2009/11/06

小唄のような 小川春休『銀の泡』

炬燵欲し炬燵欲しとて自転車漕ぐ  小川春休
小川春休句集『銀の泡』(タカトープリントメディア・2009年10月1日)には、小唄のような気持ちのいい句がたくさん。

俳句というのは、どうしたって交響曲にはなりえないのですが、うまくすれば、泥臭いブルースだったり、きれいなバラードだったり、バッハっぽかったり、あるいはテンションいっぱいの現代音楽だったりもするわけです。

(演歌だったり大漁節だったりもしますが、そういう句集は、個人的にはあまり読みたくありません)

音楽の好みからしても、私は、小唄が好きで(声を張り上げるのはあまり、ね)、例えば、初期ライ・クーダー。古い小唄を軽い調子でリラックスして唄う。生成りのようなピュアなところもあって、少し泣かせて、きほん微笑んでしまう。『銀の泡』は、そんな小唄の感じ。

以下、「おひねり 十一月」の章から気ままに。
新藁の山の崩れて降りつづく

茸狩の人やリムジンのぞき込み

澄む水をかためてさしみこんにやくよ

焼き上がる鯛焼のみなこちら向き

天井の隅つこの暮早きこと

靴底に枯野の小石はさまりぬ
「新藁」の句は、子規「あたたかな雨が降るなり枯葎」を思い出しますね。

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