2017/09/30

■地雷の話

佐倉色(さくら・しき)『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』(2017年6月9日/飛鳥新社)は、新人漫画家がトンデモない担当編集にぶち当たってしまい、恐ろしくひどい目にあうという実話。業界暴露というよりサイコホラーとしておもしろく読んだ。

登場する担当編集やその上司(編集長)はいかにもいそうで、リアル。マンガという分野、出版という業界に限らず、いわゆる「地雷」被害、この手のサイコホラーな被害と、誰もが無縁ではないということなんだろうと思います。



それはそうと、この本、「字の多いマンガ」と思って読んでいましたが、括りとして、「マンガ形式のエッセイ」らしい。どうでもいいっちゃいいことなんですが、へぇと思いました。

話は飛ぶんですが、福田若之『自生地』。世間では「句集」ということになっているようですが、私の捉え方は「俳句のたくさん入った自伝的青春小説」。


2017/09/29

■ふたつのロゴタイプ

画層をクリックすると大きくなります

2017/09/28

■野麦街道の山栗とかナメコとか

道んとこに置いてあって、箱に代金を入れるタイプ。1袋350円。家で茹でたら、とても美味。


「道の駅」状のとこで買った原木ナメコで、きのこ鍋(舞茸は近所で買った)。こちらもびっくりするほど美味。

秋に中央高速道を走ると、いろいろ美味しいものが手に入るのであります。


【再掲】【お知らせ】9月のくにたち句会

2017年9月30日(土)14:00 JR国立駅改札付近集合

いつもは最終日曜日なのですが、今月は異例。

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

初参加の方は、メールtenki.saibara@gmail.com)、電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。

2017/09/27

■外階段:歯科グラフィティ


長野県松本市。

2017/09/26

■鯨はとても大きいという事実 『連衆』第78号の2句 

鯨はとりあえずでかいので、どこにやってきてもインパクトがある。存在感がすさまじい。

天網よりどすんとまっこう鯨かな  谷口慎也

墜ちてくる鯨はかなりめずらしいと思う。

隠喩として機能する句もあるだろうが、そうした喩をしばしばふっ飛ばしてしまう鯨の大きさと重量感に、私(読者)は、ほぉとただ呆けてしまうのだ。

掲句は『連衆』第78号(2017年9月)より。同じ号に、

天の川青い鯨が涕きました  柿本多映

「涕く」は「なく」。

そういえば、句集『仮生』(2013年9月1日・現代俳句協会)に、

  水平に水平に満月の鯨  柿本多映

もありました(≫拙記事:週刊俳句・2013年11月10日号)。



■外階段:奥


長野県松本市。

2017/09/23

■倒れた人 『連衆』第78号の岡村知昭

つまりあのつまり倒れて雨の朝  岡村知昭

のっぴきならない様子。8音を「言い淀み」に使い、なにかと思えば「倒れて」。それはたいへんだったろう。

ふつうこの箇所に季語を持ってきて、だいたいは中途半端になるんだけれど(ちょっと剽軽にまとめたりとかね)。この句は「雨の朝」。〈季語どころじゃない〉かんじが、とてもよく伝わる。で、「雨の朝」がじわじわと長く、こちら(読者)の側頭部あたりに効いてくるのだ。

掲句は『連衆』第78号(2017年9月)より。

2017/09/22

■バーコードの威力 飯田良祐句集『実朝の首』より

バーコードにみじん切りにされました  飯田良祐

刃がより合わさったような、凶暴なかたちを、そういえば、している。

20世紀以降の消費社会、とか言うと、興ざめ? かもしれなくても、換喩としてのバーコード、被害者としての自分。

掲句は飯田良祐句集『実朝の首』(2015年1月/川柳カード)より。


■初

お名前は存じ上げておりましたが、お目にかかるのも食するのも初めてのような気がいたします。


2017/09/21

■屋根の空

画像をクリックすると大きくなります

2017/09/20

【句集をつくる】第17回 詞書のことなど

前記事で紫陽花の句のことを話したのですが、山口優夢句集『残像』が出た直後だったと思う、ふだんあまり行かない句会にお邪魔して、

あぢさゐはむしろ残響ではないか 10key

という句を投句したところ、向かいに坐ってたおばちゃんに、ものすごく怖い目で睨まれた。優夢くんのファンだったのかもしれません。あるいはその手のもじりに不寛容だったのか。あるいは、ただただつまらないと思ったのか。

