《ゆふぐれが見知らぬ蟹を連れてくる 10key》(『けむり』2011)という句の「蟹」をタラバ蟹とか松葉蟹と解する人がいらっしゃって、それだと美味しそうな句になる。
「蟹」がいつの季語かという話題もちょっとあった。鍋に入れたりテレビ通販で売っているような蟹は冬でしょうね。沢蟹は夏。
では、「蟹」とだけあったら?
文脈による。
子供の頃、蟹といえば川や石垣で見かける蟹。蟹とは動くもので、ちょっかいを出すと泡を吹いてよこすもの。茹で上がって美味しそうな蟹は、もっぱらオトナになってから(瀬戸内育ちなのでワタリガニは食卓に上ったが、昼間遊んでいるときに見た蟹とは連続しない。別物。『けむり』には《赤坂で田端の人と蟹にする 10key》(2011)といったオトナの句もあって、これは冬季。
ちなみに前掲句、元のかたちは《見も知らぬゆふべを蟹が連れてくる》だった。「見も知らぬ」という言い回しや「ゆふべ」という語がしっくり来ず、「蟹」と「ゆふべ」の作用を逆にした。いまは元のほうがいいような気がしているので、どこかにこのかたちで収めたい。
消火器が凶器にかはる寸前のバロック的なゆふぐれだつた 荻原裕幸『あるまじろん』
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