2015/11/17

■スズメの国・ハマグリの星 岡田一実句集『小鳥』の一句

晩秋の季語「雀蛤となる」は七十二候のひとつ(詳しくはググれ)。古い中国由来。句になるときは、二物衝撃的に、関連が濃くなり過ぎないように、あるいは伝奇的なモチーフと結びつけるなどを、よく目にする。スズメやハマグリの形象がキュートだし、言葉遊び的に楽しい季語でもあります。

そんななか、これ。

雀蛤となつて夕餉の良い匂い  岡田一実

蛤のお椀が連想され、「食べちゃうんだー!」と、ちょっとびっくりする。この季語の処理としては、かなり新鮮、というか異例。素っ頓狂な味もある。おもしろいですね。

(「て」のうしろの切れを深い切れと解し、ハマグリと夕餉を結び付けない読み方もあるにはありますが、意味で関連するなら関連させて読む、というのが私の基本的スタンス)


ところで、季語の「本意」がどうのこうの、というのは、句を評するときのなかばクリシェ。したり顔で口にされることも多い。本意などどうでもいい、とはまったく思わないけれど、本意を了解したうえで、季語を遊ぶ態度も、俳句の楽しみ。そう考えているので、雀が大海に入り、蛤となって、水揚げされ、そして作者の食卓にのぼった、という事態もまた、おおいにアリなのです。

掲句は岡田一実句集『小鳥』(復刻2015年11月1日/マルコボ.コム)より。


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