2018/09/30

■ふたつの謹撰とか散歩のこととか

週刊俳句の「10の質問」コーナー。そこで立て続けに謹撰10句をさせていただきました。

山田耕司さんへの10の質問

岡田一実さんへの10の質問

どちらも素敵な句集。そこから10句を選ぶ(なおかつ、こうして他人様の目に触れる)のはなかなかにハードな、しかしながら楽しい作業でありました。

こうした謹撰は、句集の魅力を伝わるような、しかもヘンな、できれば自分(選んだ私)らしい選、なおかつ選んだ意図を邪魔にならない程度に含ませて、という欲張りで野心的な目論見。前者、山田耕司『不純』から10句については、この句集の一筋縄ではいかない素っ頓狂とオシャレが、後者、『記憶における沼とその他の在処』については、作風の幅の広さが伝わる選を心がけましたぜ。

週俳関連では、最新・第597号のトップ写真を担当。

ここから話題は散歩へと移るのですが、知らない場所を歩くのは、ほんとうにおもしろくて、地下街を歩くにも天井の表示版を眺めながらだし、線路脇の道をどんどん歩いていくと、工場に突き当たり、どこにも抜けられなくて、引き返したり。

この日もずいぶん歩きました。

帷子川と京急。車窓のむこうに赤い車輌が見える。
すれ違ってるんですね。

外階段にはやはり目が行きます

小さな鉄橋をくぐる

京急と外階段

あっ! 今回の謹撰(選句、あるいは句集を読むこと)とね、散歩とはね、かなり似ているかもしれない。

ラヴ&ピース!

2018/09/29

【明日のくにたち句会は中止】

急なことであいすみません。颱風の心配もありますので、中止とさせていただきます。

2018/09/28

■アナログ+デジタル

レンズアダプターというものがありまして、サイズや機構の合わないレンズとカメラ本体とをつないでくれるもの。これを2000円台で購入して、むかしアナログカメラで使っていたマクロレンズを現在のデジカメOM-Dに装着。


自動焦点ではないので、パシャパシャとは撮れない。ピンボケも多発。これはしかしデジカメでは味わえない苦労や失敗の楽しみ。

そして、重い。そうとうに重い。むかしのレンズは「工業製品!」な感じ。腕がすぐに疲れるほど重い。ちょっと鍛えないと。

とりあえず大好物をクローズアップで撮る。



どちらも朝の喜び。

ラヴ&ピース!

2018/09/27

■独特で、無造作で、優雅

巣の造形は、鳥ごとに、豊かな違いがあります。そしてどれも独特で、無造作で、優雅です。
小津夜景「鳥の巣について」
http://yakeiozu.blogspot.com/2018/09/blog-post_26.html

《独特で、無造作で、優雅》。これって、モノや作品や人におけるひとつの理想・最高ですよね。

2018/09/24

■いまだ湯豆腐にあらず

秋らしくなってきたとはいえ、まだ暑い。湯豆腐には到らず、本日も我が家は冷奴。


ご覧のとおり、私は、木綿豆腐派。

ちなみに、好きな薬味ベスト3は、

1 みょうが

2 すりごま+七味唐辛子

3 おかか

であります。

2018/09/22

■羊羹をどこで切るのか 一句の中の句読点

句をどこで区切って読むのか。判然としない句があります。

切れ字「や」はその点、読みを明瞭にしてくれる。でも、そうじゃない句のケース。「切れ」というより、句読点の話に近いのですが、例えば、

春はすぐそこだけどパスワードが違う  福田若之

ふつう、

A 春はすぐそこ。だけど、パスワードが違う。

B 春はすぐそこだけど、パスワードが違う。

C 春はすぐそこだけど。パスワードが違う。

受け取る意味はほぼ同じ。だけど、感触が違う。リズムや口調・口吻が違うせいですね、きっと。

BとCは句点と読点が違うだけだけど(つられて「だけど」が多くなる)、Cは「すぐそこだけど……」と言い差しあるいは省略の要素が入ってくるから、やはしすこし違う。

と、ここで、もうひとつの区切り方。

D 春はすぐ。そこだけど、パスワードが違う。

かなり無理筋とは承知しつつ、ないわけではない。

この「そこ」は例えばモニター画面のパスワード入力部分。後半がセリフのように響き、

D’ 春はすぐ。「そこだけど、パスワードが違う」

といった趣。


俳句はときどき〈六方が開いた箱〉みたいに出入り自由に開かれているので、こうした〈読みの遊び〉も許してくれる。

ラヴ&ピース!


