句集『暖色』(2014年5月/マルコボ・コム)より。
震へる機械震へてのぼる秋の蜘蛛 鈴木牛後
蜘蛛ではなく「秋の蜘蛛」。こういう場合の「秋の」にはあまり意味がないことも多いのですが、この句は、秋が「機械」にゆるやかに掛かり、限定をうながす。秋に震える機械って何だろう?という具合。
作者が酪農に携わることは予備知識だけではなく句集全体にそうした句が多いことからも読者に伝わるので、〈震える機械〉はさらに限定される。
「限定」というと悪いことのように聞こえるかもしれませんが、そうではなく、〈読み〉を導く要素というのは、俳句という短い文面にも必要。効果を及ぼすことが多々あります。
機械の振動から蜘蛛の振動へ。秋の澄んだ空気にも、この振動は伝わるようなのですよ。
0 件のコメント:
コメントを投稿