スリッパという、まあ、おおむね「室内用」の履き物でもって、朧夜(という、おおむね外をイメージする場所・空間・時間)まで出かけて、そこに置いて帰っていたというのだから(裸足で、か)、ちょっと不思議な行動。読者には、不思議な後味が残る。
靴だとこうはならないし、ただ置いてあるという観察でもこうはならない。「スリッパ」であり「置いてきた」という行為であるからこその読後感だろう。
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掲載の高橋洋子10句作品「夜盗虫」の表題句、《恍惚と壊れてゐたり夜盗虫》は、句そのものの話ではないのですが、「恍惚と」という部分、名詞+「と」で副詞用法となっているのを見て、「悄然と」「毅然と」となど「~然」の例はあるものの、そのほかに思い浮かばず、面白い用法だな、と。
従来的・正統的な文法/用法に、ちょっとした捻じれや曲げを加えている。それを面白がらずに、「誤用誤用」(御用御用のダジャレみたいになっちゃった)と口やかましい向きもあるのでしょうが、私は、ほら、ラヴ&ピース!な態度ですので。
掲句は『豆の木』第25号(2021年5月)より。
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