2017/04/30

■文フリ?

皆目見当がつかない新しい文化/文化流行というものが多々ありまして、「文学フリマ」もそのひとつ。

今年、週刊俳句も出展する運びとなり。

http://weekly-haiku.blogspot.jp/2017/04/57.html

興味津津で出かけます。


2017/04/29

■おはぎ日和(きなこ)

曇ってようが雨降ってようが、曲名(曲じゃないけど)はぜんぶ「~日和」。

2分43秒。ボリューム注意。+リズムボックス君。指弾き。E9th(ホ長調)。めざせ、ファンク。

2017/04/28

■梅と干満 『面』第121号より

梅ひらき干満ひそかなる敷居  渋川京子

梅と海からは、金子兜太の有名句に思いが到る(俳句愛好者の多くがそうだろう)。この句では、敷居(内と外の閾)が汀。梅ひらく「外」と家たる「内」。その境界に「干満」がある。現実とマボロシのあいだをしずかに往還するような句。

掲句は『面』第121号(2017年4月1日)より。

2017/04/26

■妖しい 鴇沢正道『トランス★フォルム 変換』

緑陰に少年は一本のフルート  鴇沢正道

秋風や罰の如くに蒙古斑  同

毬に化けてしばらく温き幼女かな  同

この3句だけを抜くと誤解を与えるかもしれない、と言いたいところだが、鴇沢正道『トランス★フォルム 変換』は、たしかに妖しいところのある句集。上掲一句目の隣には《夏痩せの少年抱けばシャボンの香》もありますし。

作者は1932年生まれ。第一句集のこの本の後半には論考も収められ、とりわけ「文学の中の数学用語」(およそ30p)は、俳句に多く見出される「ベクトル」等の用語にまつわる話題から、フランス現代思想での、言ってみれば安易な数学用語の援用(濫用・誤用)への科学者の批判(ソーカル事件)まで、広汎な視野。たいへん興味深い論考。

ついでに、ここに引かれた「数学俳句」も。

南柯がぽあんかれーらいすで恵比寿る  加藤郁乎

亀鳴くや双子素数をゆりかごに  鴇沢正道


2017/04/20

【お知らせ】4月のくにたち句会

2017年4月30日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

初参加の方は、メールtenki.saibara@gmail.com)、電話etcでご一報いただけると幸いです。

問い合わせ等も、上記メールまで。

2017/04/17

■とある四月の日曜日、暑いくらいの陽気のなか、週俳10周年記念オフ会に


足元にこだわりました。誰も見ていないところなので、そこに。

いつおろそうか考えていたグレーの靴。スエードだけど冬の感じじゃない。で、この日に。



承前

昼間の歌仙のお手伝い。誰が集まるのか把握していなかったのですが、若手の精鋭たちとオトナひとり(りえさん)を連衆に得ました。哲郎さん(なむさん)の捌きは、若い連衆の迸る才気を懐深く受け止め、なんということでしょう、終了の17時まで時間を少し残して、巻き終えました。

「挙句まで行きたいが、きっとムリだろう」と考えていたのですが、その予想・願望を成果が上回った。

この歌仙の模様は、週俳の来週号で。



懇親会ではいろいろな人にお会いできましたが、ご挨拶しそびれることも多く、そのだんの失礼はご海容いただきたく。


2017/04/15

■明日16日は『週刊俳句』創刊10周年記念オフ会

お知らせはこちら↓
http://hw02.blogspot.jp/2017/03/10416.html

参加表明なしで、ふらっと寄っていただいてかまいません。



昼間の連句(歌仙)は、佐山哲郎さん(烏鷺坊さん)を捌きにお迎えして、私は補佐します。別室で同時開催のいろんな句会も覗かせてもらおうと思っております。

あとね、句集とか置いています(販売なわけです)。

各著者からウチに送ってもらった句集たち。箱詰め途中↓

現代俳句協会が4月22日(土)にやる勉強会で取り上げる句集(『ただならぬぽ』『虎の夜食』『然るべく』『フラワーズ・カンフー』)。フラカンはサイン入り。

関悦史さんの最新刊2点、『花咲く機械状独身者たちの活造り』『俳句という他界』。

金原まさ子さんの『カルナヴァル』は、信治さんと私が編集した関係で置かせていただきます。

連句でお世話になる佐山哲郎さんの『娑婆娑婆』。

週俳が作った本3点、『俳コレ』『子規に学ぶ俳句365日』『虚子に学ぶ俳句365日』。それと、拙句集『けむり』(手元の残部僅少)も。

(上田信治さんの句集が間に合わなったのが、個人的にひじょうに残念)



