2015/05/30

■行く春には行く春の

『鷹』2015年6月号より。

行春や木戸遊ばする蝶番  小川軽舟

季語「行く春」の取り合わせには、ふわっとして不安定な事物が多い。この句もその範疇。形容詞、形容動詞を用いずに「ふわっと不安定」感を描き、雰囲気を醸し出す、確かな腕前。


ところで、時期的には隣接している「夏きざす」「夏はじまる」に類する季語となると、一転して、しゃきっと鮮やかな事物が選ばれる。昨日まで晩春の懈怠や無聊を句にしていたかと思うと、立夏が訪れたとたん、しゃきっと明度の高い描写へ。

融通無碍に「季語」に寄り添うような俳人の習い性は、パターン依存のようにも見えるが、それが季節感というものだろう。




0 件のコメント: