ドンゴロス(麻袋)は今はあまり使わない語かもしれない。コーヒー豆を入れたやつね、と言っても、あまり通じないかもしれない。
ドンゴロスに入れ歯をおきぬ白鳥発つ 竹中宏
「白鳥発つ」は、意味で考えば、「白鳥帰る」で春の季語。けれども、ドンゴロスには夏が色濃いので、白鳥部分をことさら季節に結びつけることもない。「白鳥発つ」は渡り鳥としてよりも白い鳥が地上から離れるその瞬間と読んだほうが美しい。
入れ歯の白と、ってことはないけれど、粗い麻の布地に、目的不明・経緯不明のまま置かれた入れ歯の所在なさと孤立。
読者の胸にやがて広がる/結果として広がるのは空でござんす。
掲句は『翔臨』第92号(2018年6月30日)より。
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