あとは夜の懇親会に持ち込むワインなどを買えば、準備完了。

2017/04/13

■土手の桜


多摩川土手。福生付近。

2017/04/11

■コシノビルから孔雀へ 歌仙「自転車」解題〔3〕

七吟歌仙:自転車の巻

承前

私たちは産業革命以降の世界に生きているわけです。これは、じつに、もう、ほんとに。

  鉄球にびくともしないコシノビル  え

前句の羊から、「囲い込み」、さらに鉄へ。歌仙「自転車」は、名残表に突入。

コシノビルはデザイナー姉妹の自社ビルにも思えるし、地方の小ぶりなテナントビルにも思える。腰が強いという連想はさておくとして、鉄球でのビル解体、まだ実際に目にしたことはないのですが、壮観だろうなあ。



  重力の罪深き木星  之

鉄球から重力へ。鉄球も木星も球体だから、ここはツキスギだったかも。

さて、木星は「柄」的にかなり好きな星。重力についてもちょっと調べてみましたが、いろいろありました(よくわかっていないときの常套句「いろいろ」)。「罪深き」という語の古色蒼然ぶりがオツ。

  たはむれのはじめにめくるカレンダー  乙

木星からカレンダーへ、すっきりとみごとな付け方。シンプル(付け筋が明白)でいて、場面展開に軽い意表。

付け方はいろいろあるのですが、個人的には、ひとりの頭の中の連想を複数重ねるような、伝言ゲームで数人を経るような、ややこしい付け方は好みません。外部にあきらかなゲーム進行が好みです。

なお、「たはむれ」の部分は、具体的に何のはじめかを示す手もあったと思います。

さて、そこから突然、

  褌みせてくれるんでせう  オ

恋の座、それもBLの座。予定外でしたが、捌きとしては予定外は大歓迎。流れのままだと、歌仙ってつまらなくて、事件・事故があったほうがいい。

  汝が胸に吾が息 とほく泳ぎきて  気

ちょうど私の番だったので、思いきり愛し合ってみました。

  涼気を運ぶ短波放送  鯨

「遠」あるいは海から放送(英語 broadcasting が含む broad の部分が好きで、放送の翻訳語はここが欠けてるよなあと、いつも思います)。

恋の座のあとは、恋の気分を引きずらず、別の空気を持ってくるのがいいのですが、「涼気」はそれにかなっているような、別のほうがもっと離れるような。このへんのあんばいはむずかしい。また、個人の判断。

  恋文にじらさないでとだけ書いて  景

で、またすぐに恋、こんどはヘテロで、という捌きからの要望に、いっけん慎ましい。でも、これ、恋文という仕掛けがそう見せるだけで、内容は、ぜんぜん腰が引けていない。

  ふたりで金の孔雀を飼はう  え

恋の返しとして、ちょっと身をかわして、それでも前向き。この恋は結婚まで行きそうです。「金の孔雀を飼う」はどこかの国・どこかの文化のイディオムみたいな趣き。良い意味で虚構的な味付けがふんだんに施されました。

(つづく)

2017/04/10

■はがきハイク・その後

もともっちゃん、ありがとう!

https://twitter.com/anata_omaeda/status/847750751866597379

皆さんから、たくさんのお便りが。


はがきが届くと、はがきを書きたくなる、というのは、やはりあるみたいです。スネイル・メールもまた愉しき哉、であります。

余談。タイトルの「ねむれ巴芹」は、4句目から取ったものとお考えの方が多いようですが、逆で、タイトルを決めて、それから、それ含みのこの句をつくりました。「はがきハイク」はタイトルをまず決めて、ということが多いのです。数秒でつくったこの句が他に比べて人気が高いのは、皮肉というか、俳句はそんなもの、というか。

