2018/08/29

■エビフライその他

宇治金時タワーマンションがいっぱい  樋口由紀子

ミルクがない点、オトナっぽい(≫参照)。

と、そんな話ではなくて、「樋口由紀子さんへの10の質問」の後ろに並んだ10句がとてもおもしろくて、

クリップとゴムの間が汗臭い  同

クリップの金属臭、ゴムのゴム臭、汗の匂い、この3つはそんなに遠くない。細かい箇所で、3つの匂いが交叉する。

九州と四国の間にエビフライ  同

豊後水道で海老が穫れるのはあたりまえだろうけれど、エビフライはやはり異様な景色。巨大なエビフライが1本横たわっている。


ところで、この「10の質問」シリーズ、もともとは、週刊俳句で大昔にあった「ハイクマシーンに10の質問」。最近になって、ひょんなことから復活した。

俳人・柳人が続々登場する予定でありますが、樋口由紀子さんの次は、柳本々々さん

じつは、「10の質問」の相手先として、シリーズ開始当初から私のアタマのなかには柳本々々さんの名があがっていたのですが、回答をお願いするのがずいぶんと遅くなりました。理由は、ただひとつ。

「10の質問」と柳本々々さんは、俳句で言うところの「つきすぎ」だから。

あまりに一直線に付くので、躊躇していたのでした。

象 忘れ物をしてまた出会うこと  柳本々々

ともかく、これからも「10の質問」にご期待ください。

ラヴ&ピース!

2018/08/23

■前提を変える

風邪は一日も早く治ったほうがいいのですが、「この風邪は長引く」という前提へと、考え方を変えると、ラクに過ごせるようになりました。

いわゆるデフォルトの身心レヴェルをすこし引き下げる。アタマはすこし重いのが普通で、身体全体がいまひとつすっきりしないのが、いまのところの、そしてとうぶんの、日常、というふうに切り替える。

一方、ふと気づくと爪が伸びている。不調を理由に、何かに気づくことにあれこれ怠慢であったかと、大いに嘆き(大げさ!)、爪を切るくらいは、こんな状態でも出来るので、切りました。

ラヴ&ピース!

夏風邪やひよつこりひようたん島に崖  大石雄鬼

2018/08/20

■卓球20句 『We』より転載

このあいだね、イコマくんが突然やってきて、みなですき焼きを食べたりしたんです(暑いさなかのすき焼きってちょっとオツでしょ?)。そのとき、「あ、そうそう、イコマくんの句をつくったんだよ」と言って、掲載ページを見せた。



『We』第5号(2018年3月)より転載
(『We』のご厚意により転載を許可いただきました)

まとめたのは去年の12月。発行日に合わせて春から夏。タイトル「卓球」は、なにかヘンなタイトルないかな? 俳句ではあまり付けないようなヘンなタイトル、ということで付けた。

イコマ記念ということでなくとも、このさき、自分にとって愛着のある連作になるといいなあ。

2018/08/19

■たくさんの時間やページ数や言葉数の愉悦

昨日の記事で引いた、
みんなみんな、なんでそんなにたくさんの時間やページや言葉数を費やさないと、何かが伝えられないと思っているんだ。(山田航)
これはきっと違う。少なくとも私にはそうではない。この物言いだと、時間やページ数が手段・方法。手間暇をかけないと、目的(何かを伝えること)が達せられない、ということになる。そうではなくて、時間やページ数こそが、私が享受する、悦ばしく享受するものにほかならない。

たとえば、クルマが目的地に達するためだけのものなら、乗っている時間は短いほどいいし、燃費がいいほうがコスト安。あるいは誰かが運転してくれるほうがラク。でもね、クルマがナイスなら、目的地はどこだっていいのです(うひゃあ、ヘタなたとえ)。

分厚い本の愛おしさ、6時間も続く映画の気持ちよさ。それがあるから読むんだし、観るんですよね。


2018/08/18

■冒頭集:桜前線開架宣言

困る。本当に困る。何にって、ぼくが根っからの文学青年だと思われることだ。知っていて当然かのように小説の話などを振られるのは困る。名作といわれている小説なんてろくに読んだことがない。映画も苦手だ。なんで二時間以上もあるんだ。ずっと一カ所に座っているのは嫌だ。漫画ですら長いものは読む気にならない。週刊少年ジャンプを生まれてこの方読んだことがない。みんなみんな、なんでそんなにたくさんの時間やページや言葉数を費やさないと、何かが伝えられないと思っているんだ。
(山田航『桜前線開架宣言」まえがき)

