あの部位をどう呼べばいいのだろう。髪の生えたところ(生えていなくとも本来は生えているはずの部位)。頭部は首より上を指すので範囲が広すぎる。頭頂部では狭すぎる。側頭部も後頭部も含まれるので。
適切な呼称が見当たらない。髪、あるいは禿と呼ぶしかないのでしょうか。
で、この部分は、頭部という身体ヒエラルキーの上部に位置するものの、そのものではなく、覆うもの。
顔というアイデンティティと密接なものの(重要な)一部ではありますが、顔そのものではない。顔と違ってどんどん変わってゆく部分という意味でも、顔とは区別すべき。
この部位(髪あるいは禿)に、ある種の仕掛けをほどこすと、とても奇妙なことが起こったりします。
アフロでもポニーテールでもこわい 久保田紺〔*〕
可笑しい。どんな人なのだろう。
テンガロンハットも似合うわかめかな 榊陽子〔**〕
これも可笑しい。ワカメが帽子をかぶるというだけで可笑しいのに、さらにテンガロンハット。
「可笑しい」は俳句においては忌避されることの多い感慨ですが、川柳ではさにあらず。
それにまた、「可笑しい」は一般には、きちんとした価値を有するものであります。「可笑しい」は、悦ばしい。すなおに悦ばしく「可笑しい」を味わいたいものです。こうした句を前にしたときは。
三島忌の帽子のなかのうどんかな 攝津幸彦
〔*〕久保田紺『大阪のかたち』(2015年5月/川柳カード叢書)
〔**〕榊陽子「ふるえるわかめ(なな子、社長ほか代用可)」
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2015/10/10.html
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