2017/04/09

■ぼやぼやカレーパン

ギターを買ってから15か月が過ぎましたが、まだ続けております。

習い事ができない性分で(単に怠け者)、運指がどうのこうのと言われても、そんなもんいまさら動かない。ピッキングという技術はとても重要で、難しいのですが、あるとき、「ピックを使わないのも面白い」と、妙なことを思いついて以来ずっとピック無し(最近、ピックの練習も始めました)。つまり、この年齢になって、楽器を楽しむのに、きちんと習い、きちんと練習するのももちろん素晴らしいのだけれど、それは人による。自分は、万事がそうですが(俳句も、そう)、テキトーで気ままがいい。

1 カレーパン日和

晩御飯の前に20分ほど、嫁はんと合わせました。時間は、これを超えると体力が持たない(自分でもびっくりするくらいひ弱)。

老後の娯楽として、晩飯前セッションというのは、わりあい良いのではないか、と。

キーだけ決めて(これはD)、嫁はんが好き勝手に始めて、私が適当に合わせるという段取り。セブンスっぽく伴奏を付けたら、嫁はんのほうが合わせてくれた。めざせ、ファンク。

いわゆるその場のアドリブですが、曲名があったほうがいいので、「カレーパン日和」にします。夜にやってるけれど、日和。ついでだから、フリー動画ソフトでカレー色にしてみました。




2 ぼやぼや日和

少し前(この1月)、ひとりで遊ぶのにちょっとステキなコード進行を思いついたつもりでいて、よくよく考えてみると、40年前にやった「Take Me With You」(サンタナ)のキー違いだった。「これがボケるということか?」と、ちょっと怖い思いを味わった一瞬でした。

曲名は、いいのが思いつかない。「ぼやぼや日和」(仮)。全体にぼやっとしてます。ぼやっと暮らしています。




3 Take Me With You

ついでだから、元曲を合わせてみましょうか、と、嫁はんにコード進行とリズム、4小節ぶんのテーマを説明。いきなりでも、サマにしてくるのがすごいなあ、と、音楽教育を受けていない私などは思うですよ。

2017/04/08

■あまり変わっていなかったりする




2016年8月28日 10時15分 撮影 ↓



2017/04/06

■失われた夏 『や』第70号より

バス降りて昔の道が炎天下  関根誠子

バスという日常的な言いぶりからすると、「昔の道」とは個人の記憶の中の道をさすのだろう(史跡や歴史的街道ではなく)。

夏、とりわけ炎天と懐旧が結びつくと、感慨は濃く深くなる。

(夏って、なんであんなになつかしく、また喪失感と直結するのでしょう?)


掲句は『や』第70号(2017年3月10日)より。

2017/04/05

■寂聴から羊毛へ 歌仙「自転車」解題〔2〕

七吟歌仙:自転車の巻

≫承前

第八句と第九句は、恋の座。

  いまふられたら寂聴になる  オ

寂聴には吃驚。次に付ける/恋を返すのは私でした。寂聴になられちゃあかなわないので、最大限の契り。

  離さない死ぬまでもとい次の世も  気

恋のセリフは既製品が多い。独創もいいけれど、伝統は尊重すべき。


はからずも、オーティス・レディングで踊る瀬戸内寂聴を頭に描いてしまい、とってもファンキーな気分になりました。

さて。

  宇宙の塵をさらふ蜘蛛の囲  鯨

恋の座からきれいに離れていただきました。「離さない」から蜘蛛の巣は巧み。

  はつなつの下宿でめくるトムキンス  景

宇宙からトムキンスはやや近いのですが(かつ、前句の種明かしのようにもなり、その点、少々まずいのですが)、下宿という外界中の外界にまで降りたところがよかった。

  神田川から酔拳の声  え

下宿と言えば、神田川。ですが、作詞:喜多条忠/作曲:南こうせつ、発売は1973年。りえさんはまだ生まれてなかったのでは?

