雀蛤となつて夕餉の良い匂い 岡田一実
蛤のお椀が連想され、「食べちゃうんだー!」と、ちょっとびっくりする。この季語の処理としては、かなり新鮮、というか異例。素っ頓狂な味もある。おもしろいですね。
(「て」のうしろの切れを深い切れと解し、ハマグリと夕餉を結び付けない読み方もあるにはありますが、意味で関連するなら関連させて読む、というのが私の基本的スタンス)
ところで、季語の「本意」がどうのこうの、というのは、句を評するときのなかばクリシェ。したり顔で口にされることも多い。本意などどうでもいい、とはまったく思わないけれど、本意を了解したうえで、季語を遊ぶ態度も、俳句の楽しみ。そう考えているので、雀が大海に入り、蛤となって、水揚げされ、そして作者の食卓にのぼった、という事態もまた、おおいにアリなのです。
掲句は岡田一実句集『小鳥』(復刻2015年11月1日/マルコボ.コム)より。
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