アボガドが書く宛名はいつも中途半端であてにならなかった。
脳味噌をトロトロのアイスクリームにさせる陽射しのなか、俺は穴ぼこみたいな自分の影と一緒に埃っぽい田舎道をゆらゆら移動していた。時折、立ち止まってアボガドのメモを確認したが、焼いた煉瓦並みに陽炎をおっ立てている田舎道でB1だかB3だかの鉛筆で撫でくった文字を解読するのはとても大変なことだった。
アボガドは五十過ぎのデブで俺は奴の水の飲みっぷりから糖尿だろうとふんでいた。(…)
平山夢明『メルキオールの惨劇』200年/ハルキ・ホラー文庫
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