2021/05/03

■音楽とミュージシャンの物語 カズオ・イシグロ『夜想曲集』

少し前の音楽千夜一夜でカズオ・イシグロ『夜想曲集』に触れたのだけど、この本、とてもおもしろかった。5篇の短篇が音楽というテーマで共通するだけでなく、アルバムで5曲を順に聴いていくような流れがある。場所も登場人物も違うんだけどね(一人だけ2篇に登場する。これも効果的)。巻末の解説にもあったけれど、よくある雑誌掲載などの寄せ集めではなく「書き下ろし」の5篇らしい。

それと、登場するミュージシャンがリアルと物語性のちょうどいいバランス。音楽ネタの小説ではしばしば、物語のためのミュージシャンってかんじに、現実にはこんな音楽家、どこにもいそうにない、ってことがあるんだけど、その手の脆弱さ(虚構としての脆弱さ)がない。かといって、based on a true story 的な造りでもない。ノンセンスや諧謔の成分も豊かだしね。巧みでセンスのある作家だなあ、と、あらためて思いましたよ。

ラヴ&ピース!

あ、そうそう。解説で知ったのだけど、小説の市場って、長篇>>>短篇、なんですってね。日本も欧米ほどではないけど、同じ傾向だそう。これはちょっと意外。

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