なお、区切り(切れ)が揺れるのは、掲句のように、いっけんすらっと〈一文〉になった句とは別に、終止形と連体形が同型の口語体、句の途中の名詞が前後の用言のどちらに掛かるか決定できないetcのケースでも起きる。実際は、これらのほうが頻繁。

2018/09/17

■外階段かつ小さな休暇

連休は葉山に遊びに行っていました。友人夫婦と私たち夫婦4名。ほぼ恒例化。

で、ですね、葉山に行っても外階段にレンズが向くのであります。



2018/09/14

【お知らせ】9月のくにたち句会

2018年9月30日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

初参加の方は、メール tenki.saibara@gmail.com電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。

2018/09/13

■ガーデンパーティ

いい空気、というのは物理の空気ではなくて、人がみな不安なしに、人と人が良い距離感で、安らかにすこやかに時間を共にするということで、それはふたりでもおおぜいでも同じこと。

2018/09/12

■冒頭集:葉真中顕

 その部屋には、死の海が広がっていた。

 国分寺駅の南口から、徒歩一〇分足らず。住宅街の一角に建つ、五階建ての単身者向けマンション『ウィルパレス国分寺』。近年流行りの落ち着いたデザインで、外壁には白を基調にダークブラウンをアクセントとしたサイディングが施されている。
 奥貫綾乃が四人の男たちを率いてそのエントランスに到着すると、オートロックのスライドドアが内側から開けられた。
葉真中顕『絶叫』(2014年/文社)



葉真中顕は、この名で作家デビューする以前、ネット上にエンターテイニングかつ明晰な記事を書いていた頃からのファンです。

『ロスト・ケア』(2013年)は面白く読んだ。続く『絶叫』は最高に面白かった。『ブラック・ドッグ』(2016年6月)は途中そうとうきつかったが、なんとか最後まで読んだ。『コクーン』(2016年10月)は途中で投げ出した。これらは、各作品の出来栄えよりも、私との相性が大きいのだと思う。

今年8月には新刊『凍てつく太陽』が出た。これまで、◯→◎→△→☓、と来ているわけで、「もういい」という選択肢もありますが、やはり買って読もうと思っています。

ラヴ&ピース!


2018/09/08

2018/09/04

■虚実のあわい 『カモメの日の読書』それ自体が詩であること

小津夜景『カモメの日の読書』(2018年6月/東京四季出版)の構成の妙については、全体をどうこうというより(なにしろ40章もある)、最初の2章なんです、要は。

「1 カモメの日の読書」は、書名と同一タイトルで(LP、CDでも目にするかたち)、この本の趣旨を伝えながら、内容はというと、いかにも日常かつ随想。家族も登場して、出来事としてはリアル。

ところが、続く「2 うりふたつのたましい」では、冒頭、「知り合いに妖精っぽいひとがいる。/妖精っぽいそのひとは、たまに妖精のプリントTシャツを着て、待ち合わせ場所にあらわれる」とあり、すぐれて虚構的な肌合い。

ひとまず漢詩紹介本のかたちをとるこの本の散文部分(エッセイ風の散文部分)が、リアル(ノンフィクション)なのかフィクションなのか、読者は軽い目くらましに遭う。

それはいわば「おもてうらの判別しがたい布みたいに、真と偽とが爽やかにシステムエラーを起こしている」(2 うりふたつのたましい)みたいなのだ。

この本に書かれるのは、作者/著者の日常生活のリアルなのか、作者/著者の想像・虚構なのか。そこのところは明示されない。

虚と実の、真と偽の、間(あわい)を行くよ、とでも宣言するかのようなのだ。はじめの2章でもって。

しかしながら、考えてみれば、詩的であるとは、虚実のあわい、真偽のあわいに在ることにほかならないのではないか。

かくして、この本は、1冊として詩、どこを切っても詩、といった稀有な全体像をもつにいたるのであります。

ラヴ&ピース!


2018/09/02

■コンパクトな配置 桜木町あたりを歩く

横浜・桜木町駅。新しい大型商業施設やら遊歩道が整備された海側と対照的に、山側(陸側)は、古くからの繁華街・野毛。ここでちょっと盛り上がったあとは、目と鼻の先の、さらにディープな遊びが用意された伊勢佐木町やら黄金町へ…ということなのだろうか。よくは知らないが、少し歩いただけでも、この界隈のコンパクトに凝縮された「悪場所」感がひしひし伝わる。素敵ですね、桜木町の旧市街。