2018/05/30

■amazonレビューの闇

amazonに限らず商品レビューについては参考にするものとしないもの、かなりはっきり決めている。

するのは、工業製品(掃除機とかね)、日常の実用品(猫のトイレ砂とかうがい薬とかね)。

しないのは、表現物一般。CDとか映画とか本とか。

参考にしないから星の数を見ることもレビューを読むこともないのですが、以前、ふと、『キック・アス』の星ひとつレビューを読んじゃった(どのサイトか忘れた)。

すると、そこには、小さな女の子(クロエ・グレース・モレッツ扮するヒット・ガール)が、人をバンバン殺すのは許せない、ひどい、とかなんとか。

ふぅ(ため息)。

この人、『キック・アス』という映画に、何を観ようとしているのだろう? なんだか、根本のところで、大きく、どこか違う気がします。

そして、そもそも、なぜに、それについて何かを言いたい(批評)と思い、何らかに評価(星の数)しようとしたのか? つまり、動機。

いろいろわかりません。

ユーザーレビューの深い闇です。



2018/05/26

■デブと雨乞い

学生のときに聴いた社会人類学教授の話で最も印象に残っているのは、

  乾季に雨乞いをする人(民族)はいない

儀礼の本質だなあ。


このあいだやってきた友人の植木屋の話で最も印象深ったのは、

  コストコの客はなべて肥満

そういえば、揃ってデブな、もとい、ふくよかな家族が多いような気がする。

ラヴ&ピース!

2018/05/25

■賜り物

父親の職業が「木こり」というのはそうとうなインパクトがある。友人がまさにそうで、しかし、聞いていると、与作が木を切るヘイヘイホーな感じじゃあない。要請があって全国の森林に伐りにゆく。

友人の実家は日本の秘境。その地で彼の母君が拵えた2年ものの蜂蜜を我が家にも授けてくれ、朝、苺にかけて食べたりすると、ああ、ああ、ああ美味。

夏ですね、という話。


2018/05/22

■夏が来れば山椒の実を

毎年恒例の山椒の実。


テレビドラマの録画を観ながら夫婦で。

一箱仕上げる(枝から実を離して一粒ずつにする)のに、2.5時間。ひとりだと5時間かかる計算なので、共同作業の意味はあるぞ。

これを水にさらし、それからいろんなものになる。

ラヴ&ピース!


2018/05/19

■『はがきハイク』第18号のこと+前島密おおぜい

業界最小最軽量の俳誌『はがきハイク』18号を投函しました。今日あたりから週明けにかけて、みなさまのお手元に届く模様であります。

「届かないぞ、送れ」という方は、メールtenki.saibara@gmail.com をください。お送りいたします。


【お願い】
はがき「全面」の写真、画像キャプチャーを、ネット上に載せるのはご遠慮くださいますようお願い申し上げます。

2018/05/18

■出来上がりを売っているようなものでも、材料から作ると格別、という話

いや、自分でつくったような書き方をしてしまい、すみません。

某日、お茶漬けのおかずは、嫁はんがつくった3品。

1 山椒がシーズンですね(使っているのは昨夏に冷凍保存しておいたもの)。ちりめんじゃこと煎る。安定の取り合わせ。

2 庭に生えてきた蕗で、伽羅蕗。

3 えのき茸を醤油ほかで炊く。市販の瓶詰めよりも歯ごたえが残って断然良い。

■あれこれといじる愉しみ

このあいだ、

 ネクタイのかはりに滝を掛けておく  10key

という句をつくった。そのことを嫁はんに告げると、

「わからない。

 滝のかはりにネクタイを掛けておく

なら、わかるけど」と。

おっ! なるほど! まったく俳句をやらないわりに、鋭い指摘。

代替は二物が交換可能なので、どちらにもできるのはとうぜんなのだけれど、いわゆる句意は違ってくる/句のなかの行為が違ってくる。

さて、どちらにするか。あれこれと考える。



この春には、オオイヌノフグリで一句つくろうと思い立ち、哲学者と組み合わせてみましょうかということで、犬儒派の名前をまず思い浮かべたけれど、これって、気取り過ぎだし、なんだか背伸びしているみたいで、俳句って背伸びするとかならずバカがばれる。これはやめにして、イヌからではなく、ふぐりから出発して、

 おほいぬのあるきめですのふぐりかな 10key

に落ち着いた(『短歌・俳句 We』第5号「卓球」20句)。風呂という俗っぽいエピソードに寄せたほうがいいという判断。景も見えるしね。(どんな景だ?)

