2017/11/01

■卵生の石部明

奇想、と述べるだけでは、その一句を語ったことにならない、と言われそうだけれど、奇想そのものに価値があると思っているし、それにね、「きちんと奇想」ってのは生易しくはない。奇譚も同じ。奇想・奇譚を狙ってはいても、結果、「あれれ? それってそんなに『奇』でもないですよ。わりあい順当」という場合も多い。

ボクシングジムへ卵を生みにゆく  石部明

ヒト、卵生、場所の用途。それらが大きくずれ合って、奇妙な世界。伝統的なポエジーからもはみ出す。

掲句は『THANATOS 石部明 3/4』(2017年9月/小池正博・八上桐子)より。

ほかに、

靴屋来てわが体内に棲むという  同

句末の「という」で事態が未来のこと(靴屋の意思)となり、「わが」の私が微妙に軋む。

軍艦の変なところが濡れている  同

軍艦が身体性・有機性をまとい、奇妙にエロティック。



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