2026/06/26

■川合大祐句に片っぽうをあてがう旅 『スローリバー』篇

川合大祐『スローリバー』2016年/あざみエージェント

            献句 ひかるなり川も柳もゆつくりと 10key


満月を開ければ 何もない廊下  川合大祐

満月の裏はくらやみ魂祭  三橋敏雄

廊下をさらに行けば、きっと裏。この廊下、「何もなさ」加減が尋常ではない。ちなみに、三橋敏雄は「府中くらやみ祭」を知っていたのだと思う。季語「魂祭」はそこが誘引。


図書館が燃え崩れゆく『失われ  川合大祐

ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ  なかはられいこ

『失われた時を求めて』が消失の途中。字が意味を離れてブツ化していながら、「失」という表意文字は最後まで残る。後者は、2001年アメリカ同時多発テロ(9.11)の3か月後に発行の『WE ARE!』第3号所収、という意味でも21世紀を代表する句に。ともに、カンバスにブツとしての文字を、あるいは宙空にオブジェとしての文字を配したような句。


我思う「これは川柳ではない」と  川合大祐

我思ふ故に猫あり春の小火  攝津幸彦

前者、デカルト+マグリット。後者、恋猫を連想させる(ぶん、飛距離はそこそこ?)。上五が同じなだけで、句の方向が違う。けど、これはこれで、並べて眺めていると、気分がふわっとしてくる。


ウルトラの制限時間超えて滝  川合大祐

ウルトラマンを脱ぎ捨てて俺栗の花  佐山哲郎 『じたん』2001年

ふたつ並べると、滝と汗がつながって、これは、並べたらあかん組み合わせかも。


潰すまえ仮に水母と言っておく  川合大祐

渾沌をかりに名づけて海鼠かな  正岡子規

「仮」つながりで選んだが、なんだか「存在のありよう」みたいなところでつながる感。


年を以て巨人としたり歩み去る  高浜虚子

巨人立つその後の便座もてあます  川合大祐

このだけ句の順を換えた。一年が終わったあとの世界には、便座が似合うので。

(つづくかもしれない)





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