2019/11/30

■冒頭集:悪夢のはじまり

設計を担当した者の安易な発想が、丸窓、分かりにくい位置にあるエレベーター、空間効率の悪い階段などに表現される、当人にすりゃあ奇抜、通常人から見りゃあ陳腐な外観の、しかしよく見るとところどころいかにも安手の材料・材質・施工、しかも、管理運営がきちんとなされていないせいか、ペンキは剝落し錆が浮き建物全体が埃にまみれて薄汚れた集合住宅。なかなかやって来ぬエレベーターに業を煮やした自分は、駅から歩いて足が棒のようになっているのにもかかわらず、遅刻を恐れた自分は、背後の階段を四階まで一気にかけ登った。
町田康『実録・外道の条件』(2000年/メディアファクトリー)



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