ぶさいくな案山子に思い出せない死 田島健一
案山子はたいがい不細工。田圃であれを見ると、なんだか悲しい気持ちになる。死もまた悲しい死が多いわけですが、その悲しみとは大きく違う。「思い出せない死」となれば、その悲しみは透明感を増す。こうとは言えない、いまひとつ自分でとらえられないという意味での透明。
ここにあるふたつの事物はおおむね対照的。助詞「に」が問題となるが、場所や所以を示す格助詞よりも、並列助詞(と=and)で読みたくもなる。前者で読むと、案山子の顔と死者の(思い出せない)顔がリンクしすぎるのだ。
掲句は『オルガン』第11号(2017年11月8日)より。
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