2017/04/05

■寂聴から羊毛へ 歌仙「自転車」解題〔2〕

≫七吟歌仙:自転車の巻

≫承前

第八句と第九句は、恋の座。

  いまふられたら寂聴になる  オ

寂聴には吃驚。次に付ける/恋を返すのは私でした。寂聴になられちゃあかなわないので、最大限の契り。

  離さない死ぬまでもとい次の世も  気

恋のセリフは既製品が多い。独創もいいけれど、伝統は尊重すべき。


はからずも、オーティス・レディングで踊る瀬戸内寂聴を頭に描いてしまい、とってもファンキーな気分になりました。

さて。

  宇宙の塵をさらふ蜘蛛の囲  鯨

恋の座からきれいに離れていただきました。「離さない」から蜘蛛の巣は巧み。

  はつなつの下宿でめくるトムキンス  景

宇宙からトムキンスはやや近いのですが(かつ、前句の種明かしのようにもなり、その点、少々まずいのですが)、下宿という外界中の外界にまで降りたところがよかった。

  神田川から酔拳の声  え

下宿と言えば、神田川。ですが、作詞:喜多条忠/作曲:南こうせつ、発売は1973年。りえさんはまだ生まれてなかったのでは?

そこでまったく余談的に思い出すのが、りえさんの「俳人と南こうせつは、妹といえば必ず『妹よ』」という名言・名指摘(たしかツイッター)。俳句で「妹よ」と出てくると、げんなりします。

私は下宿経験がたんまりありまして、最初は四畳半・家賃8,500円。寒かったですよ。石鹸ではなく歯が鳴りましたよ。

閑話休題。次は、冬・月の座です。

狙撃より確かで冴えてゐる月の  之

前句の酔からは、月の宴全般、いかようにも付くところでしたが、ここは酔拳から狙撃。「の」止めも次を促す、連句特有の収め方かもしれません。

俳句ではやらないようなことをやるのも、連句の楽しみ方のひとつですね。

  凍土の中を進むマンモス  乙

月の座、花の座のあとは、その季を2句ほど続けるのがマナー。狙撃対象が象牙目的の密漁ならぬマンモスというわけで、凍土とマンモスで手堅い冬の句。「中」がミソで、化石が動き出す感も漂います。

  留置所で教へてもらふのりピー語  オ

「いただきマンモス」って、もうみんな忘れているでしょうけれど、思い出せてよかった。ちょっと調べてみると、酒井氏の拘留期間はおよそ20日間だったみたいです。長い。司法制度、見直さないといけないですね。取調官がのりピー語を習得するのには充分な期間ですが。

  三日三晩を汽船に揺られ  気

三日三晩は72時間。勾留期限でもなく、なんでこれを付けたか、忘れました。捌きがいちばん無責任でちゃらんぽらん。

  国産みの火山にかかる花の雲  鯨

汽船の蒸気から火山。巧み。火山神いざなみの登場から、

  まづ新婦から羊の毛刈る  景

晩春の季語をもってきた新婦のこの行為、ほんとにどこかの儀礼にありそうで、おもしろい。そういえば、ニュージーランドも火山国ですよね。

ここまでで初折の表と裏が終わり、名残に突入です。

’(つづく)

2017/04/04

■俳句におけるカタカナとルビ

小津夜景さんが拙作「るびふる」の全句に言及という、おそろしいことをしてくださいまして。

≫http://yakeiozu.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

(大感謝であります。これであの10句も浮かばれます。往生できます)

●

カタカナはともかく〔*1〕、俳句にルビは、ないに越したことはない。

よほど差し迫った事情がないかぎりは。

難読語に振る、別の読み方をされては困るので振る、などが差し迫った事情でしょうか。

ルビは気軽に振ったりしちゃダメ。ルビは俳句にとって通常のものではない〔*2〕。だから、思いきり不自然に、過剰に(バロック的に)やってみたのが「るびふる」。

10句、まとめていて、楽しかったですよ。悪さをするって、いつでも楽しいものですよね。



〔*1〕コンビニとかよく例にあがるんですが、カタカナ語とは別に略語という問題があります。

「略すな。コンビニエンスストアと言え」「電卓は俳句では使えない。電子卓上計算機と言え」みたいな頑固親父な発言、わりあい好きです。

〔*2〕要らないルビのエピソード:
むかし結社的な句会に出ていて、清記用紙に「亡母」に「はは」とルビがあった。最悪。…なんて思いません。心清らかですから。でも、見渡して、お母様がご存命と思しき年齢の方はいらっしゃらない模様(ベテランばかりの句会だった)。「亡母なんて書かなくても、皆さんを見たら、わかりますがな」と心の中でツッコミを入れたことでした。

あと、「地球」に「テラ」のルビは竹宮恵子先生以外、やっちゃあダメだぞ。



https://www.jagat.or.jp/past_archives/content/view/3932.html

2017/04/03

■自転車からきのこへ 歌仙「自転車」解題〔1〕

七吟歌仙「自転車」を振り返ってみたいと思います。

≫http://sevendays-a-week.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

なお、付け筋etcは私の解釈。おおまかなルールやノリも私が親しくしてきた歌仙に準じたもの(私は四童さんところで歌仙をおぼえたので、「四童流」と言っていいでしょう)。異なる見解もあるものとして、おしゃべりにお付き合いください。

