場外に千金を追ふ師走かな 吉岡建夫
「場外」とは不思議な語で、これだけで公営ギャンブル、馬券、車券を買う場所とわかります。この句の場合は、「千金」とあるのでよけいに明白。
「追ふ」は、いかにも。
一攫千金を求める人たちのウロウロやスタスタ、すなわち脚が見えてきます。
「師走」もまた、なんとか「千金」を得て、年を越そうとする心情からすれば、いかにも。
作者は長く銀行にお勤めになった。仕事で扱う「金」は、この句の「千金」とは桁が違う。それでも、「場外に千金を追ふ」ことが些事で無意味というわけではない。「お金」にはいろいろな種類があって、金額で一様に分別されるものではありません。
なお、掲句の一句前には、
立冬や木つ端の煙る石油缶 同
があり、冬の気分が横溢。
吉岡建夫遺句集『海を渡るベレー帽』は2014年9月20日刊。著者・吉岡建夫氏は1926年生まれ、2013年9月20日に永眠されました。
0 件のコメント:
コメントを投稿