一句をつくるとき、あれこれ考える。ちゃくちゃと、いじる。これって、俳句をつくる愉しみの、ひじょうに大きな部分を占めているわけで、例えばレゴかプラレールで遊ぶ(そんな洒落たもので遊んだことはないのだけれど)みたいなところがある。だから、句会でつくった句は、持ち帰ってからが愉しかったりするのですね。

ラヴ&ピース!

2018/05/15

■冒頭集:ザ・ジャパン 

、いったようなこと全部が、初手(はな)から旨くすすんでいったわけではなかった。
 私は長い長い失業期間からやと脱けだし、ニューヨーク州ニューヨークで、西日本の、とある放送局の現地レポーターに雇われたばかりだった。給料はよかった。車も換えたばかりだった。マンハッタンのど真ん中に、七十畳ほどの、狭いけれど快適なアパートも貸与されていた。(畳というのは東西問わず、日本古来の広さの基準だ。彼らは、縦六フィート横三フィートのタタミマットをもって、広さばかりかあらゆることを推しはかろうとする)
 ところで、こうしたアパートは、ドクシンリョウと呼ばれている。たいていの優良企業が不動産部門を持っている西日本社会では、会社が社員の家賃を肩代わりしたり、給料に上乗せするのではなく、こうして直接いくつもの住宅を、--国内にあっては住宅の供給ばかりか、あらゆる公共サービスを--保有している。
矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん』1997年/新潮社

共産圏・東日本と自由圏・西日本に分断された虚構としてのもうひとつの戦後。

関西人が怒り出しそうな「ヘンな関西弁」が横溢。作者は横浜生まれ。

2018/05/13

■ちょっと違う句

ちょっとヘン。そのへんでよく見かける句とちょっと違うという句:水平的にユニーク。

これまで作られてきた句とちょっと違う句:垂直的にユニーク。

きほん、これには価値があると考えています。

俳句の範囲を広げてくれる、というか、これからも俳句というジャンルの移ろいを眺めていこうという気にさせてくれるというか。

句の成功/失敗は、そりゃああるだろうけど、「ちょっと違う句」は、「違わないけど高品質な句」と同様、いや、それ以上の価値をもってる。少なくとも、読者たる私にとって。

だから、「同時受賞でもよかったんじゃないか」という上田信治さんに賛成。

くわえて、『自生地』は、本として、書物として、ちょっと変わっている。「句集」という枠で言うなら、ちょっとどころじゃなく、とても変わっている。本好きとしては、ここも大きな価値。

A 句集は句集であって、本ではない、書物ではない

B 句集も、本であり、書物

私は「B」の考え方をするし、「B」を感じる句集が好きです。

ラヴ&ピース!

2018/05/12

【お知らせ】5月のくにたち句会

2018年5月27日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

初参加の方は、メール tenki.saibara@gmail.com電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。

ラヴ&ピース!


2018/05/10

■俳句やってる人vsやってない人、読むという点でどうなの? という問題

俳句をやっている人は、俳句をやっていない人よりも、俳句を〈よく読める〉。って言いますよね。

〈よく読める〉という部分に含まれる込み入った事情は置くとして(まあ、句が「理解できる」という程度のざっくりした把握で話を進めます)、これ、一般に信じられているフシがある。

俳句世間のジョウシキは疑ってみるのが習い性なので、疑ってみるわけですが。

例えば、ここ…

≫2018年4月、雪もなく:川合大祐
https://blog.goo.ne.jp/syun-senryu-ina/e/d1271bc9b19190d968d10b60fa59fb58

…にもあるのですが、川柳を俳句に置き換えることができます。「(…)数十年川柳をやってきた人間でも、意味がつかめないんだから、川柳を知らない人が見たら、何が何だかわからないんじゃないか?」という部分。

はたしてそうでしょうか?