2018/08/17

■追悼アレサ・フランクリン

アレサ・フランクリンが亡くなった。昨日、76歳。

声を張る箇所ではなくとも(つまり小さく低く優しく歌う箇所でも)、あるいはアップテンポではなくスローでも、すべてがシャウトの圧(あつ)をもって、メロディーと感情が伝わる。どの箇所もこちらの胸がいっぱいになる。

(技巧的にはよくわからないが、呼吸は常に100パーセント、ぜんぶを声として響かせない箇所は、息を逃す。そんな感じ。ソウルの歌唱ではめずらしくない)

好きな曲、好きな歌唱はたくさんあるけれど、「ブランド・ニュー・ミー」を、ニューポートでのライヴで。

2018/08/13

【お知らせ】8月のくにたち句会

2018年8月26日(日)14:00 JR国立駅改札付近集合

句会場所:ロージナ茶房(予定)。

席題10題程度

初参加の方は、メール tenki.saibara@gmail.com電話etcでご一報いただけると幸いです。問い合わせ等も、このメールまで。

2018/08/11

■走れ禿頭 『塵風』第7号の井口吾郎

『塵風』第7号の映画館特集がすごいという話をして、もはや俳句雑誌ではない、と言ったんだけれど、やはり俳句雑誌ではあるわけで、ぱらぱらめくると、随所に美味。

例えば、井口吾郎「飼育二課」は例によって回文俳句ばかり10句。タイトルがまず、いいですよね。飼育二課。どんな会社なんだろう。

蟹食いし絆頷き飼育二課  井口吾郎

なんだか、いい会社っぽい。

うそ寒のテレビくびれて呑む誘う  同

なんだか、暮らしが見えますよね。技法的には軽い「て」切れのあと、終止形ふたつの畳み掛け。

禿頭逃げ行く湯気にまた揚羽  同

笑えるんだけど、笑って済ますには美しすぎる景。

ほんと、よく出来てますわ。


問い合わせ先:西田書店
http://nishida-shoten.co.jp/

2018/08/10

■宇治ミルク金時というゴージャス

某日、かき氷界のロールスロイスとも称される宇治ミルク金時を謹んで食す(白玉まで付いてた)。

ミルク増量、金時増量というオプションがあったら、なおよかったが、贅沢は言えない。


2018/08/09

■抱く 週刊俳句・第583号の八鍬爽風句

三毛猫を蛆ごと抱きて石を売る  八鍬爽風

三毛猫ではなかったけれど、猫を蛆ごと抱いたことがあります。

猫は、死に場所を人間に見られないように死んでいく、といいます(真偽の程は不明)。

家から出さずに飼っていたら、それはムリでしょう。実際、前にうちの猫が最期を迎えたときは嫁はんの腕の中で息を引き取りました。

けれども、むかしむかし、病気でほとんど動けなくなったはずのご近所の猫が、縁の下に横たわっていたことがあります(なんとかそこまでたどり着いたんですね)。まだ息はありましたが、蛆が大量に湧いていました。あいつらは、死を待たずに湧いたりするのでしょうか。ともかく、からだを床に寝かせて、知人がひとつひとつ蛆を指で取っていきましたが、キリがありませんでした。

だから、何が言いたいのかというと、この句の景色、痛々しいような凶々しいような景色は、一読、想像のたぐいと読む人がいるかもしれませんが、きわめて現実的な事象なのですよ、ある人々(私を含む)にとっては。

下五の「石を売る」は間テクスト性を狙ったものかもしれませんが(つげ義春)、このように別の行為へと句が移っていくよりも、その場に立ち尽くす句であってほしいと、私個人としては思ったのでした。

掲句は、週刊俳句・第583号〔2018年6月24日〕掲載・八鍬爽風「そうふうのはいく」より。

2018/08/08

■『カメラを止めるな!』、あるいは、なにも止めるな!

映画館の満席とは、左右の端っことか最前列とか、「そこって映画観る場所じゃないでしょ」という席まで埋まるということで、そんな異常事態が軒並み、それもどの時間帯にも起こっているという『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)。

やっとこさ観てきました。池袋ロサ。40年くらい前にビリヤードの試合で来たなあ(プロじゃないよ、アマの試合だよ)。当時から場末感みなぎるビルでしたが、さらにディープに。

で、映画なんですが、評判に違わず、最高!!!です。

で、なにを言ってもネタバレになるので、なにも言えない。

でもちょっとだけ言えば、トリュフォー『アメリカの夜』。いや、ヴィム・ヴェンダース『ことの次第』か? ぜんぜん違うんだけど、じわーっとね。『アメリカの夜』なんだよなあ、と。


ところで、ひょんなことから、上田慎一郎監督のおとうさんのフェースブックを知って、これがまた途方もなく素晴らしいのですよ。『カメラを止めるな!』のバックステージものというのでもなく、スピンオフでもなく、でも、それらと無縁でもなく。

上田慎一郎 カメラを止めるな



『アメリカの夜』や『ことの次第』を持ち出したけれど、『カメラを止めるな!』は、映画って素晴らしい、にとどまらず、なにかをするってことは素晴らしい、さらには、死なずに動いているだけで素晴らしい、と、どんどんとんでもなく一般へと広がって、観ているこちらの胸がいっぱいになる。

『カメラを止めるな!』という映画を観ることは、『カメラを止めるな!』という出来事に出会うことなのかもしれませんよ。

ラヴ&ピース!