ところで、こういう句も、何かの拍子で句集に入ってしまう可能性(危険性)が大いにあって、その場合は、詞書で《ode to あぢさゐはすべて残像ではないか 山口優夢》とかなんとか添えるわけです。

詞書はしばしば愉しい。自分にとって、ということだけれど(≫流体力学10句)。詞書を効果的に配した句集もたくさん見るようになった。


というわけで、ひさびさの【句集をつくる】。ひさびさだけあって、ぜんぜん進んでいません。実際の作業どころか、頭の中でも。

ラヴ&ピース!


九月に紫陽花の話題で、ごめんね。

2017/09/18

■紫陽花が若手俳人のあいだで課題化?

福田若之 〔ためしがき〕自分の書いた句を読みなおす
http://hw02.blogspot.jp/2017/09/blog-post_12.html

こういう自句自解は感心しないけれど、それはまあいいとして、語順については、代替案も含め、どれもそれほど変わらないように思う。

語順によって〈散文的〉〈意味合い〉の差異はわずかに生じるが、〈韻文的〉〈効果〉に大差はない。


それよりも、上掲記事に並んだ紫陽花3句。若い作家3人の有名句。

てざわりがあじさいをばらばらに知る  福田若之

あぢさゐはすべて残像ではないか  山口優夢

紫陽花は萼でそれらは言葉なり  佐藤文香

3句とも、ノリがひじょうに近い。

よくいえば、理知的なアプローチ、悪くいえば、理屈っぽい。

よくいえばリリカル、悪くいえばポエミー。


若手で3人でこのように揃い踏みっぽいとなると、ひょっとして、紫陽花は、楽器の実技試験のおける課題曲のようなものなのでしょうか。

『天の川銀河発電所』あたりで紫陽花の句を拾ってみると面白いかもしれませんよ。

ラヴ&ピース!


2017/09/17

■裏面

画像をクリックすると大きくなります

2017/09/16

■本をあげる

「読み終えた文庫本、なんでもいいから、1冊くれませんか」と知人から言われて、おもしろい頼みごとだなと思った。

「貸して」と言われるよりはるかにいい。

「ください」「はい、あげます」

こういうのがいい。


ただし「なんでも」というのはやはり困る。考えたり探しまくったりしてもラチがあかない気がして、本棚のぱっと見える範囲で、種村季弘『好物漫遊記』。すごい愛読書(漫遊記シリーズはどれも大好きだけどね)。

こんなとき人間て、いまひとつだった本、まあふつうにおもしろい程度といった本は、選ばないみたいですね。

ラヴ&ピース!



2017/09/15

【お知らせ】9月のくにたち句会

2017年9月30日(土)14:00 JR国立駅改札付近集合

いつもは最終日曜日なのですが、今月は異例。

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

初参加の方は、メールtenki.saibara@gmail.com)、電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。


2017/09/14

■深淵についてのきわめてスマートな処理

くろは『有害指定同級生』

  
こういうニーチェ形無しの処理法、好きすぎて、自分でも困ったものだ。

ラヴ&ピース!

2017/09/13

■燃やされたり叩き壊されたり。ギターもたいへんです

いろいろと面白い話が聞けました。

福田若之『自生地』刊行記念インタビュー 第1弾
歯ギターは序の口なんです。そのあと火つけるところまでいく。
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2017/09/1_10.html

傍流の話題としてそこに出てくるザ・フーのギター壊し。

大好きなエピソードが『ローリングストーン』誌に残されています。

過去記事■ピート・タウンゼントはギターを壊したかったわけではなく壊してたことを50年後の今知り、ザ・フーを一日中聴いていたい気分になっている
http://sevendays-a-week.blogspot.jp/2014/09/50.html

ギター壊れません↓↓↓

2017/09/12

■その場で鳴っているはずのない季語の話

映画音楽を大きく分けると、ふたつあって、

1 シーンの中で実際に音楽が流れる

2 シーンで現実に鳴っていない音楽が付加される

ごくあたりまえの二分法です。

「1」は、酒場に入るとバンドが演奏していたりカーラジオから曲が流れたり。「2」は、例を挙げるまでもない。宇宙空間でシンセシザーが鳴るわけはないし、短距離走のバックに交響曲が鳴り響くわけはない。けど、そのシーンに音楽が足されたりする。

