奇想、と述べるだけでは、その一句を語ったことにならない、と言われそうだけれど、奇想そのものに価値があると思っているし、それにね、「きちんと奇想」ってのは生易しくはない。奇譚も同じ。奇想・奇譚を狙ってはいても、結果、「あれれ? それってそんなに『奇』でもないですよ。わりあい順当」という場合も多い。
ボクシングジムへ卵を生みにゆく 石部明
ヒト、卵生、場所の用途。それらが大きくずれ合って、奇妙な世界。伝統的なポエジーからもはみ出す。
掲句は『THANATOS 石部明 3/4』(2017年9月/小池正博・八上桐子)より。
ほかに、
靴屋来てわが体内に棲むという 同
句末の「という」で事態が未来のこと(靴屋の意思)となり、「わが」の私が微妙に軋む。
軍艦の変なところが濡れている 同
軍艦が身体性・有機性をまとい、奇妙にエロティック。
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