2014/10/31

■「私」が歳時記です

季語の話題、とりわけ一般論としての季語論が退屈なのは、季語に支配統治されているという前提で語られるからかもしれません。季語を研究する人はそれでいいけれど、季語を使う人は、季語を支配統治しないとね。

「私が歳時記だ」というくらいの態度でよろしいんじゃないでしょうか。

冗談でも不遜でもなく、現に、私がここに暮らして、私が俳句をつくり、つくった俳句の責任は私が全面的に引き受けるわけですから。




■本日はフェリーニ忌


2014/10/30

■本日は野尻抱影忌

野尻抱影(1885年11月15日 - 1977年10月30日)≫wiki

オンライン古書店「野尻抱影」
http://sevendays1.exblog.jp/23046363/



■金魚と香水

このあいだの現代俳句協会全国大会(名古屋)では小久保佳世子さんにもお会いし、『街』2014年10月号をいただいた。

屑金魚溢るる指の間かな  小久保佳世子

金魚の句、好きなんですよね(正確には好きな金魚の句が好きなのです。ややこしい言い方ですが、金魚の句でありさえすれば好きというわけではありません。為念)。

香水の香が人間の輪郭に  同




2014/10/29

■OK GO というバンドのビデオはどれも凝りまくりで素晴らしいのだけれど、今回もまた

いいですねえ、なんとも。

実際のナマの映像と加工処理(CG等)の境目がわからない。

現実と夢のあわいが滑らか。上質のファンタジーってことですな。


(画像処理はナシ? それならそれで凄すぎる)


2014/10/28

■『鷹』2014年11月号からもう一句

カビキラー(ジョンソン株式会社)の句。

見てゐたり黴を殺してゐる泡を  髙柳克弘

このあいだの句会で「カタカナの商品名」というお題が出た。こういう変則的なテーマはなかなかうまく行かないのですが、なるほど、この句のように「黴を殺す」とすればいいのか、と。

オツ。

「見てゐたり」もいい。俳句の場合、見ていると書かなくても見ているのだからムダなひとことになる場合が多いのですが、この泡はたしかに「見てゐたり」しますよね。

かなり好きな句です。



■「硬い」と言えるような切符、もうほとんど見なくなりましたね。改札鋏でバチンと切るような。

『鷹』2014年月号より。


乗船の硬き切符や秋の風  小川軽舟



2014/10/27

■白い切手

つまりはシートから切手を除いた残余なんですが、めずらしいかも。めずらしくないかも。



■菅井きんの歌DX

蛇穴に入りて眠りてひとつめの夢見に菅井きんの明滅 10key

月曜日は短歌の日。

ごめんよ。

2014/10/26

■現代俳句協会全国大会(名古屋)に行ってきました

現代俳句協会賞特別賞を受賞された金原まさ子さんの関係で。

http://www.gendaihaiku.gr.jp/event/?detail=282341407741338&ymd=2014-10-25

出席してみると、新人賞が岡田一美さん(岡田眠さん)、年度作品賞が「麦」の伴場とく子さん(ご欠席)ということで知り合いだらけ。俳句世間、狭いです。


■期待は低ければ低いほど幸せになれる

シーズン前「最下位争いだろうなあ。先発要員の久保とスタンリッジが抜けたし」

シーズン途中「首位? ないない」

シーズン終盤「Aクラスも危ないんじゃないの?」

シーズン最終盤「どうせ広島が巨人に勝って、3位でしょ?」

ポストシーズン「あっさり広島に負けるんだろうなあ」

さらにポストシーズン「1勝アドバンテージの巨人に勝てるわけない」

巨人に3勝「ここから3連敗するに決まっている」

日本シリーズ前「メッセ対スタンリッジ? 完封されそう」

日本シリーズで1勝「これで4タテはなくなった」 ←いまココ。


過度な期待をしなければ、心安らかに見ていられます。 


2014/10/25

■「田舎」を抜けて

飛行機を使えば、日本全国、日帰りができます。便利なことですが、仕事利用だと慌ただしいことです。

朝焼や空港へ田舎がつづく  佐藤文香

この句を国内線と思うのは「田舎」の2文字です。海外の空港と読めないこともないけれど、東南アジアやアメリカの地方空港を想像するのは、ちょっと無理があります。カッコつけすぎの読みですよね。

