アイロンの胎内に水春の星 柴田千晶
たしかに水が入っている(入ってないのもあるよ、もちろん)。「胎内」の語で鉄の塊に性が宿る。「春の星」との照応は垂直。構図としてめずらしいものではなく、意図の明瞭さをきらう向きもあろうが、水がやがて水蒸気となり、その一部は空気中へ、空へと、霧消することを思えば、この垂直性は多声的。
それよりも、この湿度。春の星は、四季を通じて最も濡れていそうなのだ。
掲句は『hotel 第2章』第40号(2017年5月10日)より。
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ところで、擬人法とアニミズムはときとして似ている。
作句作法上、忌避あるいは慎重を要請される擬人法。特定の句において称揚の脈絡で用いられるアニミズム。その境界は、それほど明確ではない。
アイロンに命が宿る/が命を宿す、という把握は、擬人法なのかアニミズムなのか、といった判断に、おそらくそれほどの意義はない。
擬人法だからダメ、アニミズムだからオッケー、といったオートマチックな判断二分法って、つまんないよね。
ラヴ&ピース!
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