2019/04/11

■冒頭集:木曜日

ロンドンのサフロン・パークという郊外は、ロンドンで日が没する方に、夕日の光を受けた雲も同様に赤く、きれぎれになって広がっていた。そこの建物は皆、真っ赤な煉瓦でできていて、建物が空に描く輪郭はおよそ奇妙なものであり、この郊外の平面図も決してまともなものではなかった。ここを設計した土建屋は空想家で、芸術にもいくらか関心を持ち、建物の様式をエリザベス時代風といったり、アン時代ふうといったりして、エリザベスとアンを同じ一人の英国の女王と思っているらしかった。(…)
G・K・チェスタトン『木曜の男』1908(吉田健一訳/1956年/創元社)


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