老眼のせいばかりでないでしょう。例えば「鳥」と「烏」は、よく見間違う。目を凝らさないといけない。カラスはお願いだから烏ではなく鴉と表記してほしいと、わがままなことを思ったりする。
烏龍に鳥なく母は午睡せり 石部明
一読、《鳥籠に鳥なく(とりかごにとりなく)》と読み、透明な叙情をたたえた句、川柳作家の句を俳句として読むのはよくないが、昼寝=夏の季語と受け取って美しい句とも思った。
が、もう一度見ると、鳥籠ではなく「烏龍(ウーロン)」だった。
字で遊んだ句だろうが、きっと、鳥籠へと誤認されることも、作者の計算に入っていると思う。
母の午睡と鳥の不在。
いずれにしても美しい句。
ちなみに、午睡は「ひるね」と宛字っぽく読むより、「ごすい」とそのままに読みたい。
掲句は『石部明の川柳と挑発』(堺利彦監修/2019年12月25日/新葉館出版)より。
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