というのは、経験的に、というより、論理的に(というほど大袈裟なものではありませんが)。

A 俳句を作っていないときよりも、作り始めてからのほうが、俳句が〈よく読める〉ようになった

B 俳句を作っていない人よりも、作っている人のほうが、俳句が〈よく読める〉

Aは、わかる。個人それぞれの体験だから、それはそれでよい。自分でそう思うのだから、そうなのでしょう。しかしながら、AからBへは、論理的な溝があります。AだからBとは言えない。個人的な事象は必ずしも一般に敷衍できない。

この溝は、ほかの例を考えてみれば、すぐにわかります。スクワット100回やったら、早起きできるようになった。…からといって、スクワットやる人は早起き、とは言えない(例がヘン? ヘタクソ)。

とにかく、「俳句をやっている人は、俳句をやっていない人よりも、俳句を〈よく読める〉」、同時に「俳句をやっていない人は、俳句を〈よく読めない〉」という、俳句世間でよく言われるところのことを、私は信じていません。

ラヴ&ピース!

なお、俳句をたくさん読む人と読まない人では、読む人のほうが〈よく読める〉かもしれません。でね、俳句を作っている人が俳句をたくさん読んでいるかというと、これが、そうでもないんですよ。

俳句をやっていない人は驚くかもしれないけれど、自分の句にしか興味がないって人は、かなりいます。

もういっちょ、ラヴ&ピース!

2018/05/08

■スタジオ録音も

あげておきましょう。

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第49回 レッド・ツェッペリン「胸いっぱいの愛を」
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2018/05/49.html


ホール・ロッタ・ラヴ&ピース・オン・アース!

ついでにちょっと変わったカヴァー・ヴァージョンも。

2018/05/06

■田園調布から丸子橋を渡り、さらに横浜へ

某祝日。例によって吟行句会の散歩部分だけ参加させてもらうってことで田園調布駅から多摩川方面へ南下。




宝来公園を抜けて、宝莱山古墳へ、多摩川台古墳群へ、亀甲山(かめのこやま)古墳へ。

多摩川駅まで出たところで、みなさまとお別れ。嫁はんとふたりぶらぶら。

丸子橋、多摩川に架かる数々の橋のなかでも我が好き橋ランキングの上位に位置する丸子橋に出たので、橋があればとりあえず渡る橋ラヴァーとしては渡るしかなく、神奈川県川崎市へと越境。



新丸子駅まで出たところで、さて、渋谷へ向かうか、横浜に向かうか。

どうせなら横浜だろう。横浜在住のK久保さんに電話。折よくこの午後はスケジュールが空いているとのことで港の見える丘公園で待ち合わせる。

果たして、薔薇が美しい。田園調布駅前でもひとむらの薔薇と遭遇。薔薇の午後となる。

元町から中華街へ。横浜観光の黄金コース。晩ごはんは中華、お茶してから帰宅。盛りだくさんな祝日となった。



パイプ煙草を切らしていたので、元町のたばこ店へ(スマホは便利ですね。お店が検索できる)。このシリーズでは見たことのない色を発見。チェリーは若干季節はずれだけれど。


2018/05/04

■多作多捨

多作多捨って言いますよね。これ、俳句を長くやっていると、だんだんとアタマの中で捨てる(つまり、短冊やノートに書き出す前に捨てる)句が多くなる。だから、初心の頃たくさん作っていて、いまたくさん作らないからといって、多作多捨じゃなくなっているわけではないのですよ。

だから、例えば、若い人。年寄りを見て、「こいつ、あんまり作んねえな」と思うかもしれないけれど、それは、アタマの中でたくさん捨ててるのかもしれないですよ。

ラヴ&ピース!

2018/05/03

■茶化しも揶揄もダメな世の中?

