2018/03/28

■欠損・欠落がもたらすもの 八上桐子『hibi』の二句

句集を読んでいて、離れたページに収められた二句あるいは数句がセットになって心に残ることがある。

歩いたことないリカちゃんのふくらはぎ  八上桐子

脚だけのマネキン デモに行く明日  同

人形とマネキン。ふたつの欠損/欠落部分はたがいに異なる。欠け具合も異なる。けれども、擬=ヒトという点で、リカちゃんとマネキンに繋がりが生まれ、歩いたことがないので歩けそうにないリカちゃんにかわって、脚だけが電車に乗り、議事堂前へと、首相官邸前へと(時事に影響を受けた想像)歩いていく。

喪失というと、詩的な/文学的な/叙情的な湿度を帯びる。それはこの句集にはそぐわないので、欠損・欠落の語を用いた。

句集『hibi』はみごとにその種の湿度を免れた句集。そのせいにちがいない。前者に、感傷が希薄、後者に、メッセージ性が希薄。

加えるに、後者の「明日」の一語が醸す虚ろな感触。

欠損・欠落のモチーフと明日というものの不確定がもたらす軽さ、自由極まりない不安定が、なんだかとても気持ちいい。「デモ」という政治用語を用いて、これほど美しく軽い句をほかに知らない。

(ま、デモの句って、あんまり知らないんだけどね)


というわけで、『hibi』についてはもうすこししゃべりそうです。

ラヴ&ピース!



≫輝くほどに 八上桐子『hibi』より
http://sevendays-a-week.blogspot.jp/2018/03/hibi.html

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