2019/08/06

■冒頭集:パンク

 街道沿いの茶店に牢人(ろうにん)が腰をかけていた。
 晴天であった。
 牢人は茶碗を手に持ち往来の人を放心した人のように眺めていたが静かに茶碗を置いて立ち上がると、茶店に面して道幅が広がった広場のようになったあたりに生えた貧相な三本の松、その根元の自然石に腰掛けて休息している巡礼の父娘に歩み寄った。
町田康『パンク侍、斬られて候』2004年/マガジンハウス

0 件のコメント: