バナナを食べている自分を鏡に映して眺めるというのは、なかなかにめずらしい行為で、これは意図というより、たまたま鏡に自分が映っていたのだろう。
口があいている。いままさにバナナがかじられようとしている。
口に焦点があたっているはずなのに、バナナのほうが、鏡の中でめだつ。黄色が目を引く。
考えてみれば、食べられる瞬間まで姿を残す食材は、そう多くない。烏賊の丸焼きとか、林檎を切らずに丸かじりとか、最近の子どもは知らないだろう砂糖黍とか? パイナップルは切られて、元の姿の見る影もない。牛肉は牛の形をしていない。
バナナが素材として、というのは、俳句や文芸の素材として優れていることは、疑う余地がない。
バナナが素材として、というのは、俳句や文芸の素材として優れていることは、疑う余地がない。
掲句は『鏡』第40号(2021年7月)より。
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