2024/08/27

■本を物色する

本をインターネットで買うのに、かなり慣れてしまった。それは検索機能によるところが大きい。目当ての本がわかっているとき、あるいは読みたい作家が決まっているとき、いわゆるリアルの書店とは、手軽さ・便利さの点で、圧倒的な差があるので。

それでも、本屋をぶらぶらする愉しみがなくなったり減じるわけではありません。とりわけ、何、と決めていないとき。

積ん読は極力やめるという方針を立ててからもうずいぶん長く、つまり、いまから、あすから読む本しか買わないという方針のもと、ある日、出先で読む本が尽きた。出先だから文庫本。誰の本とも何の本とも決めずに、地元の本屋さんをぶらぶらする。

なんとなく、知らない作家、読んだことのない著者のものという気分。平台を眺め、書架を端から見ていく。候補はたくさん目に入る。なにしろ、読んだことのない作家だらけだ。

1冊に向かって、3冊に絞った。

ウィリアム・フォークナー『野生の棕櫚』。こんな大作家なのに、恥ずかしながら、1冊も読んだ記憶がない。

台湾の探偵もの。へぇ、台湾の推理小説! 自分としては意表をつくチョイスになる。

室井光広『おどるでく』。民俗ものっぽい。

どれにしようか迷っているあいだ、カウンターのおねえさんと客の老人の世間話が耳に入ってくる。都会の大型書店では味わえませんね、これは。

で、結局、町田康の帯文が決め手になって、『おどるでく』を手に取って、さっきのおねえさんのカウンターへ(世間話はナシ)。「カバーを、お願いします」

話はそれるけど、このカバーというのが、ネット書店にはない大きな魅力ですね。カバー、必須。ネットで買ったものには、自分で掛けてます(みなさん、そうなはず)。で、びっくりしたのは、どこかの駅ビルに入っている書店は、カバーが有料だった。買い物袋の有料化の流れでしょうか。これにはたまげました。

というわけで、慣れ親しんだ焦げ茶色のカバーのかかった『おどるでく』という短編集を読み始めたのですが、当たり! です。なんだか奇妙なオフビート感。たいせつに味わっております。

写真は記事と無関係です