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2026/07/04

■川合大祐句に片っぽうをあてがう旅 『リバー・ワールド』篇

川合大祐『リバー・ワールド』2021年/書肆侃侃房



失った世界ガソリンスタンド忌  川合大祐

たましひの須田町眠る半分忌  忌日くん「をととひの人体」

世界がすべて失われるよりも、半分だけのこるほうが、ずっと怖ろしい。

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無 ホカホカねえさん以外すべて虚無  川合大祐

泣いて無意味な兄も素敵な土用波  竹岡一郎「バチあたり兄さん」

こっちの俳句岸は、虚無虚無虚無。虚しいよ。そっちの川柳岸はどうですかー、川合さーん。

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京大の麻婆丼がうつくしい  川合大祐

東京の美しき米屋がともだち  阿部完市

学食はたまた百万遍の王将なのか? 本郷あたりの米穀商なのか?

●

猿に似た長方形を持ち歩く  川合大祐

寝てしまふ猿を起して猿廻し  下田実花

眠っているあいだは、誰によらず何によらず長方形。かもしれないよ。

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実在に全力もって小池歯科  川合大祐

島田様たびたび泣きにやってくる  樋口由紀子

「どこやねん句」に「それ誰句」を。

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草を食む宇多田ヒカルに似せた牛  川合大祐

馬齢噓こき矢野顕子総入れ歯  西原天気〔回文〕

自作をそっと忍び込ませる。掏摸の手際。

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「山本リンダ」  川合大祐

布施明「君は薔薇より美しい」  西原天気〔未発表〕

同上。あるいはレディメイド。すでに失われ、すでに虚しく、すでに美しい。


(『ザ・ブック・オブ・ザ・リバー』へと、つづくかもしれない)

2026/06/26

■川合大祐句に片っぽうをあてがう旅 『スローリバー』篇

川合大祐『スローリバー』2016年/あざみエージェント

            献句 ひかるなり川も柳もゆつくりと 10key


満月を開ければ 何もない廊下  川合大祐

満月の裏はくらやみ魂祭  三橋敏雄

廊下をさらに行けば、きっと裏。この廊下、「何もなさ」加減が尋常ではない。ちなみに、三橋敏雄は「府中くらやみ祭」を知っていたのだと思う。季語「魂祭」はそこが誘引。

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図書館が燃え崩れゆく『失われ  川合大祐

ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ  なかはられいこ

『失われた時を求めて』が消失の途中。字が意味を離れてブツ化していながら、「失」という表意文字は最後まで残る。後者は、2001年アメリカ同時多発テロ(9.11)の3か月後に発行の『WE ARE!』第3号所収、という意味でも21世紀を代表する句に。ともに、カンバスにブツとしての文字を、あるいは宙空にオブジェとしての文字を配したような句。

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我思う「これは川柳ではない」と  川合大祐

我思ふ故に猫あり春の小火  攝津幸彦

前者、デカルト+マグリット。後者、恋猫を連想させる(ぶん、飛距離はそこそこ?)。上五が同じなだけで、句の方向が違う。けど、これはこれで、並べて眺めていると、気分がふわっとしてくる。

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ウルトラの制限時間超えて滝  川合大祐

ウルトラマンを脱ぎ捨てて俺栗の花  佐山哲郎 『じたん』2001年

ふたつ並べると、滝と汗がつながって、これは、並べたらあかん組み合わせかも。

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潰すまえ仮に水母と言っておく  川合大祐

渾沌をかりに名づけて海鼠かな  正岡子規

「仮」つながりで選んだが、なんだか「存在のありよう」みたいなところでつながる感。

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年を以て巨人としたり歩み去る  高浜虚子

巨人立つその後の便座もてあます  川合大祐

ここだけ句の順を換えた。一年が終わったあとの世界には、便座が似合うので。

(つづくかもしれない)





2022/12/26

■組句:映画の前後

M列六番冬着の膝を越えて座る  榮猿丸

エンドロール膝の外套照らし出す  柘植史子

コロナ以降、映画館からすっかり足が遠のきました。危機意識よりも予約うんぬんの煩わしさのほうが主因。億劫がっていては愉しみをたくさん逃してしまうことはわかっているのですが……。

2022/05/09

■勝手に組句:潜水服

黒南風や潜水服の護謨匂ふ  相子智恵

白南風や潜水服のなかに人  10key

内からと外からと。

〔*1〕相子智恵『呼応』(2021年/左右社)
〔*2〕西原天気『けむり』(2011年/西田書店)