そこでまったく余談的に思い出すのが、りえさんの「俳人と南こうせつは、妹といえば必ず『妹よ』」という名言・名指摘(たしかツイッター)。俳句で「妹よ」と出てくると、げんなりします。

私は下宿経験がたんまりありまして、最初は四畳半・家賃8,500円。寒かったですよ。石鹸ではなく歯が鳴りましたよ。

閑話休題。次は、冬・月の座です。

狙撃より確かで冴えてゐる月の  之

前句の酔からは、月の宴全般、いかようにも付くところでしたが、ここは酔拳から狙撃。「の」止めも次を促す、連句特有の収め方かもしれません。

俳句ではやらないようなことをやるのも、連句の楽しみ方のひとつですね。

  凍土の中を進むマンモス  乙

月の座、花の座のあとは、その季を2句ほど続けるのがマナー。狙撃対象が象牙目的の密漁ならぬマンモスというわけで、凍土とマンモスで手堅い冬の句。「中」がミソで、化石が動き出す感も漂います。

  留置所で教へてもらふのりピー語  オ

「いただきマンモス」って、もうみんな忘れているでしょうけれど、思い出せてよかった。ちょっと調べてみると、酒井氏の拘留期間はおよそ20日間だったみたいです。長い。司法制度、見直さないといけないですね。取調官がのりピー語を習得するのには充分な期間ですが。

  三日三晩を汽船に揺られ  気

三日三晩は72時間。勾留期限でもなく、なんでこれを付けたか、忘れました。捌きがいちばん無責任でちゃらんぽらん。

  国産みの火山にかかる花の雲  鯨

汽船の蒸気から火山。巧み。火山神いざなみの登場から、

  まづ新婦から羊の毛刈る  景

晩春の季語をもってきた新婦のこの行為、ほんとにどこかの儀礼にありそうで、おもしろい。そういえば、ニュージーランドも火山国ですよね。

ここまでで初折の表と裏が終わり、名残に突入です。

’(つづく)

2017/04/04

■俳句におけるカタカナとルビ

小津夜景さんが拙作「るびふる」の全句に言及という、おそろしいことをしてくださいまして。

http://yakeiozu.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

(大感謝であります。これであの10句も浮かばれます。往生できます)



カタカナはともかく〔*1〕、俳句にルビは、ないに越したことはない。

よほど差し迫った事情がないかぎりは。

難読語に振る、別の読み方をされては困るので振る、などが差し迫った事情でしょうか。

ルビは気軽に振ったりしちゃダメ。ルビは俳句にとって通常のものではない〔*2〕。だから、思いきり不自然に、過剰に(バロック的に)やってみたのが「るびふる」。

10句、まとめていて、楽しかったですよ。悪さをするって、いつでも楽しいものですよね。



〔*1〕コンビニとかよく例にあがるんですが、カタカナ語とは別に略語という問題があります。

「略すな。コンビニエンスストアと言え」「電卓は俳句では使えない。電子卓上計算機と言え」みたいな頑固親父な発言、わりあい好きです。

〔*2〕要らないルビのエピソード:
むかし結社的な句会に出ていて、清記用紙に「亡母」に「はは」とルビがあった。最悪。…なんて思いません。心清らかですから。でも、見渡して、お母様がご存命と思しき年齢の方はいらっしゃらない模様(ベテランばかりの句会だった)。「亡母なんて書かなくても、皆さんを見たら、わかりますがな」と心の中でツッコミを入れたことでした。

あと、「地球」に「テラ」のルビは竹宮恵子先生以外、やっちゃあダメだぞ。



https://www.jagat.or.jp/past_archives/content/view/3932.html

2017/04/03

■自転車からきのこへ 歌仙「自転車」解題〔1〕

七吟歌仙「自転車」を振り返ってみたいと思います。

http://sevendays-a-week.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

なお、付け筋etcは私の解釈。おおまかなルールやノリも私が親しくしてきた歌仙に準じたもの(私は四童さんところで歌仙をおぼえたので、「四童流」と言っていいでしょう)。異なる見解もあるものとして、おしゃべりにお付き合いください。

発端は、これ。
https://twitter.com/10_key/status/830064468742721537

「連句未経験」というユキオに「じゃあやりましょう」とお誘いして、発句をいただき、歌仙が始まりました(連句と歌仙の違いについてはググってね)。

初折表 自転車で空港へゆく日永かな  ユキオ

自転車好きの私への挨拶も含むと勝手に解釈。愛車の写真を貼っておきます。



1998年製。色はチェレステ(空色)。空港にぴったりじゃないですか。

場所は多摩川の土手。このまま川を下って川崎まで行けば、羽田空港はすぐです(まだ行ったことがないけど)。

で、脇句。

  東南東の風をおでこに  天気

脇は同時刻・同場所で付けます。付句は全体に前句から展開させます。くっついてちゃダメ。そんななか、脇句は例外。発句に向かって「いらっしゃいませ」と挨拶するので、寄り添う。

東南東の風は、ほぼ東風(こち)と解してください。有季です。俳人協会の人、聞いてる? これ、有季です。

「おでこ」では、ユキオさんのかわいらしいおでこを思い浮かべた。ユキオさん、聞いてますか? ここ、喜ぶか照れるかするとこです。

さて、3人目以降の連衆は公募スタイルにしました。「どなたでもどうぞ」と呼びかけたところ、

  黒猫は麻雀卓をぬけだして  牟礼鯨 

第三句は、発句脇句の挨拶の応酬から離れます。みごとに離れていただきました。アウトドアからインドアへの転換もそうなのですが、自転車や空港の開放感から、小博打、黒猫の凝縮感へ。

「て」止め(ほかの止め方も含め)、勢いを付けるという意味。「さあ、行くぜ」って感じですね。

  洋梨パイの焼き上がる頃  夜景

麻雀牌の「牌」からパイへ。言葉遊び(ダジャレ)系の付け方、私は大好き。音の相同=シニフィアンの相同をテコに、シニフィエの飛躍を狙う(ここ、笑うとこです)。攝津幸彦も多用した手法。

  月代を盛るにはうすい玻璃の皿  りえ

焼きあがったパイが皿へ。月の座、うくつしい。

  蘆刈る舟のものがたりせむ  若之

皿と舟。かたちの相同。「ものがたりせむ」は歌仙的想像に加速を促すとも。

初折裏 アイコンのきのこが熟す指の先  紫乙

「アイコンのきのこが熟す」はビデオゲームを思わせ、物語と響き合っています。
 
これで連衆が出揃い七歌仙となりました。

(つづく)

2017/04/02

■具ふたつ

炒め物は、具ふたつが良い、という結論に達しました。つまり、みっつ以上にならないのがいい(私的、かつ例外ありそう)。

クレソン+ベーコン。


2017/04/01

■七吟歌仙:自転車の巻 満尾

歌仙「自転車」会場

初折表 自転車で空港へゆく日永かな  ユキオ
      東南東の風をおでこに  天気
    黒猫は麻雀卓をぬけだして  牟礼鯨
      洋梨パイの焼き上がる頃  夜景
    月代を盛るにはうすい玻璃の皿  りえ
      蘆刈る舟のものがたりせむ  若之
初折裏 アイコンのきのこが熟す指の先  紫乙
      いまふられたら寂聴になる  オ
    離さない死ぬまでもとい次の世も  気
      宇宙の塵をさらふ蜘蛛の囲  鯨
    はつなつの下宿でめくるトムキンス  景
      神田川から酔拳の声  え
    狙撃より確かで冴えてゐる月の  之
      凍土の中を進むマンモス  乙
    留置所で教へてもらふのりピー語  オ
      三日三晩を汽船に揺られ  気
    国産みの火山にかかる花の雲  鯨
      まづ新婦から羊の毛刈る  景
名残表 鉄球にびくともしないコシノビル  え
      重力の罪深き木星  之
    たはむれのはじめにめくるカレンダー  乙
       褌みせてくれるんでせう  オ
    汝が胸に吾が息 とほく泳ぎきて  気
      涼気を運ぶ短波放送  鯨
    恋文にじらさないでとだけ書いて  景
      ふたりで金の孔雀を飼はう  え
    剝製のやうに無害なソクラテス  之
      防腐剤から望月こぼれ  乙
    猿酒を譲つてくれるかものはし  オ
      長椅子にぽつねんと虫売  気
名残裏 歩を成らす人工知能負かすため  鯨
      虹のむかうに靴放り投げ  乙
    牛頭馬頭とヒッチハイクで品川へ  え
      もつとひかりを(レモンヱロウの)  之
    剝落の花となりたるフレスコ画  景
      千年かけてふらここを漕ぐ  オ

起首 2017年2月16日 19:00
満尾 2017年3月31日 13:17