2014/03/11

■湯気の影

「影」という語にはいろいろな意味があって、かたち(shape)だったり日の当たらないところ(shadow)だったり。どの「影」なのかは、文脈によっていろいろです。

  春昼や壁に広がる湯気の影  ふけとしこ

この「影」は、どちらの影だろう 、とちょっと考え、結果、shadowのほうが壁という平面には自然だし、湯気に日が当たって壁にできるかたち、と読んだほうが、おもしろいのではないか、という自分の結論に。

湯気というかたちの定まらないものにも、日が差せば影ができる。その淡い影もまた、かたちをとどめることなく、「壁に広がる」。

湯気に日の差すところを捉えた句は、はじめて読んだ。

ああ、春の気分です。


掲句は『なんぢや』第24号(2014年春)「招待席」より。

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