2012/11/03

それ、誰やねん? という

このあいだの句会のはじめ、みんなで席題を出し合うときに、「そういえば、みやもとかよのさんは本日、引越しだとか」と誰かが口にしたことから、「宮」というお題が出て、ついでだから、

宮本がカンナの如く立つてをり  10key

と投句。

人に知られた人名を詠み込む(それが人名句)でもないので、名前だけ放り出した格好で、「それ、誰やねん?」ということになり、なかなかうまく行かない。

いのうえの気配なくなり猫の恋  岡村知昭(『俳コレ』収録)

この句が、この手ではよく知られる句だが(って、ほんとか?)、この句のおもしろさを伝えるのは、なかなか難しい。難しいのだが、おもしろさの出発点に「それ、誰やねん?」という《わけのわからなさ》があることは確実。

おそらく、俳句の17音のうち、誰だかわからない人名に4音も使ってしまうという贅沢(ムダとも言う)を許す状況をつくりだすのは、なかなかに骨を折れることなのかもしれない。

じゃあ、短歌はどうなんだ?ということで。

百点を取りしマサルは答案の束もつ我にひたすら祈る  小早川忠義

人名が、俳句と比べると、自然に溶け込む感じ。

小早川忠義さんの歌集『シンデレラボーイなんかじゃない』(2010年9月/邑書林)には、この手の人名が他にいくつかある。

《「目立たない方の鈴木」と呼ばれゐる同窓会の常任幹事》は、機知がわかるぶん、突拍子のなさは消える。むしろ、

書き慣れぬ振込用紙の名前欄「若草太郎」と書き損じたり  同

このほうが、不思議さが残る。

振込用紙になんと書こうとしたんだろう? 答えがわかると、魔法が解けたりして(それはよくあること)。



短歌はあまり読んでいないし、知識もまったくないのですが、出会った本をおもしろく読ませてもらっています。俳句と違って、いわゆる「純粋読者」になれるから、でしょうか。楽しいのですよ。





0 件のコメント: