2020/01/31

■自転車に乗って 構文の話

句の構造というか構文(?)の話。

俳句って、何かを伝えるのに字数が足りないケースが少なからずありまして、また、そこで何が言われているのか(広義のシニフィエ)を確定できないことも多い。で、その曖昧・不確定(悪い意味で使ってはいません)が、構造・構文に由来するものだったりする。

自転車のかごがからっぽの花野  前田凪子

この句、

《自転車のかご》が《からっぽの花野》

なのか、

《自転車のかごがからっぽ》の《花野》

なのか。

後者と読む人が多いかもしれません。前者のように《かご》=《花野》と把握するのはちょっと無理がある。後者なら、《花野》の直前にある「の」に意味を補えば、現実的な景色になりますしね。《自転車のかごがからっぽ》の状態で《花野》にいる/やってきた。

でも前者の非現実的な景色も、興趣という点では捨てがたいでしょ? むしろこっちのほうが面白い。


これ、難しい問題ではあるんですが、どっちと確定させない手もある。俳句ではよくあるんですが、響き/メロディーがひとつではなく、複数。

どちらも響いてきて(あるいは2枚の絵がオーヴァーラップして)、滋味が増す。

どちらかひとつ、と決める必要ってなかったりするわけです。俳句でも、なんでも。

ラヴ&ピース!


掲句は『鏡』第34号(2020年1月1日)より。






2020/01/30

■にこごりがちあきなおみとつぶやいた(冬)

「中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜」は、2週にわたり、ちあきなおみ。



耳鳴りもちあきなおみも冬隣  浅沼璞(句集『塗中録』2019年11月)


2020/01/29

■誤認の鳥 石部明の一句

老眼のせいばかりでないでしょう。例えば「鳥」と「烏」は、よく見間違う。目を凝らさないといけない。カラスはお願いだから烏ではなく鴉と表記してほしいと、わがままなことを思ったりする。

烏龍に鳥なく母は午睡せり  石部明

一読、《鳥籠に鳥なく(とりかごにとりなく)》と読み、透明な叙情をたたえた句、川柳作家の句を俳句として読むのはよくないが、昼寝=夏の季語と受け取って美しい句とも思った。

が、もう一度見ると、鳥籠ではなく「烏龍(ウーロン)」だった。

字で遊んだ句だろうが、きっと、鳥籠へと誤認されることも、作者の計算に入っていると思う。

母の午睡と鳥の不在。

いずれにしても美しい句。

ちなみに、午睡は「ひるね」と宛字っぽく読むより、「ごすい」とそのままに読みたい。

掲句は『石部明の川柳と挑発』(堺利彦監修/2019年12月25日/新葉館出版)より。

2020/01/26

【宣伝】お誕生日ライブ、迫る

明後日・火曜日に迫ったわけです。ライブ。

http://sevendays-a-week.blogspot.com/2020/01/blog-post_14.html

東京は雪?



今ではレア? 石原ユキオ氏制作の憑依カンバッジ。飾りじゃなくて、ストラップのずれ止め。

2020/01/24

■書く匂い

筆記用具。

いろいろあるんですが、万年筆と鉛筆の匂いのことをとつぜん思いました。他のもの、ボールペンやらサインペンやらには感じない。毛筆は、それはもう濃く匂うのですが、普段使わないし、身のまわりでいうと、万年筆と鉛筆。

万年筆はインクの匂い。

鉛筆は芯の匂いと木の匂い?

偏愛、フェティシズムに匂いの要素って大きいな、と、机の前で思ったのですよ。

ラヴ&ピース!

2020/01/22

■飼育

亀を飼ふクラス兎を飼ふクラス  岡田由季

兎と亀。

うふふふ。

でも、これ、実際にありそう。学校の実景っぽい。

掲句は『儒艮』第30号(2020年2月1日)より。



2020/01/17

■開いた。やっぱり開いた。開くと思ってた。

手が見える半分見える襖開く  鈴木春菜

「手が」というのだから、しかも「半分」なのだから、手しか見えない。その手が為す、為したその結果が「襖開く」。ここに不思議はない。あたりまえの帰結・展開で、句としては「脱力系」ともいえるのだろう。

叙情はない。おそらく詩もない。とうぜんの成り行きを呆けたように目撃する作者。というか眼(まなこ)があるだけで、そこがきわめてドライでハードボイルド。結果、読者としては、安心してニンマリできる。なぜに安心なのかといえば、余計なもの、ううんと例えば叙情とか詩とか? がないから。

ラヴ&ピース!

掲句は『301 vol.2 ダダダダダウッピー』(2019年12月23日)より。


2020/01/14

■ライブのお知らせ イチニッパーズ デビュー!

1月28日は井口吾郎さん(回文俳句で知られるあの吾郎さんね)の誕生日かつyuki氏(嫁はん)の誕生日。奇遇!

今年この日は火曜日なんですが、吾郎さん主催の「128お誕生日ライブ」に、私ども夫婦(めおと)で客演します。

場所:大森・風に吹かれて JR大森駅・東口5分
https://oomorikazefuka.weebly.com/access.html
日時:2020年1月28日(火)18:30開場 19:30開演
2,100円(ワンドリンク付き)

私たちが出るのは、吾郎さん中心のいろいろな演目のあとの後半。

イチニッパーズ
吾郎さん(ベースとボーカル)、シオリさん(二胡とボーカル)、嫁はん(ピアノ)、私(ギター)。このあいだうちの居間で音出しして、楽しかったです。バンド名もそのとき数秒で決めました。

曲目は、
嫁はんと私の二人インスト
吾郎さんが歌うオリジナル曲
シオリさんが歌う「It's Not The Spotlight」…おなじみの名曲。
リベルタンゴ:二胡入り、これは注目。
  ≫2019年6月、別バンドでのライブ 11分26秒から
賽馬:二胡のスタンダード。2拍子で馬が走ってるみたいな曲。

リハ2回で本番突入、ということで、少々不安はありますが、それも一興。

平日ですが、気が向いたらぜひどうぞ。


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大森 風に吹かれて  https://oomorikazefuka.weebly.com/
大田区大森北1丁目34-16 第二みずほビル2F
TEL&FAX :03-3763-6555 Email :blowind0804@gmail.com

2020/01/13

【お知らせ】1月のくにたち句会

2020年1月26日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)

席題8題程度

事前兼題2題(当日お持ちください) 紙 のりもの〔テーマ〕

初参加の方は、メールtenki.saibara@gmail.com、電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。

2020/01/09

■月光の解剖図 『鏡』第34号より

月光に開け放ちたり解剖図  八田夕刈

開け放たれているのは紙/書物のページ(解剖図)。と同時に、切り開かれた人体(あるいは何かの生物でもいいが、ここはやはりヒトと読むのが自然)。二重の意味・イメージは意図されたものだろう。

解剖図の赤黒い色調は、日光・太陽に晒されるのでは、雰囲気が出ない。月光って、きほん、あやしいですからね。

ラヴ&ピース!


掲句は『鏡』第34号(2020年1月1日)より。


2020/01/05

■年が明けて:消息的なもの

毎年恒例の『週刊俳句』新年詠は不参加に終わりましたが(だって句ができなかったんだもん)、#令和版百人一首リレーというツイッター上のイベント(?)にお誘いいただき、一首あげましたですよ。

https://twitter.com/10_key/status/1213240829256425472

私が短歌を? 私でいいの? という部分はあるのですが、いやもう、おおいにあるのですが、せっかくの機会ですしね。