運針のあとを音符がついてくる
英虞湾はしずか遠心力により
夜はまだ四つに畳まれたまんま
ひかがみが輝きここは泣くところ
しゅるるんとコードをしまう鳩尾に なかはられいこ
2
深夜28時…。
タルホニア博士は星型をした硝子の器に、新種のモリアオガエル式アンドロイドを浸しては、ひどく神経質な手つきでその青白い脚を洗っていた。窓の外では、ほわわん、ほわわん、と粋な超おんぱを奏でながら、雑種のコウモリが飛んでいる。コウモリは、この時代にしてなお生身の身体を死守しているファンキーな蛮族だ。
小津夜景
3
するとそこには、一人の天使と(相變らずこの言葉が、私を不安にし、誘惑し、氣持をわるくします。彼等に翼がある位なら、齒だつてないでしようか? 彼等はあんな重い翼、羽根の生えた翼《神秘な翼》で、翔ぶのでしようか? そして堕ちると變える天使という彼等の有難い名のおかげで、木乃伊になるのでしようか?)
ジャン・ジュネ『花のノートルダム』1944/堀口大學訳/新潮社1953
それにしても、イカロスはほんとうに墜落していくのか。イカロスは、やがて海中の深みに行って、すっくと立ちあがるのではないだろうか。
ガエタン・ピコン『イカロスの墜落』1971/岡本太郎訳/新潮社1974
「でも」とセラフィトゥスは答えた。「あなたはもっと広い空間を恐れずに見ているではありませんか」 p24
…
セラピムは飛び立つためにそっと翼をたたんだ。もう二人の方は振り向かなかった。もう《地上》とは何のつながりも持たなかったのだ。 p229
バルザック『セラフィタ』1835/沢崎浩平訳/国書刊行会1976
垂直にまつわる3つの引用 quoted by 西原天気
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タグ:連鎖ゲーム
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