 10key


満月を開ければ 何もない廊下  川合大祐

満月の裏はくらやみ魂祭  三橋敏雄

廊下をさらに行けば、きっと裏。この廊下、「何もなさ」加減が尋常ではない。ちなみに、三橋敏雄は「府中くらやみ祭」を知っていたのだと思う。季語「魂祭」はそこが誘引。


図書館が燃え崩れゆく『失われ  川合大祐

ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ  なかはられいこ

『失われた時を求めて』が消失の途中。字が意味を離れてブツ化していながら、「失」という表意文字は最後まで残る。後者は、2001年アメリカ同時多発テロ(9.11)の3か月後に発行の『WE ARE!』第3号所収、という意味でも21世紀を代表する句に。ともに、カンバスにブツとしての文字を、あるいは宙空にオブジェとしての文字を配したような句。


我思う「これは川柳ではない」と  川合大祐

我思ふ故に猫あり春の小火  攝津幸彦

前者、デカルト+マグリット。後者、恋猫を連想させる(ぶん、飛距離はそこそこ?)。上五が同じなだけで、句の方向が違う。けど、これはこれで、並べて眺めていると、気分がふわっとしてくる。


ウルトラの制限時間超えて滝  川合大祐

ウルトラマンを脱ぎ捨てて俺栗の花  佐山哲郎 『じたん』2001年

ふたつ並べると、滝と汗がつながって、これは、並べたらあかん組み合わせかも。


潰すまえ仮に水母と言っておく  川合大祐

渾沌をかりに名づけて海鼠かな  正岡子規

「仮」つながりで選んだが、なんだか「存在のありよう」みたいなところでつながる感。


年を以て巨人としたり歩み去る  高浜虚子

巨人立つその後の便座もてあます  川合大祐

ここだけ句の順を換えた。一年が終わったあとの世界には、便座が似合うので。

(つづくかもしれない)





2026/06/25

■2026年プラン・中間チェック 野菜はOK

今年のはじめに立てたプラン(願望)。

その中間チェックです。


白茄子も成った。茄子は6本植えて、ぜんぶ違う品種。ミニトマトは例年のアイコと、今年はオレンジがかったやつ(これは甘い・うまい)。ここに見えているのはピーマンだけだが、そのほかシシトウ、トウガラシ。

〔1 畑に植える夏野菜の種類を増やす〕は実現したと言っていい。もしも、台風で全滅(はしないけど)しても。

梅雨が明けたら、蛸の握りだな。

2026/06/22

■4音代入のための上野葉月的構造の試み

試みとか書いとけば何やってもいいわけじゃないんですけどね。




みたらし 10句

 ※まごのて、かさぶた、他、代用可

噴水の私立みたらし女学院  原句ママ

みたらしであれば常に西日である

妹はみたらし愛のあるごとし

みたらしは受話器のやうに置かれをり

みたらしに少し似てゐる軽水炉

紅葉かつ散るみたらしの純潔種

みたらしの解釈がコペンハーゲン

みたらしな植物学者ド・フリース

みたらし呼吸に定評ある阪西

みたらし忌をとこの乳首ゆるされて

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原句:上野葉月『enjoy』(2025)より

噴水の私立みたらし女学院

踏切であれば常に西日である

妹は滝壺愛のあるごとし

月影は受話器のやうに置かれをり

秋茄子に少し似てゐる軽水炉

紅葉かつ散る柴犬の純潔種

霜月の解釈がコペンハーゲン

有名な植物学者ド・フリース

腹式呼吸に定評ある阪西