それにさ、朝だしね。

さて、この風景は作者にとって初めてのものではないでしょう。旅先の空港なら、行きでここを使った可能性が高いし(そのときは、空港から田舎が続いたわけです)、自宅から最寄りの(といってもさして近くないであろう)空港なら、何度か使っている可能性が高い。ともかく、何度目かの「田舎」です。

またあのときのように「田舎」を通り抜け、 どこかへ行く、あるいはどこかへ帰るんですね。

このときの「田舎」は親密な気分と、それとは反対の忌避や倦怠と、そのふたつがないまぜになった感じがあります。これこれこうという気分ではない。なんともいえぬ機微。

これは「田舎」という風景・概念・経験が「朝焼」と「空港」という舞台に置かれることで生まれる機微だと思うのですよ。

なんか舌足らずだけど、そんな感じ。ごめんよ。


掲句は『鏡』第14号(2014年10月)より。



2014/10/24

■秋の蜘蛛 鈴木牛後『暖色』の一句

句集『暖色』(2014年5月/マルコボ・コム)より。

震へる機械震へてのぼる秋の蜘蛛  鈴木牛後

蜘蛛ではなく「秋の蜘蛛」。こういう場合の「秋の」にはあまり意味がないことも多いのですが、この句は、秋が「機械」にゆるやかに掛かり、限定をうながす。秋に震える機械って何だろう?という具合。

作者が酪農に携わることは予備知識だけではなく句集全体にそうした句が多いことからも読者に伝わるので、〈震える機械〉はさらに限定される。

「限定」というと悪いことのように聞こえるかもしれませんが、そうではなく、〈読み〉を導く要素というのは、俳句という短い文面にも必要。効果を及ぼすことが多々あります。

機械の振動から蜘蛛の振動へ。秋の澄んだ空気にも、この振動は伝わるようなのですよ。




■ミラーレス一眼は明るい

それもあるんですが。

何がいいって、容姿。


かわいいったらありゃしない。


新しく我が家にやってきた写真機の話です。



年の離れた兄と並んで記念撮影。

2014/10/23

■土砂降りの弁士

映画で2句。

遠い弁士へ名画座の黒電話  きゅういち〔*〕

土砂降りの映画にあまた岐阜提灯  攝津幸彦

現代川柳はしばしば攝津幸彦と相性がいい。並べて楽しめる、という意味です。

「描写する」という俳句にありがちな句の行為とは無縁だからでしょうか。


〔*〕きゅういち句集『ほぼむほん』(2014年9月/川柳カード)

〔関連記事〕
まがまがしき〈妊娠・出産・誕生〉 きゅういち句集『ほぼむほん』冒頭
http://sevendays-a-week.blogspot.jp/2014/09/blog-post_26.html

2014/10/22

■雪とシャーレ

『季刊芙蓉創刊25周年・通巻100号記念 芙蓉合同句集』(2014年10月)より。

シャーレより虫這ひ上がる雪はげし  ドゥーグル・リンズィー

興趣。

上昇(虫)と下降(雪)、上(空)と下(シャーレ)、小(虫)と大(気象)。明確な対照は、明確過ぎて興をそぐこともあるのですが、この句は、とてもすっきりとおもしろさが伝わります。

「はげし」がいいのだと思います。ここまで言わない手もありますが、「はげし」とあることで句全体にダイナミズムが生まれたような気がします。「はげし」いので、上へと向かう虫の肢まで見えるのですよ。




■七曜堂更新:押川春浪

3点をオンラインショップ・七曜堂にアップしました。
http://sevendays1.exblog.jp/23160013/

2014/10/20

■終わらない菅井きんの歌

朗読のうしろをよぎる菅井きん二十世紀はぜんぶまぼろし 10key

眼底に焼き付けたまへほら菅井きんそつくりに暮れてゆく街

かの夏を想へば菅井きん状のものが記憶の襞に滲み出す

新大久保新宿代々木菅井きん原宿渋谷恵比寿それから

現在と未来が菅井きん式に折り畳まれて世界システム

こんなもの短歌ぢやないと唾されたそれでも菅井きんは続ける

こげなもん俳句でねえとボケかまされすかさず菅井きんがツッコむ



月曜日は短歌の日です(錯乱)。

ごめんな。

■「本日の放送は終了しました」のあとも何か延々と流れていた今朝の J-WAVE



サビの「ファンファーレと熱狂。赤い太陽。5時のサイレン。6時の一番星」。泣かせますね。


2014/10/18

■千倉に行ってきました

南房総・千倉で友人がクリニック+ホスピスをやっています。「花の谷クリニック」といいます。海がすぐ近く。気持ちの良い施設でしてね、そこで毎年(だったかな?)、オペレッタというかミュージカルのような演し物をやる。近所のばあちゃん(おばちゃんも少し。おばちゃんとおばあちゃんの線引きは難しい)やじいちゃん(同)が出演。演技して歌う。ほのぼのした演し物です。観客は入院している患者さんとか近所の人々。友人は千倉の人間ではなく、そこで開業して、今ではすっかり地元に根づいた感じです。

で、そのオペレッタの伴奏を嫁はんがやるわけです。これまで南太平洋だとかいろいろやったのですが、今年はマイ・フェア・レディ。だからこのところ、その曲が階下から聞こえたりしていましたよ。With a Little Bit of Luck とかね。本番は11月なのですが、その音合わせに行ってきました。私は、まあ、付き合いというか、運転手というか。

ここからはまず多摩川沿いに川崎に出て(土手を左に見て走る。好きな道です)、東京湾アクアラインを渡り、館山までは高速道路。昔と比べて道が便利になりました(昔は東京東部経由で久留里街道を斜めに南下、鴨川に出て、そこから千倉でした。アクアラインが出来てからも、山越えで千倉)。

花の谷クリニック ウェブサイト

紹介記事:花の谷クリニック 自宅に代わる医療のサポートを備えた生活の場の提供を目指して

行きの海ほたる(東京湾アクアライン)からの眺め。

千倉は暑いくらいの陽気でした。

ヤドカリ目線。

■昨日の夕方の J-WAVE の曲の並びがとてもよかった(どちらも知らない曲・知らない人)件





2014/10/17

■土間のラジオ

「ながらラジオ」というんでしょうか、ラジオをつけて、音を流しておくというのは、私はよくやるのですが、クルマ以外でももっと暮らしに溶けこんでいいのではないでしょうか。もっとも、昔はそうだったから、復権?

(そういえばラジオをつけているタクシーがなくなったような気が。客が乗ると消すのか?)

さて。

土間涼しラジオ小さく流しゐて  中西夕紀

このラジオは土間に置いてあるのか、奥の間から漏れ聞こえるのか。前者と解しました。土間というのは(とくに農家の土間)はいろいろなものが置いてあるから、そこにラジオがあっても自然。ちょっとした作業をする場所だったりもしますから、ラジオをつけっぱなしということもあるでしょう。

「小さく」が技。音だから「低く」とかしちゃいそうですが、「小さく」。ラジオらしくて、かわいらしい。


掲句は『都市』(2014年10月号)より。


■七曜堂更新:源氏鶏太

大衆小説(今で言うライトノベル)の作家、源氏鶏太は、今では忘れ去られていますが、1950~60年代には大変な人気作家だったようで、たくさんドラマ化・映画化されています。私はそれほど読んでいませんが、源氏鶏太といえばサラリーマン小説というイメージ。

6点をオンラインショップ・七曜堂にアップしました。
http://sevendays1.exblog.jp/23131223/

当時刊行された本の装幀が愉しげにチープ。

なお、白っぽい写真は防護のトレーシングペーパーのせいです。


2014/10/15

■『はがきハイク』第10号へのレスポンスをいろいろといただいております

ありがとうございます。

柳本々々さんからは↓
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-382.html

また、はがきをもらうとはがきを書きたくなる、ということでしょう。おはがきもたくさんいただいています。ありがとうございます。


でね、話は少し変わるのですが、今回の「ロボット」5句は、1句目と5句目は前から決めていて、あいだの3句を考えた。だから何というのではないのですが。

2014/10/10

■くにたち句会〔10月〕のお知らせ

2014年10月26日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:いつものキャットフィッシュ(予定)

席題10題程度

句会後の飲食もよろそければどうぞ(会費アリ)

資料映像

■オンライン古本ショップ「七曜堂」を少しずつ

さぼりきっていたオンライン古本ショップ「七曜堂」。少しずつアイテムを増やしています。

http://sevendays1.exblog.jp/


ヘンテコリンなショップになればいいな、と。例えば、これ http://sevendays1.exblog.jp/23050884/ とか、これ http://sevendays1.exblog.jp/23092494/ とか。