≫キリンビバレッジ「#午後ティー女子」が大炎上
http://hagex.hatenadiary.jp/entry/2018/05/01/070000

茶化すのもダメなんですか?

この分野、まったくの門外漢なのですが(当たり前だ。この年齢なんだから)、類型を見出して、軽く揶揄するのなんて、遊びや冗談としてそれほど特別でもない。

おまけに自社商品と「午後ティー女子」をセットにしてるんだから、自虐、自己戯画化でもある。

他人のすることにキビシイのですね。


ちなみに、あまりお店では見かけないのですが、シンビーノ・ジャワティストレート派です。

ラヴ&ピース!

2018/05/02

〔連鎖〕19 小津夜景≫西原天気

19 西原天気 2018-5-2


18 小津夜景 2018-5-1

ゆく春や子象を抱いて(泌尿器科)

老いらくの(皮膚科)なりけり雲の峰

さみだれの桃色となる(リウマチ科)

朝霧に濡れるオトナの(内科)かな

磁気吸うて白き虹斬る(肛門科)

夏草のベッドで燃え上がる(麻酔科)

秘儀のごとゼリーふるえよ(呼吸器科)

ジョンソンラヴズジョンソン白玉ジョンソンコントロール(言語療法科)

いかづちや恋の古傷(胸部外科)


17 川合大祐 2018-4-28

5 REM ###MUGEN SENRYU SEISEI###
10 LET H=1
20 FOR S=0 TO S=H
30 FOR R=1 TO 17
40 INPUT X$(R)
50 NEXT R
60 FOR U=1 TO 17
70 PRINT X$(U);
80 NEXT U
90 H=H+1
100 NEXT S

RUN

? イ
? キ
? モ
? ノ
? ノ
? マ
? ロ
? ミ
? ヲ
? オ
? オ
? エ
? イ
? ケ
? ブ
? ク
? ロ
イキモノノマロミヲオオエイケブクロ
?


16 喪字男 2018-4-24

幽霊が付録洗濯機が届く

→寸の回砂砂砂砂千の回→

エジプトがトランペットを眠らする

どこまでも鈍行愛を丸呑みに

ことことと煮るなりやっぱ固かったん?

くれそうでくれなさそうでただじわる

上りも下りも右側をご利用ください


15 西原天気 2018-4-15

14 なかはられいこ 2018-4-10

朝まだき白地に赤く味の素

凍結の路面キラキラ味の素

席に着くみな味の素握りしめ

祖母は振るなんにでも振る味の素

センターに立つのは赤で味の素

笛吹けば駆けつけるのが味の素

アイドルでヒーローだった味の素

味の素うまれる前のことを言う

バングラデシュの鈴木さんから味の素

花びらが降るのか味の素なのか


13 川合大祐 2018-4-6

月がばと星ぼしくらうぱっくまん

名月のしたにふたりでころしあう

まだ月を亀からもらうまどのなか

ごむの月のぼれば罰というすくい

海のみず月さびてゆくじけいれつ

わかものの月とかがやくさざれ石

たてものが半月のせてくずれるよ

おにがくるある月からのながい針

友だちのいぶくろ月とともにさる

あれが人だとならう月およぐまち

さばくからついてくる月はるは雨

きおくやら牛やらまだら月きえて

ぶつぞうになれないとどへ月の壁

きが沈むつきのかたちでない月が

春のなかきかいののうのくるう月

12 小津夜景 2018-4-5

花ぐもり一羽の鳥を調律す

菩提樹に溺れ二匹の美僧かな

ハンブルグ三滴の春したたらす

さしぐみてわが巡礼の四月馬鹿

射干玉の鳴るにむらがる藤五房

六体の耳さまよへる伽藍かな

天蒼ざむ七挺の手をうづめられ

八杯のふいに言問ふフォルテかな

九龍や此処はうつつの旅にして

十字切る蟬のはごろも匂ふ日は


11 西原天気 2018-4-3



10 なかはられいこ 2018-4-1

一年でいちばん忙しい三月に咲くのはやめてほしかった。
おかげであなたを見にゆけない、しかたがないけどあきらめきれない。


うちの神社のうちの桜とうちの空

桜から手が出て尾張一宮

言い方も態度もソメイヨシノ的

目を瞑るさくらもくれんねこやなぎ

舐めてみる桜に触れてきた指を


9 喪字男 2018-3-27

真昼の地下の6畳のキッチンのデニム地の中の窮屈そうなケツ

ここでは
鳥が吹いている
鳥が吹きつけている


この状況をどないsoon?