発端は、これ。
≫https://twitter.com/10_key/status/830064468742721537

「連句未経験」というユキオに「じゃあやりましょう」とお誘いして、発句をいただき、歌仙が始まりました(連句と歌仙の違いについてはググってね)。

初折表 自転車で空港へゆく日永かな  ユキオ

自転車好きの私への挨拶も含むと勝手に解釈。愛車の写真を貼っておきます。



1998年製。色はチェレステ(空色)。空港にぴったりじゃないですか。

場所は多摩川の土手。このまま川を下って川崎まで行けば、羽田空港はすぐです(まだ行ったことがないけど)。

で、脇句。

  東南東の風をおでこに  天気

脇は同時刻・同場所で付けます。付句は全体に前句から展開させます。くっついてちゃダメ。そんななか、脇句は例外。発句に向かって「いらっしゃいませ」と挨拶するので、寄り添う。

東南東の風は、ほぼ東風(こち)と解してください。有季です。俳人協会の人、聞いてる? これ、有季です。

「おでこ」では、ユキオさんのかわいらしいおでこを思い浮かべた。ユキオさん、聞いてますか? ここ、喜ぶか照れるかするとこです。

さて、3人目以降の連衆は公募スタイルにしました。「どなたでもどうぞ」と呼びかけたところ、

  黒猫は麻雀卓をぬけだして  牟礼鯨 

第三句は、発句脇句の挨拶の応酬から離れます。みごとに離れていただきました。アウトドアからインドアへの転換もそうなのですが、自転車や空港の開放感から、小博打、黒猫の凝縮感へ。

「て」止め(ほかの止め方も含め)、勢いを付けるという意味。「さあ、行くぜ」って感じですね。

  洋梨パイの焼き上がる頃  夜景

麻雀牌の「牌」からパイへ。言葉遊び(ダジャレ)系の付け方、私は大好き。音の相同=シニフィアンの相同をテコに、シニフィエの飛躍を狙う(ここ、笑うとこです)。攝津幸彦も多用した手法。

  月代を盛るにはうすい玻璃の皿  りえ

焼きあがったパイが皿へ。月の座、うくつしい。

  蘆刈る舟のものがたりせむ  若之

皿と舟。かたちの相同。「ものがたりせむ」は歌仙的想像に加速を促すとも。

初折裏 アイコンのきのこが熟す指の先  紫乙

「アイコンのきのこが熟す」はビデオゲームを思わせ、物語と響き合っています。
 
これで連衆が出揃い七歌仙となりました。

(つづく)

2017/04/02

■具ふたつ

炒め物は、具ふたつが良い、という結論に達しました。つまり、みっつ以上にならないのがいい(私的、かつ例外ありそう)。

クレソン+ベーコン。


2017/04/01

■七吟歌仙:自転車の巻 満尾

≫歌仙「自転車」会場

初折表 自転車で空港へゆく日永かな  ユキオ
      東南東の風をおでこに  天気
    黒猫は麻雀卓をぬけだして  牟礼鯨
      洋梨パイの焼き上がる頃  夜景
    月代を盛るにはうすい玻璃の皿  りえ
      蘆刈る舟のものがたりせむ  若之
初折裏 アイコンのきのこが熟す指の先  紫乙
      いまふられたら寂聴になる  オ
    離さない死ぬまでもとい次の世も  気
      宇宙の塵をさらふ蜘蛛の囲  鯨
    はつなつの下宿でめくるトムキンス  景
      神田川から酔拳の声  え
    狙撃より確かで冴えてゐる月の  之
      凍土の中を進むマンモス  乙
    留置所で教へてもらふのりピー語  オ
      三日三晩を汽船に揺られ  気
    国産みの火山にかかる花の雲  鯨
      まづ新婦から羊の毛刈る  景
名残表 鉄球にびくともしないコシノビル  え
      重力の罪深き木星  之
    たはむれのはじめにめくるカレンダー  乙
       褌みせてくれるんでせう  オ
    汝が胸に吾が息 とほく泳ぎきて  気
      涼気を運ぶ短波放送  鯨
    恋文にじらさないでとだけ書いて  景
      ふたりで金の孔雀を飼はう  え
    剝製のやうに無害なソクラテス  之
      防腐剤から望月こぼれ  乙
    猿酒を譲つてくれるかものはし  オ
      長椅子にぽつねんと虫売  気
名残裏 歩を成らす人工知能負かすため  鯨
      虹のむかうに靴放り投げ  乙
    牛頭馬頭とヒッチハイクで品川へ  え
      もつとひかりを(レモンヱロウの)  之
    剝落の花となりたるフレスコ画  景
      千年かけてふらここを漕ぐ  オ

起首 2017年2月16日 19:00
満尾 2017年3月31日 13:17