2015/04/22

■奇譚のかけら 久留島元の一句

鳥の巣に鳥がいるとは限らない  久留島元

じゃあ何が?というツッコミ期待のボケネタとして、あるいは波多野爽波《鳥の巣に鳥が入つてゆくところ》 を下敷きとして、パロディ的な(パロディとは言っていない)ありようをもって、微笑を誘う、というところに落ち着くのではなく、怪奇めいた印象を醸しだすのは、どうしてだろう。

作者が狙いどころがソコだからか、あるいは同時に並んだ数句がつくりだす脈絡からなのか。でも、そうとも言い切れない。この句一句のみでも、ネタに回収されないニュアンスを含んでいる。

不思議。

(為念。微笑は、怪奇によっても、もたらされる。問題は微笑の源泉だ)

「鳥の巣」とは、ものごとの(硬い言い方ですが)結節点のような場所です。そこに、裏切りや不明の視点があると、ものごとの流れ全体が奇(あや)に変成する。

句が奇譚のかけら(重要なワンピース)として機能しているのかもしれません。


【追記】

この句、映画の惹句のようかというと、「そんな映画、誰も観ないって!」だし、格言のようかというと……ちょっとその気味はある。西アフリカあたりの。

0 件のコメント: