2020/03/30

■「形」をどう読むか? 句集のルビ話のつづき

≫承前

ルビの話のつづき。

読みが複数ある漢字/熟語の場合、どちらかわかるようにルビを振るということがあります。例えば、八田木枯『鏡騒』では、「ばくりゅうしゅ」と読まれたくないからだろう、麦粒腫には「ものもらひ」とルビが振ってあった。

(同じ句集で、音数から行くとおそらく「ひともじ」と読むんだろうなあ、という「葱」にはルビがなかった。パズルみたい。これは不親切だけれど、なんらかのこだわりがあったのかもしれません。そこにルビ振るのは野暮だろう、みたいな)

一方、ルビがないのは、読み方はこちら(読者)に任されていると受け取って、こちらの愉しみにできないことはない。

糸瓜棚暑くなる日の雲の形  安里琉太『式日』

この句の座五。

《形》を、私は「なり」と読んだ。

5音を守るなら「くものかたち」ではないはずで、「くものかた」は熟れない。

あ、これ、どう読むのが正しいとか、そういう話じゃないですよ。私は、こう読んだという話。

あるいは、作者がどう読ませたいのか、というのでもない。読者の領分として愉しむ。

まあ、そう考えれば、読み方・読ませ方を《確定》させるためのルビは必要ないのかもしれません。どうぞ、お好きに、というわけで。

ラヴ&ピース!


2020/03/29

■もっと《ふりがな》がほしいですよ、句集には

句集は、もっともっとルビ(ふりがな)を入れていいと思う。

まずもって、俳句には難読漢字が多い。とくに植物名とか。読めない漢字がたくさん出てくる。「それは、あなた(=私)が浅学だから」と言われると、返す言葉はないんですけどね。

それからまた、どちらとも読めるケース、一般的でない当て字・熟字訓なども、ルビがほしいところ。

ルビにルールをつくる必要はないけれど、もうちょっと振ってもバチは当たらない。読者に親切であっていいと思うのですよ。

句集にルビを避けたがるのは、ひとつには、見た目を気にするということらしい。ルビが邪魔、というわけです。でもね、それじゃあ、字組やレイアウトが美しく調整された句集ばかりかというと、ぜんぜんそうではなくて、あれれ?という句集のほうがむしろ多い。となると、何を気にされているのか、よくわからない。

結論的には、俳人のみなさま、学識が高く、難しい漢字をたくさんご存じなことは、もうじゅうぶん存じ上げておりますので、どうか、もうすこしルビを振っていただけませんでしょうか、って感じです。

ラヴ&ピース!


あ、そうそう。念の為に申し添えておきますが、「亡母」に「はは」とか、その手のルビは、上記には該たらない。やめてくださいね。

2020/03/25

【中止のお知らせ】3月のくにたち句会

東京都から週末の外出自粛要請が出たことを受け、3/29(日)に予定していた句会を、中止とさせていただきます。


2020/03/24

■なはとむじいく 『川柳ねじまき♯6』より

あいねくらいね海市からとろけだす  妹尾凛

アイネ・クライネ・ナハトムジーク(Eine kleine Nachtmusik)は、ひらがなで書くと、日本語のおしゃべりのよう。

もとよりたよりない蜃気楼から溶け出すものが何かはここに書かれていない。前半のセリフ/音楽かもしれないけどね。

掲句は『川柳ねじまき♯6』(2020年1月)より。


2020/03/23

■発掘歌仙

9年前の歌仙が出てきた。以前は、掲示板でよく巻いていたので、いろんなとこに埋もれていそう。


捌き役なのに、付けたい放題で暴れてる。

2020/03/22

■週俳・第674号関連で

句集レビューを2本書いています。
http://weekly-haiku.blogspot.com/2020/03/6742020321.html

発行日から少し間があいても、書きたいときに書いていこうと思います。タイムリーもだいじだけど、ちょっと遅れ気味もいいでしょう。



大野泰雄さんに10句いただいています。
https://weekly-haiku.blogspot.com/2020/03/10_22.html

その大野さんが出展される「从展」が3月25日から上野で。


2020/03/19

■とある故人のこと 宮本佳世乃句集『三〇一号室』

承前

宮本佳世乃句集『三〇一号室』の最終章「フリスク」は、特定の故人に捧げられているっぽい。

「っぽい」と言ったのは、明示されているわけではないので。私も知っていたその男への鎮魂なのか思い出なのかサヨナラなのか、それも判然としない(俳句って、判然としないものですよね)。

ペンギンの母より生まれ焼けて骨  宮本佳世乃

祖母がペンギンであること、日本海を彷徨うペンギンを娶ったのが彼の祖父であること、そんなことを故人の文章で読んだ気がする。これが実話でもなんでもどうでもよく、祖母と母の違いもまたどうでもよく、ともかく母方にはペンギンがいた、ということなのだ。

ペンギンの末裔である彼は死に、焼かれて骨になった。

その一部は日本海に散骨されたと聞く(私の思い違いでなければ)。

どこかを漂っていたものが何かの拍子でこの世でヒトとなり、それが終わると、また漂う(焼き場の煙は空を漂う)。始まりと終わりと終わり以後に関して、とても納得の行くかたちだと思います。




2020/03/17

【お知らせ】3月のくにたち句会

2020年3月29日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)

席題8題程度

事前兼題2題(当日お持ちください) 石 本/書籍〔テーマ〕

初参加の方は、メール tenki.saibara@gmail.com、電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。

2020/03/13

■贈呈、恵贈、落掌 句集その他にまつわる周辺情報のこと

どなたかの句集を、もらったとか、図書館で借りたとか、ブックオフで買ったとか、新刊で買ったとか、そういう入手経路をわざわざ書く必要があるんだろうか?

私は、ないと思っているので、書かない。

句集その他のレビューや紹介文を、週刊俳句や自分のブログで、あるいはSNSで書くとき、なんで、その本が私の手元にあるのかについては、書かない。

ひとつには、読者には関係のないことだから。

もうひとつ、著者は、それで喜ばない、いや、困る著者もいるだろうから。

気の回しすぎと言われそうだが、例えば、贈呈の数には限りがある。私もたまに贈呈を受けることがある。で、もし、そのことを書いたら、「ふーん、そうなのか。私のところには来てないが」と思う人がいるかもしれない。著者は、困るよね。

(ブックオフや古本屋で買った、というのも、ちょっと微妙。自分の本が流通してくれて、新しい読者と出会ってくれて、うれしい、と思う人もいれば、処分されちゃったのか、と悲しむ人もいるだろう)

そういうわけで、句集のことを書くときは、「おもしろいよ」「こんなだよ」「いや、ここはどうなんだろう」といった、その本そのものに関することを積極的に書こうと思ってますよ。

なお、ぜんぜん逆に、というのは、恵贈賜ったことを大々的にアナウンスすることで、贈り主への謝辞とする、という考え方もあるだろう。

人それぞれ、いろいろですね。

ラヴ&ピース!



2020/03/11

■探偵句集とひさしぶりの前島密ふたり



首か椿か持てない方を置いて行く  佐藤りえ

佐藤りえ『いるか探偵QPQP』(2019年5月/文藝豆本ぽっぺん堂)は、虚構的(というだけで忌避する俳人もいるけど、私はそうじゃない)な句群で、ストーリー性のある小さな(手のひらサイズ)句集。

掲句。素っ首と椿の併置が耽美。あやしい。どっちを持っていったのか確定させないのは俳句的にはかなり変則だけど、これによって併置/相同の働きが強まる気がする。

解題的な散文に、「QPはこの探偵のニックネームである。きゅるきゅる、という鳴き声からいつしかそう呼ばれるようになったという」とあるが、私は、句集名を「くぷくぷ」と読んで、いるかが鳴いているみたいで、かわいい! と思っていたよ、くぷくぷ。

2020/03/09

■ロックンロール・ウィル・ネヴァー・ダイ

大好きな映画のクライマックスを取り上げました。

≫中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 スクール・オブ・ロック「Rock Got No Reason」


出演者たちが10年後に同窓会をやっていて、こちらもなかなかいい雰囲気。

2020/03/08

■梅から桜へ 斉田仁『黒頭』より

仏壇に散る仏壇で咲いた梅  斉田仁

梅もあっという間に終わり、もうすぐ桜ですね(今年はいやに早い模様)。

円形に禿げて桜を見上げたる  同


掲句は斉田仁『黒頭』(2014年)より。『黒頭(くろかしら)』は『異熟』(2013年/西田書店)の翌年に出た私家版。初版限定50部。

なかほどに斉田仁インタビュー(構成=近藤十四郎)が8ページ。斉田仁の子ども時代からの話、故郷の高崎の話、父君の話etc、とてもおもしろい。


2020/03/04

■観客は10人くらいでした 映画『初恋』

感染を防ぐなら、映画もやめたほうがいいって言ってる人は、映画館に行ったことがないんじゃないのかな。ずっとだいたいはガラガラですよ(ごく一部を除いて)。人どうし、近くない。食べ物屋のほうが人口密度が高い。

というわけで、『初恋』(三池崇史監督)を観てきました。府中のシネコン。昼間。客は10人前後。少ない。

映画は、ひとことでいうと、雑。

観せ方も造りも話の運びも、観る人をどう愉しませるかも、雑。

でもね、面白い部分もある。観て損はないですよ。

ハイライトは、ベッキー。はい、あのベッキーです。これがもう、最凶・最強。

あと、染谷将太も、やっぱりいい。

このふたりが強烈に狂気なので、ほかがぜんぶくすむんだけど、このふたりだけでも観る価値がある。

でね、これ、ラヴストーリーじゃないですよ。その要素もあるけど、ちょっと違う。なだけに、「初恋」というタイトルは、悪くない。いい。

ラヴ&ピース! いや、ピースじゃないな、この映画は。




2020/03/02

■0円娯楽

「0円娯楽」というコピライトを散歩雑誌の表紙で見たような、それこそ散歩の途中だったのですが、気がしているのですが、思い違いかもしれない。

まあ、しかし、じっさい、そのとおり、散歩にお金はかからない。場所によっては電車賃はかかるけど。

で、写真を撮るのも、いまはフィルム代がないので、充電の電気代くらいのもの(初期費用はかかることがあるけど)。


タダだから素晴らしい、というわけではぜんぜんない。でも、例えば、その日たまたま手元不如意であっても、気にすることはない。遠慮なく思う存分好きなだけ、歩く。これはまちがいなく散歩の良いところなわけです。

ラヴ&ピース!