2017/04/26

■妖しい 鴇沢正道『トランス★フォルム 変換』

緑陰に少年は一本のフルート  鴇沢正道

秋風や罰の如くに蒙古斑  同

毬に化けてしばらく温き幼女かな  同

この3句だけを抜くと誤解を与えるかもしれない、と言いたいところだが、鴇沢正道『トランス★フォルム 変換』は、たしかに妖しいところのある句集。上掲一句目の隣には《夏痩せの少年抱けばシャボンの香》もありますし。

作者は1932年生まれ。第一句集のこの本の後半には論考も収められ、とりわけ「文学の中の数学用語」(およそ30p)は、俳句に多く見出される「ベクトル」等の用語にまつわる話題から、フランス現代思想での、言ってみれば安易な数学用語の援用(濫用・誤用)への科学者の批判(ソーカル事件)まで、広汎な視野。たいへん興味深い論考。

ついでに、ここに引かれた「数学俳句」も。

南柯がぽあんかれーらいすで恵比寿る  加藤郁乎

亀鳴くや双子素数をゆりかごに  鴇沢正道


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