秋風や罰の如くに蒙古斑 同
毬に化けてしばらく温き幼女かな 同
この3句だけを抜くと誤解を与えるかもしれない、と言いたいところだが、鴇沢正道『トランス★フォルム 変換』は、たしかに妖しいところのある句集。上掲一句目の隣には《夏痩せの少年抱けばシャボンの香》もありますし。
作者は1932年生まれ。第一句集のこの本の後半には論考も収められ、とりわけ「文学の中の数学用語」(およそ30p)は、俳句に多く見出される「ベクトル」等の用語にまつわる話題から、フランス現代思想での、言ってみれば安易な数学用語の援用(濫用・誤用)への科学者の批判(ソーカル事件)まで、広汎な視野。たいへん興味深い論考。
ついでに、ここに引かれた「数学俳句」も。
南柯がぽあんかれーらいすで恵比寿る 加藤郁乎
亀鳴くや双子素数をゆりかごに 鴇沢正道
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