のど飴を口にふくめば遠い火事 なかはられいこ
「宝くじ」の句は俳句の句集から。「のど飴」は川柳作家の作。諧謔とか叙情とか、そういう大雑把な要素でジャンルの区別を言うのではなく、何が俳句で何が川柳といったことは、少なくとも自分にとっては、もうどうでもいいや、ということであって、どちらの句も好き、という呆けた地点から、まだ一歩も出ていないし、これからさきも出ないかもしれない。
掲句は、岡野泰輔『なめらかな世界の肉』(2016年7月/ふらんす堂)、なかはられいこ『現代川柳の精鋭たち』(2000年7月/北宋社)より。
なお、熊も火事も冬の季語。俳句にも歳時記にも興味のない人は、「なんで?」と思うだろう。私もすこし思う。思うけど、そう決まっているのなら、それを利用しない手はない。
利用、というのは、いくつかの意味。
例えばひとつは、熊=冬、火事=冬との(誰かの)思いのかたわらに立って、句をつくったり読んだりすること。
あるいは、なにかの句について「無季ですね」との(したり顔の)指摘の発生を減らすこと。
熊穴に入るまへに見る景色かな 10key(大昔作・句集未収録)
黒柳徹子のやうな火事でした 10key(人名句集『チャーリーさん』2005年)
余談。
月涼し生まれ変つて会へる率 南十二国『日々未来』2023年9月
熊が二階に来る確率と、どっちが高いんだろう?
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