別のところへ目を向ける、というか、同じ景色、同じフレームで、別のものに焦点を当てると、新しく格別の興趣が生まれる。
巻きついて昼顔の咲く別の草 加藤かな文
掲句所収の第一句集『家』には気持ちのいい句がたくさん。
平成5(1993)年から平成20年までの300句がほぼ編年で並んでいるのですが、経年の作品変化も感じました。ここは微妙で自信はないのですが、年を経ると、言い回しで虚をつく、はぐらかすような句が増える(ほとんど良い意味で、の話です)。例えば「大きくも小さくもなく初日あり」「露ほどの露と思ひぬ草の上」のような句(どちらも自分は好きですが)。初期は、生成(きなり)の美しさ、面白さを持った句が多いように思いました。一本筋の通った作風でありつつ、変化はしていくものなのかなあ、と。
他に好きな句を気ままに。
天幕の何覆ふなく春半ば 加藤かな文(以下同)
朝日から鳥の出てくる寒さかな
いつぱいの根に朝が来るヒヤシンス
立冬や鏡に乾く歯磨粉
毛布からのぞくと雨の日曜日
夏祭つまらぬものを買ひにけり
することのなくてしばらく春の風邪
鉄棒にもたれてをりぬ盆踊
棒なんぞあつて焚火を好きにする
踏切の開くときしづか霙降る
季節柄、昼顔の句を掲句としましたが、「いつぱいの根に」はほんとうにいいなあ、と思う。「朝日から~」は帯にもあり、代表句的な位置づけなのでしょう。「毛布から~」はいくつかのブログで評判になっている句。どれもいいですね。
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