俺はただただお前のために

撃つよ

カラシニコフで

撃つよ

弾丸ではなく
歌舞伎揚を


8 小津夜景 2018-3-22

《MENU SPECIAL D’ÉTÉ》   

BOISSON
まむしのアペリティフ、復活の呪文風

ENTRÉE

満月に隠された蠍のタルトレット
わさびの花をあしらった裏窓の娼婦風サラダ
6つのエスカルゴ、大蒜の魔よけソースで

PLAT

太陽の恵みたっぷり青蛙のフリットと
純白ドレスのアスパラガス(泡風呂ソース添え)

DESSERT

片目の美女風アルマニャック
黄泉がえりのパパイヤ・ソルベ


7 なかはられいこ 2018-3-19

父がいたこと猫がいることいっせいに木蓮咲いて手つかずの町

死んじゃった大杉漣に死んだからだいすきですと伝えたい夜

ブランコの真下のくぼみに蟻がきて朝がきてまた真下のくぼみ


6 西原天気 2018-3-8

びつしりと去年の落ち葉や蝌蚪の下

土を見て土のうへなる梅を見て

星状のひかりの落ちてゐる干潟


5 小津夜景 2018-3-6

気配 → 避難。

びゅうびゅうとはためく てのひらが怖い 


土の中でもあんしんな座り方


星人と戦う枝のあいだより


4 なかはられいこ 2018-3-2

三月の空のどこかに蝶番

音読をすればぽぽっと梅の花

いそぎんちゃくと夜汽車いっときずれて鳴く

握ったら指のすきまをはみでる暮らし

春だから前髪自身おろそかに


3 垂直にまつわる3つの引用 quoted by 西原天気 2018-2-24
するとそこには、一人の天使と(相變らずこの言葉が、私を不安にし、誘惑し、氣持をわるくします。彼等に翼がある位なら、齒だつてないでしようか? 彼等はあんな重い翼、羽根の生えた翼《神秘な翼》で、翔ぶのでしようか? そして堕ちると變える天使という彼等の有難い名のおかげで、木乃伊になるのでしようか?)
ジャン・ジュネ『花のノートルダム』1944/堀口大學訳/新潮社1953
それにしても、イカロスはほんとうに墜落していくのか。イカロスは、やがて海中の深みに行って、すっくと立ちあがるのではないだろうか。
ガエタン・ピコン『イカロスの墜落』1971/岡本太郎訳/新潮社1974
「でも」とセラフィトゥスは答えた。「あなたはもっと広い空間を恐れずに見ているではありませんか」 p24

セラピムは飛び立つためにそっと翼をたたんだ。もう二人の方は振り向かなかった。もう《地上》とは何のつながりも持たなかったのだ。 p229
バルザック『セラフィタ』1835/沢崎浩平訳/国書刊行会1976

2 小津夜景 2018-2-23

深夜28時…。  


タルホニア博士は星型をした硝子の器に、新種のモリアオガエル式アンドロイドを浸しては、ひどく神経質な手つきでその青白い脚を洗っていた。窓の外では、ほわわん、ほわわん、と粋な超おんぱを奏でながら、雑種のコウモリが飛んでいる。コウモリは、この時代にしてなお生身の身体を死守しているファンキーな蛮族だ。


1 なかはられいこ 2018-2-22

運針のあとを音符がついてくる

英虞湾はしずか遠心力により

夜はまだ四つに畳まれたまんま

ひかがみが輝きここは泣くところ

しゅるるんとコードをしまう鳩尾に


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