古書市場で高値の本が割安かも(例えば野尻抱影とか)。


■たてつづけに菅井きんの歌

ゆくすゑを案じて菅井きんが立つ日比谷野音はけふも騒然

キッチンをとびだす秋のサザエさんついでに菅井きんもとびだす

菅井きん的にはおよそ午後七時目印に持つ『凧と円柱』


菅井きんふうに新宿アルタ前目印に持つ『凧と円柱』

十月の借景として菅井きん心しづかにお茶する時間

きみが住む東京二〇一四年きみとは菅井きんよあなただ



みなさん、待望の金曜日ですよ。

2014/10/09

■秋の夜は菅井きんの歌

かなしみが増すのだ菅井きんを知り蚯蚓の鳴くを知りたるのちは 10key


月曜日以外にも短歌の日がやってきます(錯乱の極み)。

■本日はチェ・ゲバラ忌

あるとき都内のホテル、喫煙具売り場のショーウィンドウにゲバラの灰皿を見つけた。小ぶりの白い陶器に色鮮やかな顔の絵。値札を見ると、数万円! ゲバラがあの世からこれを見たら、なんと思うだろう。

ゲバラほど顔が売れた人はいないだろう。同じ肖像が数限りなく複製され、世界中のモノに描かれている。その数はアインシュタインやマリリン・モンローを上回るかもしれない。

≫チェ・ゲバラ10句
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2008/09/blog-post_9509.html

週刊俳句で初めて自分の句を発表したもの。

当時、《つばめむかしへ帰るチェ・ゲバラの忌》はどんなリズムで読まれるのだろう、興味がある、というお便りをいただいた。

 つばめむかしへ  帰るチェ・  ゲバラの忌   7 5 5

「チェ」の後の「・」はどうしても一音を食う。ここに一音を置かず「チェゲバラ」と4音だと、ゲバラじゃないみたいなのだ。

ゲバラの本名はエルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。「チェ」は親しみを込めて「やぁ」「おい」「友」と呼びかける語だそうだ。「やぁ」の後には一拍呼吸が要るのですよ。


2014/10/08

■9月からここにかけて週刊俳句で

帰ってきた奥村晃作同好会 太田うさぎ×西原天気
〔前篇〕 http://weekly-haiku.blogspot.jp/2014/09/blog-post_82.html
〔後篇〕 http://weekly-haiku.blogspot.jp/2014/10/blog-post.html

真説温泉あんま芸者 それを「いのうえ」と呼ぶことにする
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2014/09/blog-post_21.html

16=2の4乗 岡田由季句集『犬の眉』を読む
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2014/09/1624.html

【八田木枯の一句】家ぢゆうの柱のうらの稲光り
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2014/09/blog-post_41.html

まあまあ仕事したという感じ?

イメージ映像


2014/10/06

■浅草今昔

昭和2年のスタンプがある絵葉書セットから、浅草を3葉。

上)仲見世
中)浅草寺
下)浅草六区

ならべてみると、仲見世と浅草寺は現在も大きくは変わっていないのに対して、六区は一変。同じ90年間でも変化の度合いはまったく違うのですね。






■さまざまな菅井きんの歌

露の世をテレビかついで菅井きん何処へゆくのか何をするのか 10key


月曜日は短歌の日です(錯乱)。

2014/10/05

■Manchurian Schoolgirls

古い絵葉書。むかしのはセットになっているものが多い。


「ハイカラな女学生」4名の図。


ポーズは牧歌的ですが、着ているものがヨソイキっぽい。80年かそこら前のお嬢さんたちは、今のお嬢さんたちとはずいぶん趣が違うようでもあり、いまそのへんを歩いていそうでもあり。

「草原の腐女子グループ」とか「満州の文系女子」とか言っても違和感がない。

それにしても、眼鏡の娘。すごいオーラ。

■代田橋駅で見た水路は玉川上水だったのですよ

昨日、代田橋駅で見た水路は、玉川上水が京王線のあたりで一瞬、暗渠から開渠になる、それだったことを知りました(≫地図)。某SNSでの鷲巣さんに感謝。

ここより上流で開渠となるのは京王線富士見ヶ丘駅近くの浅間橋だそうで、ならば、三鷹駅からそこまで歩いてみるというプランも浮かびます。

いやそれより住んでいるところに近い立川や小平を流れる玉川上水をたどるのが先か。

いずれにせよ、歩く気、満々であります。





2014/10/04

■千駄ヶ谷→新宿→初台→代田橋→明大前

某日。

(って、今日なんじゃないの?)

千駄ヶ谷から外苑西通りを北上、新宿通に出て左折、御苑をかすめて、新宿三丁目方面へ。ここまでが月天吟行のコース。皆さんといっしょに歩かせてもらった。 そこで別れて(句会には出ずに一人散歩を続行するパターン)、新宿駅から甲州街道に出て初台へ幡ヶ谷へ笹塚へ。明大前まで出て電車に乗り、帰宅。

ゆっくりぶらぶら、途中、お茶もして、3時間ほどの散歩。足はちょっと痛い。

ダンスドレス専門店。

外苑西通りの一本裏の道は、フォトジェニックな物件多数。

人が入ると、それもたくさん入ると、写真って面白いですよね。

今回の収穫は代田橋駅周辺。水路が京王線をくぐり、道をくぐる。

代田駅の西には和田堀給水所。

2014/10/03

■佐藤りえ「食と短歌の考現学 アンソロジー・食の短歌」がおもしろい

『別腹』vol.7(2014年5月5日)特集「食」にあった佐藤りえ「食と短歌の考現学 アンソロジー・食の短歌」をひじょうにおもしろく読んだ。

30首が挙げられているが、ここでは2首だけ。

つけものたちは生の野菜が想像もつかない世界へゆくのでしょうね 穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

食うまでは一種の軽蔑禁じえぬおろかな蟹のなめらかな肉 高柳蕗子『回文兄弟』

俳句が「食」を詠むと(俳句と比較する必要はないのだけれど)、特定の料理や食材の従来の観念を大きく裏切っている暇がない(字数が足りない)ので、材料の属性に大きく頼る(材料がもともと持っている特徴を利用する)ことが多い。長さ・音数だけが理由ではないのだろうが、短歌のほうが、裏切りや展開が豊か。「そう来るか!」度で、現状、短歌と俳句で大きな格差がありそうです。


書影込みの参考リンク:文学とマヨネーズ。
御前田あなたブログ「いつだって最終回」

http://ameblo.jp/motokichi26/entry-11842047795.html

■ユーのバイシクル

ある晩、ちょっと思いついて、嫁はんに言った。

「ユー、速い自転車、買いなよ」

いっしょに走れば自分の運動にもなるという発想。いま嫁はんが乗っている実用車(ママチャリ)では、私と速度が揃わない。

決断が早いのが嫁はんの長所(料理の手も速い。だいたい何事も早い)というわけで、次の日、早速、近くの自転車屋さんで目星をつけてきたという。夕方、いっしょに見に行き、それに決めた。納車は約1週間後。これで立川や国分寺くらいなら楽勝。


2014/10/02

■俳句雑誌『鷹』の表紙の絵がいつも綺麗です

10月号の椅子は、ファブリックのモスグリーンがとりわけ心にシミましたぜ。



颱風去り雑兵のごと風残る  小川軽舟

2014/10/01

■今年ももう90日かそこらで終わるわけですが ……吉岡建夫遺句集『海を渡るベレー帽』

場外に千金を追ふ師走かな  吉岡建夫

「場外」とは不思議な語で、これだけで公営ギャンブル、馬券、車券を買う場所とわかります。この句の場合は、「千金」とあるのでよけいに明白。

「追ふ」は、いかにも。

一攫千金を求める人たちのウロウロやスタスタ、すなわち脚が見えてきます。

「師走」もまた、なんとか「千金」を得て、年を越そうとする心情からすれば、いかにも。



作者は長く銀行にお勤めになった。仕事で扱う「金」は、この句の「千金」とは桁が違う。それでも、「場外に千金を追ふ」ことが些事で無意味というわけではない。「お金」にはいろいろな種類があって、金額で一様に分別されるものではありません。


なお、掲句の一句前には、

立冬や木つ端の煙る石油缶  同

があり、冬の気分が横溢。


吉岡建夫遺句集『海を渡るベレー帽』は2014年9月20日刊。著者・吉岡建夫氏は1926年生まれ、2013年9月20日に永眠されました。