2020/10/13

■続・下六のグルーヴ

 承前≫http://sevendays-a-week.blogspot.com/2020/10/blog-post.html

『藍』第552号(2020年10月1日)は花谷和子(1922 - 2019)の追悼号。花谷清抄出の「花谷和子の百句」を下六の観点から読んでみた。

手ばなせし家避け通る露にまみれ  花谷和子(以下同)

子供の日の頃の迅さで泥鰌遁げる

いま乾くとも炎昼の水打つ母

月光がいまてのひらに深夜の色

金魚の朱しずめ朝から瀟洒な雨

以上、1962年刊の第一句集『ももさくら』より。抄出とはいえ20句のうち5句だから、頻度は高い。昭和半ばには、男性俳人と限らず、下六が積極的に採用されていたのでしょう、きっと。

前掲のうち下五に収めることが容易にできそうな句も(例えば、露に濡れ、泥鰌逃げ、夜の色)、あえて下六。ここまで言うのだ、という覚悟のようなものが韻律に勁さを与えている気がします。

もっと下六が試みられていいように思います。

ラヴ&ピース!

2020/10/11

■下六のグルーヴ

 俳句の五七五の下が1音あまった五七六のリズム、グルーヴに魅了されることが、わたし、しばしばなんですが、最近は過度に有季定型流行りのようで、見かける頻度は多くない。ちょっと昔、というかベテラン、それも男性俳人の句に、この素敵な下六を見つけることが多いような気がする(ふわっとした印象・把握ですみません)。

で、週俳にもレビューを書いた今井聖『九月の明るい坂』をめくってみると、あんのじょう、ありますあります。

永遠に下る九月の明るい坂  今井聖

アカルイサカ。いいです。この最後ひきずるかんじのリズム。

かなかなの止む頃に来る不思議な客  同

フシギナキャク。前掲句と同様に、週俳レビューで取り上げた句。こちらも4+2の6音。

暁闇の蟹がバケツを引掻く音  同

ヒッカクオト。「音」まで言わなければ5音にまとめる方法がいくらでもありそうですが、あえて6音。蟹の執念やら聞いている作者の反応の粘度が伝わります。


下六はもっと狙っていい技巧。5音ですっきりまとめるよりも、いいグルーヴが出て、それが句のもつ質感や気分に大きく寄与することもあると思いますよ。

(他の句集でも探してみて取り上げるかもしれません。結果、「少ない!」という発見も含めて)

ラヴ&ピース!