2020/07/30

■〈12音+季語〉は入り口の一つに過ぎない(という当たり前のことを言っておきたくなった)

12音をつくって、季語をプラスして、はい一句、という作句の手順。

参考≫https://twitter.com/sorori6/status/1287568320737107968

初心者への作句のコツとして一般的なものらしく(私は教わらなかったが、これは年をとってから俳句を始めたせいもあるし、参加した句座にもよるのだろう)、ずいぶんと前から、また現在もたびたび話題にのぼるが、退屈な応酬に終わるようだし、実りのある議論にはならない(とりあえず単純なノウハウの話だしね)。

この話題で一点だけ、私が思う、というか、誰かに言いたいのは、俳句の愉しみ・俳句のコクは、その先にある、ということ。

これは誰でも思っているし、言うだろうけど、あらためて。

「こうすれば、ほら、俳句ができますよ」という「俳句入門」の指針として、《12音+季語》という考え方は有効だろう。実際、よくこういうふうに教える人が多い。けれども、それは入り口の一つに過ぎない。

入口付近で俳句を楽しんでばかりでは、もったいない。〈12音+季語〉のほかにも、作句の方法はあるし、読み方もある。その豊かさに触れず、入り口で盛り上がっているのは、もう一度言いますが、もったいない。つうか、俳句って、そうじゃないからね。そんなダンドリっぽいもんじゃないから。

ということで、この話題を終わらせてもいいのだけれど、ちょっと色をつけて、実際、〈12音+季語〉というパターンが、どのくらい浸透しているのか、一方、〈12音+季語〉じゃない句って、どんな感じなのか。それをちょっくら見てみようと思います。

(つづく)

2020/07/27

■侍はパンツの中にシャツを入れ・樋口由紀子 川柳 in『暮しの手帖』

『暮しの手帖』という雑誌。めくるのは数十年ぶりだと思う(はじめてではない。大昔に読んだことがある。実家にたくさんあった)。1948年(昭和23年)9月に前身『美しい暮しの手帖』が創刊されてから70年以上! すごい!

なんで手元にあるかというと、金井真紀の連載「はじめてのお楽しみ」の「その二」が「川柳」ってことで、樋口由紀子さんが案内人。『金曜日の川柳』の縁で、私にもご恵贈いただいたわけです。


金井氏の記事は軽妙で要点が手際よくまとめられている。例句も、いい(これ、だいじ)。樋口さんの似顔絵はあまり似ていない。今年の第7号(8-9月号)。おすすめ。料理のページが「身体をいたわる 夏の中国料理」とか「わたしのお昼ごはん日記」とか、かなり良さそうです。

2020/07/16

■可笑しくも不穏 『トイ』第2号より

算盤が置いてある洞窟の前  樋口由紀子

景として明瞭。だが、これ、事態として、不穏なのか、可笑しいのか、判断がつかず、きっと、どちらも、なのだろう。


『トイ』第2号(2020年8月1日)より。


2020/07/07

■白いもの

あかときの月より白く蟬生まる  北杜 青〔*1〕

鶴よりもましろきものに處方箋  八田木枯〔*2〕

世の中に白いものはたくさんある。そこから何と何を持ってくるか。

何と何なら優れた句になるのか、といった問題ではなくて、そこはもう、好みというか、作者の審美や心持ちと読者(私)がどう呼び合うかということだと思います。

どちらの句も、美しい。


〔*1〕北杜 青『恭(かたじけな)』2020年3月/邑書林
〔*2〕八田木枯『鏡騒』2010年9月/ふらんす堂