2020/04/03

■組句:歯

万緑の中や吾子の歯生え初むる  中村草田男

歯が生えてこの子も父をわらうのか  時実新子〔*〕

前者。季語「万緑」の発端と同時に、いわゆる吾子俳句の源流のひとつかもしれません。

後者。川柳の威力をわかりやすく発現。

ならべて、にやっとして愉しむ。


〔*〕『rereading 時実新子』vol.6(2020年3月)


2019/12/20

■組句:非常口の人


非常口に緑の男いつも逃げ  田川飛旅子

白靴の脱げかけてゐる非常口  浅沼璞〔*〕

靴が脱げかけているのは、生身の人間と解すべきだろうが、こう並べると、あのピクトグラムの男の靴、と思えてきて、諧謔が増した。

(靴はいてるのか、どこが靴だ? という問題はさておき)。


〔*〕浅沼璞『塗中録」(2019年11月/左右社)

2018/03/05

■勝手に組句:ウルトラマン

ウルトラマン勝って頭に枯尾花  加藤知子〔*1〕

ウルトラマンを脱ぎ捨てて俺栗の花  佐山哲郎〔*2〕

季節は逆行だけど、仕事の過程として。

ウルトラマンの「中の人」(スーツアクターと呼ぶそうです)を調べてみると、古谷敏。ここでの演技が認められ(?)、次シリーズ「ウルトラセブン」では、顔出しの隊員としてキャスティングされたそうです。

【おまけ】

着ぐるみの覗き穴から去年今年  石原ユキオ


〔*1〕加藤知子『櫨の実の混沌より始む』(2017年12月/ジャプラン)
〔*2〕佐山哲郎『じたん』(2001年9月/西田書店)

2018/02/17

■勝手に組句:夕立

今走つてゐること夕立来さうなこと  上田信治『リボン』

夕立が来さうで来たり走るなり  西村麒麟『鴨』

夕立と走るはセット。これを詠んだからと言って必ずいわゆる類想になるわけではない。そんなことを言ったら、どんな優れた映画も、「よく見た」シーンの合成物。要は、人が知っていることをどのように組み立てて、「在ったもの」「在るもの」こそが、世界のあざやかさを形作っていることを提示すること=俳句、です。ちがう?

夕立が来そうだから走る人(1句目の語順は因果そのままではないが、まあ、とりあえず)と来てから走る人。

どちらの句も好き。


≫柳本々々【感想】今走つてゐること夕立来さうなこと
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-169.html

2017/11/13

■勝手に組句:プロペラ

プロペラの句は意外に少ない。

ぷろぺらのぷるんぷるんと花の宵  小津夜景『フラワーズ・カンフー』 

プロペラ機までの日傘をひらきけり  山尾玉藻

胸に聴くプロペラの音夏は来ぬ  10key「東京タワー」


2016/07/16

■組句:劇団員

喫茶店のカウンター横に置かれたチラシ、チラシを置くようなところだからコーヒー店チェーンでも純喫茶でもない、店主の趣味が色濃く店内の隅々に反映されたような喫茶店なのですが、そのチラシの一枚が、残念ながら聞いたことのない劇団の公演を告げて、俳優陣の顔写真が妙にたくさん並んでいたりする。やはり誰ひとりとして見たことのない俳優陣の上段には主役級の、世間でいえば美男美女、中段あたりには、剽軽な表情をつくった役者。そのなかから、近い将来、私たちがテレビや映画で目にするような人気俳優が生まれるのかもしれず、否、すでに演劇界では広く知られた俳優さんが微笑んでいるのかもしれず。

私自身は、チラシに目をくれても、実際に足を運んだことはないのだけれど。


劇団に芽生えし恋や扇風機  髙柳克弘〔*1〕

劇団の子の垢抜けぬ水着かな  岡野泰輔〔*2〕


〔*1〕髙柳克弘『寒林』(2016年5月/ふらんす堂 )
〔*2〕岡野泰輔『なめらかな世界の肉』(2016年7月/ふらんす堂 )



2016/06/09

【組句】頭にのせる

ふくろふを頭にのせて考へる  吉田悦花

脳天もかび理髪師にまかせきる  有馬朗人

三島忌の帽子のなかのうどんかな  攝津幸彦

あたまのさきにかみさんをのせてあのひとはどこからきたのであらうか  武藤雅治〔*〕


〔*〕歌集『あなまりあ』(2016年5月/桃谷舎)