「1」は、実(じつ)の音。「2」は、虚の音と言ってもいい。

多くの映画は、「1」と「2」の両方が出てくる。

で、『地獄の黙示録』の「ワルキューレの騎行」のように、「1」と「2」の区別をうまく利用した趣向もありうるわけで。

ちなみに、昨日の記事、『ベイビー・ドライバー』は、タイトルバックあたりを除けばすべて「1」という点がとてもユニーク。ほんとシャレてる(昨日にひきつづきべた褒め)。


ところで、この「1」と「2」の区別から、季語へと思いが到ったわけです(俳人か?)。

例えば、上五中七に室内のことが書いてあって、下五がとつぜん「星月夜」、みたいな句は少なくないのですが、あれは、映画音楽における上記「2」と解せばいいのですね。ムードを出している。

場面転換にムリのある句ばかりではありません。いわゆる「取り合わせ」の多くが「2」のように思えてきました。

取り合わせで植物、花が出てくる句は、実際、その場にそれが咲いている・生えている、というより、ムードを出しているケースが多い。忌日や記念日も、そのものが詠まれることは稀で、もっぱら取り合わせ。これなど、ムードそのものです。

季語の使用、「1」「2」の両方があっていいのですが、私自身は、なるべく「2」の用法を避けていきたい所存。これはもう数年とか十数年のもくろみであります。

ラヴ&ピース!


2017/09/11

■最高な映画『ベイビー・ドライバー』

エドガー・ライトがつくる映画はどれも大好きなわけでして、『ベイビー・ドライバー』、やっとこさ観ました。立川シネマ2は爆音上映という幸運。

で、この映画、「最高!」を100回言っても足りないくらい最高。

音楽がツボりまくりということもありますが、そんな個人的な事情でなくとも、音楽が物語全体の重要な鍵になっている。

仕掛けが多彩で行き届いている(例えば「BABY」という愛称にもとうぜん意味がある)。構造がしっかりしている。進行にムダがない。スピーディ。なのに映画全体がキュート。

いわゆるクライム・アクションであり、音楽映画であり、恋愛もあり、そして、ひとりの青年の魂の救済であるところの『ベイビー・ドライバー』。極上です。

2017/09/10

■冒頭集:一年C組 榊原玲奈

大きな声じゃ言えないけど、あたし、この頃お酒っておいしいなって思うの。黙っててよ、一応ヤバイんだから。夜ソーッと階段下りて自動販売機で買ったりするんだけど、それもあるかもしれないわネ。家(ウチ)にだってお酒くらいあるけど、だんだん減ったりしてるのがバレたらヤバイじゃない。(…)
橋本治『桃尻娘』1978年/講談社


2017/09/08

■9月は結社勧誘のチャンスだそうです


というわけで、数日前、結社結社と、ツイッターの俳句関連タイムラインがうるさく、とっても気持ち悪かったのですが、若者たちにアドバイス。

「すばらしいことだらけ」と喧伝する結社には気をつけたほうがいいです。ブラジル移民/棄民を称揚した日本政府、北朝鮮を天国のように宣伝した一部メディア、カルトetc、歴史に学びましょう。

あと、特定結社について検討するときは、そこをやめた人の話がきっと参考になります。



結社の人にアドバイス。

学生は年会費タダにすれば(たしか「鷹」はそう)、誰か引っかかってくれるかも。



ところで、私は、前にも言いましたが、現在も未来も結社とは無縁。関心もない。

理由は、「くだらないから」でも、「自分に合いそうな結社がないから」でもありません。

おたがいにニーズがない。それに尽きます。

■愉快なイベントが

あるらしいです。

https://twitter.com/yukioi/status/902083714988965889



「ぺったん詩」ですと。



ぺったん句。

 県民だいすきひややかに放流 10key

 すきま白桃ベランダに備前  同

どこかに発表したい。

2017/09/07

■秋めく切手

切手もまた秋めかすことと、当方では相成っております。


2017/09/06

■昨夜までの枕頭(左)今夜からの枕頭(右)


柳本々々・安福望『きょうごめん行けないんだ』(2017年5月/食パンとペン)は、寝入りばな、半醒半睡状態でも、そうとうなスピード、この本に収められた会話よりも速いスピードで読める稀有な本。なんでだろう? はっきりとした「内容」がないせいかも。

いったいぜんたい、「内容」って何なんでしょうね?(と疑問を呈することでこの本を大いに称揚している)。

2017/09/05

■俳句の自由と不自由

自由律俳句が自由で、定型俳句が不自由だなんて考えている人は、さすがにもういないと思う。

不自由な自由律俳句もあれば、自由な定型俳句もある。vice versa(逆もまた同じ)

俳句の自由と不自由は、律とはまた別のところにある。

自由な句とはどんな句かというと、「とらわれない句」かな? 不自由な句とは「とらわれた句」。

何にとらわれない/とらわれるのかというと、それはもう、さまざまなことに。

その「さまざま」がなにとなにとなにかというと……それはもう、おのおのが自分で考えるべきなんでしょう(マジメにいえば、それでその人の俳句が、作家性が決まる)。

(何も言っていないに等しい記事になってしまい、誠に遺憾)

ラヴ&ピース!

なお、何にこだわるかも、ある。人それぞれ違っていて、これもまたなかなかに重要。

ついでに、もうひとつ。とらわれない/こだわる、その対象・テーマは、ひとりの作り手において、かなり流動的のようですよ。


余談。別の話になってしまいますが、ある自由律俳句の募集要綱に「575は自由律ではないのでダメ」とあるのを見たときは、これって、「ぜんぜん自由じゃないじゃん!」というツッコミ待ちのボケなんだろうな、と感心したことでした。

2017/09/04

■楽器の達者な禿は世界最強

というわけで、中嶋画伯との音楽千夜一夜は、血圧150~300の歌。

http://weekly-haiku.blogspot.jp/2017/09/15the-swinging-boppers-150300.html

2017/09/03

■もう、ね、ぜんぶがぜんぶ、かわいすぎる

≫「かわいいビル」はなぜかわいいのか
http://portal.nifty.com/kiji/170901200560_1.htm



↓こちらは「かわいい」というより、もっと「すっ」としたかんじかな?

2017/09/02

■「発電所」ってところがいいですね

発電所がなんでいいの? と訊かれても困るんだけれど。

『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』(佐藤文香編著/左右社)。収録作家ラインナップを見て、読んだことがないのが多いなあ、という人は買うといいです。オススメ。

なお、外観は書籍(book)だけれど、中身はムック(mook)的。書籍を読み慣れない人にもとっつきやすい。足(賞味期限)は早そうだ。 



頁をめくっていて、引っかかるところが多かったのですが、それは私の感想としてね。「いい本か? よく出来ていると思うか?」と訊かれたら、首を縦に振れない。解説、対談、レイアウト、句群の扱い、作家の扱いetc、これでいいのか、ほかにやりようがなかったのかと思うところが多々。それらはハードウェア・ソフトウェア両面にわたる。

こうしたネガティブな感想・見解と記事冒頭の「オススメ」とは矛盾しそうだが、そうじゃなくて、オススメはするし、たくさん売れたらいいと思う。このあたりは自分で説明が難しい。

ちなみに、巻末の「収録作家分布図」のホット/クール、軽/重のマトリクスに、このアンソロジーをあてはめると、ホットかつ軽。編者・佐藤文香の作家としてのポジションに近い。編者の作家性が、アンソロジー全体の色合いを決めているということで、これは当たり前と言えば当たり前だが。

読者に託す部分があっていいのに(これはクールに属する)、どこまでも世話を焼く感じ。世話を焼きたいのか? 世話女房か?(脱線)

『天の川銀河発電所』は、編者が、よく言えば、がんばっている、悪く言えば、がんばりすぎた、気持ちを反映させすぎた。

でもね、世間は「がんばっている」のが好きなので、「気持ち」が好きなので、前述のように、好感されるだろう。

私の見解・好みはだいたいのところマーケットや俳句世間/世間から遠いので(これはこれで問題)、売れるだろうし(実際、初刷はすぐに売り切れて2刷が出るそうだ)、俳句世間/世間から好感されるだろう。とりわけ、編者や版元がいちばん手にとってほしいと考えているであろう「俳句の外」の人たちに。

繰り返すが、収録作家の多くが未読という人に特にオススメ。私も、まず開いたのは、読んだことがない人のページだった。