2021/11/11

■映画三句 『猫街 』第4号より

同人諸氏の句会で「映画」というお題が出たのかな、あるいは、映画館吟行? と思ったのは、『猫街 NECOMACHI』第4号(2021年11月号)より、映画の句が離れた箇所にいくつかあったから。

単純な映画と紙コップのビール  杉山魯壜

映画館での行動様式の標準にでもしたいのか、東宝のシネマコンプレックスは、やたら、ポップコーンやドリンクを勧めてくる。込み入った映画でなければ、なにか飲みながら、というのも、リラックス感が増して愉しそう。《紙コップ》がいいですね、この句。

名画座に今日も来ている火取虫  近江文代

《火取虫》が《来ている》のではなくて、切れがあると読みました。「また火取虫(蛾)がいるよ、こないだもいた」のなら、この人も火取虫もどっちもまた来てるんだから、どっちでもいいだけどね。《火取虫》は、スクリーンの灯とつながって、愉しい。まさか、スクリーンにぶつかってくるわけではないだろうけど(昔の巡回映画なら、ありそうな景)。

映画観てからの干草は芳しく  きゅうこ

干草のシーンって、欧米の映画で頻繁に見るような気がします。映画『薔薇の名前』で干草小屋での合い挽き、もとい逢い引きとか(記憶違いなら、ごめんね)。干し草のシーンを見たから、なんてことは言わない。ある映画を観て以降の干し草は芳しく感じる。ふたつの距離がといもいい。映画もまた、かぐわしい感じ。

で、こんなことを言うと、顔をしかめる人がいるだろうけど、「の」あるいは「は」のどちらかナシにできなかったのだろうか。五八五を回避できるのに。〈えいがみて/からのほしぐさ/かぐわしく〉〈えいがみて/からほしぐさは/かぐわしく〉。「は」をトルと(前者)、《干草》で軽い切れが生じ、こちらのほうが好み。韻律もこっちのほうがいい。

ああ、映画館、行きたくなっちゃった。

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