2016/06/04

■組句:皿・妻・双子

秋風や模様のちがふ皿二つ  原石鼎

春風や模様のちがう妻二人  中村安伸〔*1〕

むかひあふもやうのちがふ双子かな  嵯峨根鈴子〔*2〕


パロディー、もじり、本歌取り、呼称はなんでもいいけれど、先行テクストの引用・編集・脚色・アレンジは、俳句の愉しみのひとつ。


〔*1〕『新撰21』(2010年1月/邑書林)

〔*2〕嵯峨根鈴子句集『ラストシーン』(2016年4月/邑書林)

2016/05/28

■組句:少女

鉄塔のひとつは少女鳥渡る  江口ちかる〔*1〕

絶対電柱少女ぎしぎし歩く  大畑等〔*2〕


聳え立つイメージ。巨大な少女。前者は立ちつくし、後者は歩く。


〔*1〕『俳句と超短編』第3号(2016年6月5日)

〔*2〕大畑等句集『ねじ式』(2009年2月/私家版)


2016/05/12

■組句:森林

父方といっても花の森のこと  野間幸恵〔*〕

あたたかな橋の向うは咲く林  宮本佳世乃〔**〕


森と林の違いは、木の本数ではないようですね(なるほどという説明≫こちら)。

あたたかな光に満ちた橋の向うは、諸々の美しい花が咲く林。こう読んでくると、〈あたたかな橋〉は天国への入口のような、あるいは彼の世と此の世を結ぶ、能の橋掛かりのような不思議さを帯びてくる。(相子智恵)
http://hw02.blogspot.jp/2016/05/blog-post_9.html

「父方」という出自=時間にも、「向う」という距離にも、シャグリラ感。花の威力でしょうか。


〔*〕野間幸恵『WATER WAX』(2016年1月/あざみエージェント)より

〔**〕『オルガン』第5号(2016年5月)より

2016/01/09

■組句:ドラえもんといえば青、らしい

ドラえもんの青を探しにゆきませんか  石田柊馬

ドラえもん右半身が青色の  川合大祐

偽物のドラえもんかな薄い青  竹井紫乙〔*〕

いずれも川柳作家の句。短歌にもドラえもんモチーフの歌がわりあいにあるようですが、俳句では、とんと見かけません。


ちなみに、私自身は、ドラえもんのことをほとんど知らないんです。マンガもアニメも見たことがない。猫なのか何なのかさえ知らない。すみません。


〔*〕竹井紫乙句集『白百合亭日常』(2015年9月25日/あざみエージェント)
詳細はこちら↓
http://azamiagent.com/modules/myalbum/photo.php?lid=41&cid=1




2015/12/06

■勝手に組句:使用前後・使用中

吊られゐて潜水服の中おぼろ  杉山久子 『泉』

白南風や潜水服のなかに人  10key 『けむり』




2015/11/19

■勝手に組句:毛皮夫人と鰤旦那

オカリナを吹きをり夜の毛皮夫人  中嶋憲武

服の上にどてらをつけて鰤旦那  八田木枯

タイトル「毛皮夫人と鰤旦那」をやりたかっただけです。

「お金持ち俳句」というジャンルにも見えますが、ちょっと違うような気もします。



2015/11/13

■勝手にデュエット 吉田戦車



人名句集『チャーリーさん』(2005年1月/私家版)。
ご本人の肉筆イラスト。宝物。


2015/08/27

■組み句:風鈴の終わり

よく鳴りながら風鈴のはづさるる  根橋宏次

風鈴を鳴らさぬやうに仕舞ひけり  齋藤朝比古

鳴っている句と鳴らない句。どちらを選ぶかということでは、もちろんありません(よく鳴るから鳴らさないように、ということでもあるでしょう)。

どちらの句にも、外す・仕舞う所作と風鈴の表情が見えます。


根橋宏次句集『一寸』2015年 齋藤朝比古句集『塁日』2013年


2015/01/30

■冬季映画 :勝手に組句

M列六番冬着の膝を越えて座る  榮猿丸

映画の死者にまた葬送の楽おなじ  林田紀音夫

接吻もて映画は閉ぢぬ咳満ち満つ  石田波郷

エンドロール膝の外套照らし出す  柘植史子

映画出て火事のポスター見て立てり  高浜虚子