2022/01/20

■島田様 『トイ』第4号より

島田様たびたび泣きにやってくる  樋口由紀子

これは困ったことです。一度ならず「たびたび」だから、断れていない。あるいは、心優しく受け入れているのか。度量。

「様」がコクの源泉になっていて、つまり、関係がよくわからない。「さん」だと近所のおじさん/おばさんっぽい。「くん」だと年少の知人。島田くんは、ちょっとかわいい。「ちゃん」もおもしろいが、営業マン口調(営業の人って、知り合ったばかりの同僚や仕事仲間を「ちゃん」で呼ぶ。距離を一挙に詰めようという算段なのか)、句としては、ちょっと目立ちすぎ。

「様」。いいですね。

島田様の姿がぼんやり見えたとしても、いわゆる作中主体が杳として見えない。

んんん、誰なんだ? やってこられる人は。

お店なのかもしれない、詠んでいるのは。デパートや高級和菓子店にたびたび泣きにやってくる島田様。不思議な人だ。

ラヴ&ピース!

掲句は『トイ』第4号(2021年4月)より。

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