2019/06/19

■尖鋭とポップ 『豆の木』第23号より

こしのゆみこの俳句は、ときとして尖鋭的に前のめりでありながら、全体には、いい意味の弛緩、キュートさを失わないところが魅力。奇妙な喩えだけれど、張りつめた脚の筋肉と強靭な膝とは裏腹に、膕(ひかがみ)の柔らかさが見えるところ。そんななかから、ポップな、というのは、多くの人に素直に愛されるような句が生まれる。

小鳥来るための額を空けておく  こしのゆみこ

野遊びのくるぶし鈴の音させて  同

句会での戯れに「どこに出しても恥ずかしくない句」などと申すのですが、この2句あたりは、どこに行っても愛されそう。

でも、そんなばっかじゃ本人が照れるのだろう。10句作品の掉尾は、これ。

きょお!きょお!水のしたたりやまぬ音  同

これにしたって、出るとこに出れば、大いにウケるであろう句。

25年前、『豆の木』創立当時は若手、今は中堅かベテランの作家こしのゆみこの今後ますますの充実を楽しみにしている読者の一人なんですよ、私は。

掲句はいずれも『豆の木』第23号(2019年6月1日)より。

こしのゆみこ作の猫オブジェが変わらず『豆の木』の表紙を飾る

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