2018/08/06

■常温派

桃は冷やさず常温派。なんなら窓辺であっためて。

さらには西瓜もまた、近年、常温でいいや派に。

 まよなかをゆきつもどりつ冷し桃  八田木枯

 蛇取は西瓜喰ひ喰ひ秋の風  会津八一


2018/08/05

■江戸川花火大会へ

花火見物なんて何年ぶりだろう? 関戸橋の花火以来です。

打ち上げ開始の1時間前の市川駅は人でごった返し、プラットフォームから人がこぼれそうなほど。階段付近の行列が動かない。それでも嫁はんとなんとか落ち合い、駅を出る。会場近くの混雑を避け、市川橋へ(嫁はんは職場から近いので土地勘がある)。

市川橋。旧名・江戸川橋。全長399メートル。連続鋼桁複合橋形式。橋に出逢えばとりあえず渡る「橋ラヴァー」としては、花火よりもこちらがメインになりそうです。

橋の途中でカメラの三脚を立てている人もいて、シャッターのタイミングを見ていると、総武線の列車がメイン。花火をバックに狙っている。鉄道ラヴァーも、今夜の江戸川花火大会に来ているんですね。

(つまり、花火は花火なんだけど、それよりも鉄道、はからずも橋、って人もいるんです)

ぶらぶらと小岩側まで歩いたのですが、なにしろ全長399メートルです〔*〕。かなりあります。で、土手に腰掛ける。人出のまばらさも花火までの距離も、いいかんじ。


▲市川橋の途中から。ビル陰の花火。長いレンズを持っていなかったので、写りが遠い。小さい。

▼土手から見る市川橋。みな花火を見ている。



▲花火会場から距離を置く人々。


この夜、発射場の近くで真上に花火を見ていた吾郎さん(回文大王)からのメールによれば、市川側40万人、小岩側100万人が集まったそうで、どれだけ花火が好きなんですか、みなさん!

 東京に水にほふ夜の花火かな 10key(『けむり』2011)

はんぶん東京じゃないけどね。東京の端っこだけどね。

ラヴ&ピース!


〔*〕歩いて渡った橋の長さでは自分史上第2位かもしれません。第1位はダントツで新富士川橋の1553メートル。これはほんと長かった。

2018/08/04

■毎朝の血圧

嫁はんは、メモ帳がわりのティッシュペーパーの箱に、毎朝、血圧を記す。

メモ帳など使わず、卓上の箱を使ってしまうところ、合理的だなあ、と感心している。


最低3回は計り、そののちノートに記載するので下書きが要るわけですが、あまりに高いときは、数値が下がるまで何度か測る。

この「下がるまで計り続ける」態度が合理的かどうかは、知らない。

ラヴ&ピース!

2018/08/02

■入れ歯のこと 『翔臨』第92号より

ドンゴロス(麻袋)は今はあまり使わない語かもしれない。コーヒー豆を入れたやつね、と言っても、あまり通じないかもしれない。

ドンゴロスに入れ歯をおきぬ白鳥発つ  竹中宏

「白鳥発つ」は、意味で考えば、「白鳥帰る」で春の季語。けれども、ドンゴロスには夏が色濃いので、白鳥部分をことさら季節に結びつけることもない。「白鳥発つ」は渡り鳥としてよりも白い鳥が地上から離れるその瞬間と読んだほうが美しい。

入れ歯の白と、ってことはないけれど、粗い麻の布地に、目的不明・経緯不明のまま置かれた入れ歯の所在なさと孤立。

読者の胸にやがて広がる/結果として広がるのは空でござんす。


掲句は『翔臨』第92号(2018年6月30日)より。

2018/08/01

■『塵風』第7号・特集映画館

す、す、すごい!

特集「映画館」では、執筆者それぞれの個人的な思い出・思い入れが誌面に充満。ページをぱらぱらめくるだけで熱気がほとばしるです。




なお、俳句雑誌と銘打ちつつ、全152頁中、同人の俳句作品は32頁。分量もそうなのですが、特集が充実すぎて、もはや俳句雑誌ではない。

問い合わせ先:西田書店
http://nishida-shoten.co.jp/